第10話 変態は朝から元気だな……
午前7時15分、グリークの朝。
そして、その後にラヴァルのボレロ。
それがエーテリアルの朝の知らせである。
しかしながら、本日は土曜日なので静かな入り口の風景が見られる……はずだった。
『さて本日、クールビューティなジンレイちゃんをトイレに連れ込み、いかがわしい事をしようとしたアキラ教授を制裁する会を開いた訳ですが、とりあえず死刑で良いかな〜?』
『『『いいとも〜!』』』
「ふざけんなぁぁぁぁぁ!」
世の中というのは、噂や世間話が広まるのは大変早いらしい。
ただ今アキラは『あのクールビューティなジンレイちゃんをトイレに連れ込もうとしたチャレンジャー』と言う話を聞いたクラスの男子達により、ロープでグルグル巻きにされ、芋虫のような姿にされていた。
そして、そんなアキラを囲う男子生徒達に混じって。
「お前達、少し退け! せっかくアキラが残念な姿をしているのに、隙間なく囲われていれば撮影できないではないか! あぁ、アキラがぐるぐる巻きにされている姿を想像すると、うむ、興奮してしまうな!」
カメラを持ったツカサが混じり込んでしまってはいるが……。
そして、もう一人。
二人と交流があり、なによりアキラに嫌がらせする為に存在しているようなマオはと言うと……。
「すーすー……」
残念ながら、昨日帰りが遅かった為、不参加となってしまったようだ。
アキラに対する嫌がらせの権威として、次回マオ准教授の参戦に是非とも期待したいところである。
(変態は朝から元気だな……)
さて、そんな様子を見ながら肉まんを頬張っているジンレイはそう思いつつも、一つの不安を感じていた。
それは。
(このままでは肉まんを作る時間がなくなるのではないか?)
と言う事である。
せっかく昨日、肉まんを提供してもらえるのに、この処刑が長引けば作る時間が無くなるのではないか?
もしかしたら食材も準備できてなかったから作れないと言うパターンもあるかもしれない。
彼女は冷たい表情を保ちながらも、そんな不安を抱えているのだ。
かといって、救出する為にあの変態達に会話が通じるか疑問もある。
そして彼女は考える。
この状況、どうすれば良いのか?と……。
だがしかし。
バンッ! バンッ!
(そうだな、始末すれば解決だな……)
彼女は割と脳筋気味だった。
だから今、彼女は懐から取り出した二丁のハンドガンを両手に持ち、二人の変態を教会送りにした。
肉まんを食べる楽しみを阻害する敵を全て排除し始める手始めとして……。
…………。
それから約一時間後。
「もぐもぐ……。 食の権利を奪う奴は死刑、生物の常識ではないか……。 間違っているか、先生?」
「……ジンレイ、食べながら話すのは失礼だぞ……」
「もぐもぐ……。 私はマトモではないか。 食文化を楽しむ権利を奪うものは人類の敵だ、蜂の巣にされて当然だ!」
「……思った以上に問題児だったんだな、ジンレイ……」
ジンレイは寮の入り口のテーブルにて肉まんを食べつつ、ゴリラ刑事による取り調べを受けていた。
しかしゴリラ刑事は、取り調べが進むにつれ、《変態大量教会送り事件》の事の大きさを思い知り、頭を抱え込む事になった。
まずはジンレイについて。
祭はジンレイについて、怖い顔をしているが冷静で大人しい……。
そんな風に思っていた。
しかしジンレイは《肉まんを食べる事中心、それを邪魔するモノは容赦しない》性格だった事を受け、自分の生徒を見る目がまだまだだと思わされた。
次にアキラについて。
初めアキラを(一様)被害者として話を聞いた訳だが、その前の出来事に問題はあった。
それは、彼が昨日(見た目は)美少女と(平然と人を盾にする)ギャルの二人と部屋を共にしていた事。
祭りとしては『若いうちにバカした方が良い』と言う考えではあるので、あまり色々言う気はないのだが、教育委員会などの上の方は『その事実が本当なら大変問題だ』等と言われかねない訳で……。
それをどう誤魔化すか悩まされている。
最後に教会送りになった変態集団ことクラスの男子生徒達だが。
(変態は救えるかぁぁぁぁぁ)
それが彼女の出した結論であった。
だからこそ今、祭は。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、何で俺の生徒はバカ野郎ばかりなんだよぉぉぉぉぉ! くそぉぉぉぉぉぉ!」
悩みの三重奏を受け、頭を抱え込んで叫び声を上げている。
まぁだからと言って。
「もぐもぐ……。 老けるぞ先生」
「うるせぇ!」
彼女が悲劇のヒロインになる事はないのだが……。
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