お墓参りだぉ!

「じゃあ、クミコ、行くわよ!」

魔法陣に光が走り、周囲の風景が二重映しのようになる、その風景が、そう、見慣れた王宮の転送室と呼ばれるようになった部屋になって、魔力振動が停止した

「じゃあ、いってきますわ、帰るのは明日くらいになるかも」

わが同士、英雄の剣、ナイト。

ナイトが亡くなったのは戦いの最中、私の背を守って死んでいった。

今日はナイトの命日に当たる、ナイトの家族には魔王討伐の英雄として、それ相応の恩給が出されていた。


1日馬車に揺られてナイトの実家のある海辺の街に着く

ナイトの実家はこの街の領主。

ナイトはその次男であったが、子どもの頃から剣の腕前が立って、地域の学校を卒業すると王都騎士団に入団、そして、勇者である私の従者任命され、私達と一緒に魔王討伐に向かったのだった。


「最初は全く歯が立たなかったなあ」

ナイトの事を思い出す。ナイトは強かった、当時、ナイトに勝てる剣士はこの国にはいなかった。私のように勇者としての能力を以て迎えられてた召喚者でも敵わなかった。

ナイトに勝つのは1年半かかった。

そして魔王討伐の最中、私の背を守ってナイトは命を落とした。


丘の上の共同墓地、その最も高い所に領主一族の墓があり、そこにナイトの墓があった。

■偉大なる英雄、ナイト、ここに眠る■

「あれから、もう3年たったかあ・・・・・」

「勇者さまーーーーーっ!」

駆け寄る人影、ああ、あれはナイトの妹、その後ろは、ご両親か。

ばふっ!

「こらっ、ダメですよ、勇者様に失礼ではありませんか」

「へへー、来るって聞いてたし、また、今年こそ会えるっておもってたんだ」

妹ちゃん、この3年でおっきくなった。

「領主様、奥様、お久しぶりでございます。妹ちゃん、久しぶりね」

「勇者様、どうもありがとうございます、息子も喜んでおりますでしょう、ああ、よかったら屋敷に、どうぞ」

「ありがとうございます」


翌朝、妹ちゃんと一緒に、海の見える丘に上がる。

「ここはおにいちゃんが一番好きだったトコロなんです。」

「いい景色だねえ、向こうの方に船が見える」


妹ちゃんと一緒に海を眺める

「昨日は、お兄ちゃんの事色々話してくれてありがとう、ねえ、勇者様、お兄ちゃんは強かった?」

「強かった、私がこの世界に勇者として召喚されて、1年半は全く敵わなかったよ。」

「お兄ちゃんの事は好きだった?」

「剣士として、師匠としてナイトの事は尊敬している、ナイトは私の心の中に永遠に生きているよ」

「永遠にいきてるんだあ、ねえ、ちょっといいですか」

「ん?」

妹ちゃんが私に抱きつき、胸に耳をあてる

「勇者様の心臓の音、お兄ちゃんの心臓の音と同じ」

トクン、トクンと

「うっ、おにいちゃーん!、おにーちゃーん!」

私に抱きついて号泣する妹ちゃん、葬儀のときでも泣かなかったのに

「あ、勇者様、ごめんなさい」

「おにいちゃんが好きだったんだね、ナイトも喜んでいるだろう」


「今日はどうもありがとう、元気でね」

「妹ちゃん、元気でね、領主様もお元気で」

領主様と奥様、妹ちゃんは馬車が見えなくなるまで手を振っていた


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