第144話 昔話の真実
「まず今の話では分かったのは、以前妨害してきたのが七神教の神様の一人のライアンであること。それと今回参加者を担当している神様連中も、それぞれ一番になったら賞品が出るってことか。それも神様でも欲しがるような何か。参加者と同じく何でも願いが叶うとかかね? まあ大きなのはこの二つか」
進展と言えば進展だけど、俺に直接プラスになるようなことじゃないな。
「…………それよりまず、アナタ知らない誰かから妨害を受けていたの? 初耳なのだけど」
「ああ。言ってなかったっけ? そもそも妨害が無かったら、俺は普通に『勇者』として国の人に迎えられていたと思うぞ。まあ妨害を受けて牢獄行きになったからこそ、今こうしてここに居るということでもあるけどな」
「…………契約内容を見直した方が良いかもしれないわね。状況が大分変ったから」
げっ!? そういえばエプリは契約内容に物凄くキッチリしてるんだよな。故意にではないとは言え、これは依頼内容に嘘を吐いたってことになるんじゃないだろうか?
もしや契約打ち切りとかか? これまでの報酬まとめて払えって言われても今は無理だしなぁ。
「報酬の支払いはもう少し待ってくれると嬉しいんだけど」
「……? 別に言われなくとも、解呪師の所に着いて解呪するまでは待つわよ?」
エプリはキョトンとした様子でそう答える。ほっ。どうやら急に打ち切りということにはならなそうだ。当初の予定通り、指輪の呪いを解呪して換金するまでは付き合ってくれるらしい。助かった。
「じゃ、じゃあ契約内容についてはひとまず置いといて、まずは今の話について考えていこうか。何か気になったことはあるか?」
「……そうね。そのゲームというのは七人の参加者がいるってことで良いのよね。それでそれぞれに一柱ずつ神がついている。……単純に考えれば、七神教の神七柱がそれぞれついていると思えば良いのかしら? ……あんな子供が本当に女神アンリエッタだと認めることになるけど」
「七神がそれぞれついているっていうのは前にもアンリエッタが言ってたからな。間違いないと思う。……まあアレが神様だと認めづらいのは分かるけどな」
神様ならもう少し神様らしくしてほしいものではあるが、アンリエッタは見た目がただの偉そうなお子様だしな。
あんなのが神様ですって言われても、世の大多数の人が認めないだろう。……まあ美少女というか美幼女だから、ロリが好きな方々からは崇められるかもしれないが。
「……私はあまり信仰心がある方ではないからまだ良いけど、ヒトによっては卒倒するかもしれないわね。アンリエッタ派のヒトは特に。……いや。それ以前に信じないか」
「もっともだ。七神教の神様についても聞いておきたいところだけど……それは時間がある時に聞いた方が良いか。エリゼさん辺りなら喜んで話してくれそうだしな。あとは賞品のことだったか」
「……こちらに関してはまるで浮かばないわね。神が欲しがるもの……信仰とか?」
「どうだろな。そこに関してはホントに俺も分からない」
普通権力者とかが欲しがるものと言ったら金、力、女という辺りが相場だ。不老不死なんかも欲しがるかもしれない。
しかしどれもこれもアンリエッタに当てはまるかと言うとピンと来ない。……金は欲しがると思うけど、それならここまで手間暇かけなくても自分の力で手に入れれば良いだけだしな。
その後も二人で話し合ったのだが、結局アンリエッタの欲しがるものはどうにも思いつかなかった。直接聞くという手もあると言えばあるが、あの調子だと話すとは思えない。しばらくこれは保留にした方が良さそうだ。
「そろそろ時間だけど……次に聞くことは決めているの?」
「ああ。ちょっと気になっていることがあってさ。試しに聞いてみようと思ってるんだけど……もしかしてエプリからも何か聞きたいことがあったか?」
「…………まあね。だけど、トキヒサが思いつかなかった場合に聞く程度のものだったから問題ないわ。それに……これからもどうせ一緒に聞いていてくれと言うのでしょう?」
流石に眠る前という事でフードを外しているエプリが、分かってると言わんばかりに口元をニヤリとさせる。むっ!? 読まれてたか。
「そうだな。じゃあ今回は譲ってもらうか。……次回も付き合ってくれよ」
そう言いながら、俺は再びアンリエッタへの通信機を起動させた。
『時間通りね。まあこのワタシを待たせるなんてことをしたらキッツ~イ罰を与えたところだけど。次回から換金の度に千デン取るなんてどう?』
「手数料が暴利すぎるっ!? まあそうなると課題に影響がありまくるから勘弁な」
開始早々とんでもないこと言い出すアンリエッタだが、まあそこは会話を進めやすくするための冗談だろう。……冗談だよな?
『それで、聞きたいことって何? ワタシの望む賞品についてでも聞きたいのかしら?』
「それも聞きたいことだけど……どうせ教えてくれないだろ? 課題を進めてアンリエッタの機嫌が良くなった時にでもまた聞くさ。ポロリと漏らしてくれることを期待してな」
『へえ。じゃあ何が聞きたいの?』
アンリエッタは余裕の表情。今ならそれなりの質問も答えてくれるだろうか?
正直言ってこれを聞くべきかどうかまだ少し悩んでいる。課題に直接関わりのあることではないし、場合によってはアンリエッタの地雷を踏み抜くことになりかねない。
だけど……ある意味で俺個人に関わるかもしれないことだからな。エプリもいるし、ここが聞きどころなのかもしれない。
「単刀直入に行くぞ。
『ああなるほど。そっちね。……本当よ。それなりに美化と脚色が入ってはいるけどね』
アンリエッタは一瞬考えて、そのまま何でもないように答えた。見たところ動揺している様子もない。大筋はあの話の通りってことか。
「じゃあ次の質問だ。……正直な所悪い神様と戦った理由は? ここの人達が困ってたから……なんて殊勝な理由で動くなんて奴じゃないだろ? 少なくともアンリエッタは」
『当然ね。強いて言うなら……
その言葉を聞いて、そんな昔から準備してたのかという驚きと、微妙に知りたくなかった歴史の真実を知ってしまったという何とも言えなさを感じる。スケールがデカすぎてもう腹いっぱいだ。
『まあ間違いなく
「実はわざと挑発してたりとか?」
『そんなことしないわよっ! 神同士の戦いは基本御法度なの。ゲームや代理決闘くらいなら良いけど、今回ルールを破って直接襲ってきたのは向こうよ』
まあ一応本当だと信じよう。アンリエッタがそこまでゲスいやり方をするとは思いたくないし。だけど、最後にこれだけは聞いておかないといけない。かなり重要なことになるかもしれないからな。
「最後の質問だ。…………その話、もしかして『勇者』が関わっていたか?」
『…………!?』
ここで初めてアンリエッタは俺の言葉に沈黙で返した。その反応で大体分かったよ。当たっててほしくなかったけどな。
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