第30話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(11)

 ・・・なのに、ハチのやつツレナイ一言を。

「あのなあヴィオラ。なんか分からないけれど、調子が戻ったんなら帰れば?」

 ・・・いきなりのカウンターアタックかよ。

「えーっと・・・その・・・帰るところないの・・・それにここにいなきゃならないし・・・」

 急にしゅんとして見せるけど、ここで引き下がるわけにはいかないのよ。

 なんたってここにはタブレットがあるのだから、ここから離れるわけにはいかない・・・というのは確かだけれど。

 昨日のような朦朧としたわたしを保護して、優しく接してくれたのはあなたなんだよ?

 ちょっと感激しちゃったんだから。

 だってもしもよ? ひどい人に遭遇していたら・・・最悪乱暴されていたかもしれない。

 だからピンチに助けてくれたヒトに懐いたって、おかしくはないんじゃない?

「帰るところがないって・・・外国からの旅行者じゃないのか? 宿とかあるんだろう?」

「旅行者じゃないの」

「じゃあ留学生とか研修生? 出張って年齢じゃないもんなあ」

「全部違うわ。その時が来たら事情はちゃんと話すから、ここにいさせて。お願い!」

 エメラルドのような色を湛える瞳で、まっすぐハチを見つめる。

 まだ親睦は深めていないけれど、こんなかわいい美少女に真顔で頼まれちゃったら断れるはずがないよね・・・っていうオチに、もう一回だけ期待。

 ハチはまだどこか不安そうだったが、「はあ、分かったよ」と承諾してくれた。

「だけどヴィオラ。ちゃんと言っておくけれど、俺だって健康な男だ。そんなところに同居していいのかよ?」

 それを聞いて、すぐに言っている意味に気が付いた。

「・・・それでもわたし、今はハチを頼るしかないの」

 ちょっとだけ、寂しい気持ちになってしまった。

 そう、わたしには家族とかいない。ある意味孤高の存在。

 だけどハチは、それ以上事情を探ろうともせず、

「分かったよ。そんな顔をされたら断れないよ」と言ってくれた。

 ・・・そういうところ、優しいね。

 出会って一日だけど、女の本能がそう言ってる。

 

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