第7話 スピーディに世界観を伝えるTips(3)
★事件とリアクションで、作中のリアリティを示す
小説を書く上で、けっこうめんどくさいのが作中のリアリティ設定。
我々の住む現実と、物語世界の現実との距離はどれくらいあるのか、ということですね。
たとえば同じアクションモノでも、銃で撃たれれば死ぬ世界なのか、飛んでくる弾丸を素手で受け止める人間がいる世界なのかで、作品の方向性は全然違います。
作品世界がどういうリアリティに基づいて動いているかは、早めに提示した方が良いでしょう。
では、具体的にどうすれば良いか。
手っ取り早い方法としては、いきなり事件を起こしてしまうことです。
異能バトルモノであれば、ざっくり次のような例が考えられます。
まず一行目に「西暦2001年に異能を持った赤ん坊が生まれてくるようになりました」と書く。
そのあとに若干の補足説明をし、すぐに「時は流れ、西暦2020年。東京の路地裏で、一人の少年が警官に追われていた」という風に、具体的な事件の場面に切り替える。
そして、少年が警官隊の銃撃を異能で無効化し、逃げ去っていく描写を書く。
この例だと、読者に以下の情報を伝えることができます。
【1】異能を持った能力者がいて、社会から危険視されていること
【2】異能の力は、拳銃よりも強いこと
【3】異能力者個人は、国家権力と正面対決できるほどの力をもっていないこと
もし作中における異能の脅威レベルを上げたければ、警官隊ではなく、自衛隊やアメリカ軍と戦わせる。戦った後に逃げていくのではなく、灰燼に帰した戦場で異能力者が高笑いをしている様子を描く。
逆に、異能力がさほど強くない世界にしたいなら、異能力者が迫害される様子を書けばOK。異能に大きな個人差がある世界なら、異能力者を迫害している連中を、強力な力をもったヒーロー(あるいはヴィラン)が蹂躙するシーンを書けば良い。
細かい設定や描写を駆使すれば、リアリティの説明にかかるコストはだいぶ下げられます。
次はラブコメでやってみましょう。
たとえば、最初のシーンで「主人公の少年が、一度も話したことのない学園一の美少女に告白される」というシーンを書くとします。
このとき、学園一の美少女の設定を「ファッション誌のモデルをやっている」とすれば、比較的現実に近い世界だと思わせられますし、「日本を牛耳る財閥のお嬢様」とか「外国のお姫様」とかにすれば、デフォルメされた世界だと迅速に伝えることが出来ます。
次に。
この告白のあと、美少女が「やっぱりなんでもないです、忘れてください」と走り去っていくシーンを書くとします。
その後、妹系幼馴染みのサブヒロインが「なに女の子を困らせてんのよ!」と叫びながら主人公に跳び蹴りを食らわせてきたら、デフォルメ色、コメディ色が強くなります。
逆に、呆然としている主人公に気がついたサブヒロインが近づいてきて、「どうしたの? 顔が真っ赤だけど、熱でもあるの?」と怪訝な顔をすれば、現実寄りの方向に持っていけます。
ドタバタコメディをやりたいなら、さっさとここでサブヒロインにドロップキックなり、フライングボディプレスなりを繰り出させた方が、あとあと楽になるでしょう。
と、ダラダラ書きましたが。
・とりあえずいきなり事件を起こす
・キャラクターがその事件に対し、どんなリアクションをするかを描く
とやることで、作中のリアリティをバシッと説明できることもあるよね、という話でした。
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