愛とロマンの日曜日 ⑤

「事情はだいたいわかりました。それで結局潤さんは、これを私に着て欲しいの?着て欲しくないの?」

「……めちゃくちゃ着て欲しいです……。絶対かわいいと思うので、できれば今すぐにでも……」

「これがあるので今すぐには無理です」


 ギプスを指さしてそう言うと、潤さんは上目遣いに私を見る。


「じゃあ……ギプスが取れたら……」

「考えておきます。でも裸エプロンは恥ずかしいのでしません」

「でも一度くらいは……」


 潤さんは蚊の鳴くような声でゴニョゴニョと呟いた。


「絶対にしません」


 キッパリ断ると、潤さんは残念そうに肩を落とす。


「はい……わかりました……」


 なんだかんだ言って、潤さんも『男のロマン』には興味があるらしい。

 裸エプロンだけは断固お断りだけど、一度くらいならメイドもどきをやってあげてもいいかなと思ったりする私も、潤さんにだけは甘いのかも知れない。


「それじゃあ……二人ともギプスが取れて、普通に動けるようになったらデートしようね。このニットのワンピース着て行くから」


 私が笑ってそう言うと、潤さんは嬉しそうに笑ってうなずいた。その笑顔があまりにもかわいかったので、私は潤さんの隣に座り、腕を組んで肩にもたれる。


「ふふ……潤さんもやっぱりかわいい」


 胸に頬をすり寄せながらそう呟いて顔を上げると、潤さんはピクリと眉を動かして私をガシッと捕まえる。


「またかわいいって言ったな……?」

「だってホントにかわいいんだもん。かわいい潤さん、大好き」

「また言った。これはお仕置きが必要だな」


 潤さんは私の頭を片手で強引に引き寄せて唇を重ね、貪るように舌を絡める。そしてもう片方の手で胸元をまさぐりながら、私をソファーに押し倒した。


「かわいいのは志織だろ。俺もう我慢できないからな」

「えっ、ちょっと待って」


 慌てて起き上がろうとすると、潤さんは強い力で私の肩を押さえつけて、また激しいキスをする。


「待てない。怪我が治るまでは大人しく我慢してようと思ったけど、やっぱもう無理。このままここで食っちまうから覚悟しろ」

「えーっ?!」


 潤さんは私のシャツの裾をたくし上げ、胸元に唇を這わせた。胸を撫でる湿った舌の感触に全身の力が抜ける。


「潤さん……ダメだってば……」


 なんとか理性を保って潤さんの暴走を止めようと、自由に動く右手で潤さんの頭を押さえたけれど、その手はやすやすと大きな手にとらわれてしまう。


「志織は俺にこうされるのいやか?」

「いやじゃない……けど……無理したらダメって……」

「じゃあ、無理しなきゃ問題ないな」


 潤さんは獣みたいな目で私の顔を見つめながら、私のスカートの中に大きな手を忍び込ませた。布越しに弱いところを指先で撫で上げられると、もどかしくて切なくて、甘い声がもれる。

 潤さんは私の唇をふさぎ、熱い舌で口の中を舐め回すようなキスをした。そしてあまりにも激しいキスでぼんやりした私の耳元に唇を寄せる。


「俺も無理しないし、もちろん志織にも無理はさせない。いっぱい気持ちよくしてあげるから……しよ?」


 欲情に駆られた潤さんの熱い吐息混じりの声に耳の奥がジンジン痺れて、私の身体の奥が潤さんを求めて激しくうずく。


「……うん……して……」


 私も崩れかけた理性を保つことができなくなり、潤さんの目を見つめながらうなずいた。

 潤さんは私を抱き起こして、もどかしそうに服を脱がせる。そしてソファーに座ったまま向かい合う形で私を膝に乗せ、時おり唇にキスをしながら、優しい手と柔らかい舌で丁寧に私の体を愛撫した。

 潤さんに触れられたところが熱を帯び、その熱は私の中を潤ませて、潤さんの指を濡らす。


「気持ちいい?」

「うん……」


 私がうなずくと、潤さんは長い指でさらに奥をかき混ぜ、わざと湿った音をたてながら意地悪な笑みを浮かべた。


「志織は俺にこうされるの、好き?」

「うん……好き……」


 恥ずかしいけれど正直に答えると、潤さんは嬉しそうに笑って唇にキスをする。


「めちゃくちゃかわいい……。じゃあ一緒にもっと気持ちよくなろ」


 潤さんはゆっくりと私の中に入り込み、体の奥の深いところを突き上げた。


「志織、愛してる。ずっと一緒にいような」


 潤さんの甘い囁きに、私は肩を震わせ甘い声をあげながらうなずいた。

 制御を失った私たちは素肌と体温を重ね、愛の言葉を囁きながら、互いの体の自分とは異なるところを探り、ただひたすら求め合った。

 すべてが終わると、潤さんは私を抱きしめたまま優しくキスをして、ばつが悪そうな顔で私の額に額をくっつけた。


「自制しろってあんなに言われてたのにな」

「言われてたけど……潤さんは最初から自制する気なんてなかったでしょ?」

「うん、まぁ……まったくなかったわけじゃないけど、我慢できる気がしなかった」


 二人して苦笑いを浮かべながら、もう一度抱きしめ合ってキスをした。


「あー……しばらくは二人でって言ったけど、もしかしたら1年後には3人家族になってるかも……」

「それはそれでいいかもね。潤さんも早く子どもが欲しいんでしょ?」

「そうだな。でも俺は志織がずっとそばにいて俺を好きでいてくれたら、それだけで幸せだよ」

「うん、私も」


 お互いの熱で満たされた体を抱きしめ合って、甘い言葉を囁きながら、何度も何度もキスをした。

 二人きりで過ごした独身生活最後の日曜日は、とびきり甘くて幸せな一日だった。




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