愛とロマンの日曜日 ②

「潤さん、二人きりになるとそればっかり……」

「しょうがないじゃん、ホントのことだから。志織は?俺のこと好き?」


 こ……これは……私も前に潤さんに聞いたやつだ……。

 自分が聞くのも照れくさかったけど、改めて聞かれるのも照れくさくて、なんだかくすぐったい気持ちになる。


「もちろん……大好き」


 何度も言っている言葉なのに、答えるのも妙に恥ずかしくて、顔が熱くなった。

 潤さんは真っ赤になっているであろう私の顔を、ニヤニヤしながら覗き込む。


「あれ?志織、照れてる?」

「うん……ちょっとね……」

「かーわいいなぁ……。俺、志織の照れてる顔めちゃめちゃ好き。今すぐ残さず食っちまいたい」


 嬉しそうにそう言って、潤さんは私をギューッと抱きしめ、頬や唇に何度も何度もキスをする。

 ここまで来るともう、誰が見てもバカップル……いや、それを通り越してとんでもない大バカだ。


「潤さん……バカップル通り越してバカになってる……」


 正直に思ったより少し控えめに指摘すると、潤さんはさらに強く私を抱きしめる。


「いいんだよ、俺は親バカならぬ志織バカだから」

「認めちゃうんだね……」


 会社では超絶いい人で優しいけど仕事には厳しい三島課長が、家で私と二人きりになるとバカみたいに私を溺愛している激甘ぶりを、同僚たちが見たらビックリして腰を抜かすだろう。

 ……まぁいいか。

 別に他人がいる前でこんなことをするわけじゃないし、私だって潤さんが大好きだから、これほどまでに愛されている私は潤さんの特別な存在なのだと思えて、とても嬉しいのだ。

 しかしこれではいつまで経っても、荷物の整理どころか、買ってきたものを袋から出す作業すら今日中に終われそうにない。


「ねぇ潤さん、これはこれで嬉しいんだけど……別の袋も開けたいから、一旦手を離してくれる?」

「ああそうか、そう言えばまだ途中だったな。あんまり志織がかわいすぎて忘れてた」


 潤さんは照れ笑いを浮かべながら私から手を離す。どちらかと言うと、照れるのは私の方だと思うんだけど。


「じゃあ次は……」


 瀧内くんからもらったブランドショップの紙袋には、箱がふたつ入っていた。

 二人きりのときに開けてと言っていたけど、一体何が入っているんだろう?他の人が見るとまずいものでも入っているのかな?

 もしかしてセクシーなランジェリーとか、大人なグッズなんかが入っているんじゃ……?そんなものが入っていたら、潤さんを制御する自信がない。

 思わず卑猥な想像をしてしまい、箱を開ける手が止まる。


「ん?志織、どうした?それ開けないのか?」


 潤さんは不思議そうな顔をして箱を指さす。


「えーっと……これは中身がわからないから、あとにする」

「ふーん……?」


 余計なツッコミが入らないうちに、私は慌てて他の袋から買ってきたものを取り出した。


「これは通勤用のスーツでしょ、それからコートに……靴も買ったの」

「そのコート、いい色だなぁ」

「そうでしょ、これなら何にでも合わせられそうだからいいなと思って」


 立ち上がってコートを羽織ると、潤さんは「すごく似合う。かわいいよ」と嬉しそうに目を細める。

 本当に潤さんは私が何を着ても、たとえ似合わなくても「似合う、かわいい」と誉めちぎってくれそうだ。


「こっちは普段着。前に着てたものはみんな処分するから、多めに買ってきた」

「しばらくは毎日新しい服のファッションショーみたいになるわけだ。楽しみだな」


 たくさんあった服を袋から出して見せたり、体にあてがって見せたりして時間を稼いだけど、とうとう残りは瀧内くんがくれたプレゼントだけになってしまった。

 潤さんに見せる前に、ひとりで中身を確かめてみようかとも思ったけど、この流れでそんなことをするのは不自然すぎる。

 もし私が想像しているようなアダルトなものが入っていたらどうしようかと箱を開けるのを躊躇していると、潤さんはまた不思議そうな顔をして首をかしげた。


「開けないの?」


 さっきヘタに焦らすような真似をしてしまったせいで、潤さんは中身はなんなのか楽しみにしているようだ。


「ううん……今度こそ開けるよ……」


 しかたがない。瀧内くんの考えていることがわからないだけに少々怖い気もするけれど、私は中に何が入っているのか知らないわけだから、思いきって一気に開けてしまおう。

 どうかおかしなものが出てきませんようにと祈りながら、目を閉じて一気に箱を開けた。

 おそるおそるまぶたを開いて見ると、箱の中には上品なアイボリーのニットが入っていた。

 良かった、変なものじゃない……!

 よく考えたらこんな高級ブランドのショップに、人に見せられないような卑猥なものが売っているわけがないか。

 ホッと胸を撫で下ろしながらニットを箱から出してみると、それはセーターではなくワンピースだった。


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