See you lover,so goo!~修羅場遭遇~⑨
それから自宅に着くまでの数分間、三島課長はさっき瀧内くんが言っていたことについて説明してくれた。
「俺が中学生のときに両親が離婚して、その後俺は父親に育てられたんだけど、半年前に父親が再婚してから、俺にも早く結婚しろってしつこくてさ」
その前から『もういい歳なんだから早く所帯を持って安心させてくれ』と父親から言われてはいたけれど、ただそう言うだけなので三島課長はあまり気にしていなかったそうだ。
しかし最近は結婚相談所に入会することを勧めたり、知り合いの娘との見合い話まで持ってくるようになって、見合い写真片手に散々急かされ、正直うんざりしているらしい。
そのことをバレーサークルの飲み会で何気なくぼやくと、チーム最年少の女子が花嫁候補に名乗りを上げたという。
「ただふざけてるだけだと思って受け流したんだけど、その後も練習で会うたびにみんなの前で迫られるし、みんなには冷やかされるし、でもあまり邪険にもできなくて本気で困ってる」
「どうして困るんですか?好みのタイプじゃないとか?」
「その子、まだ
なるほど、そこで彼女に三島課長をあきらめさせるための『偽婚約者作戦』を思いついたというわけだ。
しかしそんな漫画とか小説なんかで使い古された、目新しくもなんともないぬるい方法を瀧内くんが提案するとは意外だった。
「だけど三島課長が結婚するまであきらめないって言ってるなら、偽婚約者では問題解決には至らないのでは?」
「相手は若いし、かわいくてモテる子なんだ。正直言って、なんで俺なんだろうってくらいで。今はあきらめないとか言ってても、どうせ一時的な感情だろうから」
もしかして三島課長は結婚する気がない相手とは付き合わない主義なのか、それとも本人が言うように、単純に相手が若すぎてその気になれないだけなのか?
そんなにかわいい子なら試しに付き合うだけでも……と思いそうなものなのに、そうしないところが三島課長らしいなと思う。
「それにしても……三十路近くなると早く結婚しろって言うのは、どこの家も同じですね」
「同じってことは、佐野も?」
「これから出産を考えるなら結婚は少しでも早い方がいいって急かされるんです。言うのは簡単だけど、実際はそんな簡単じゃないですよね」
話しているうちに車は私のマンションの前に到着した。三島課長は車を路肩に寄せながら少し首をかしげる。
「佐野は3年も付き合ってる彼氏がいるんだから、それはそんなに難しくはないんじゃないのか?」
「それは……そう……ですよね……」
三島課長の口から出てきた『彼氏』という言葉を聞いて、私は大事なことを思い出した。
そういえば私……護に連絡するの、すっかり忘れてた!!
午後の休憩のときにでも連絡しようと思っていたのに、急ぎの仕事で必死になっていたら、護のことはすっかり頭から抜けていた。
葉月と会ってからはそれどころじゃなかったし、スマホをチェックする余裕もなかった。
仕事が終わってからも、スマホをサイレントマナーモードにしたままだったので、もし護からの連絡があっても気付かずに完全無視したことになる。
さすがに今、三島課長の前でスマホをチェックするわけにもいかず、どうやっていいわけをしようか考えていると、三島課長は私の肩をポンポンと叩いて笑った。
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