森の朝食_1

 目を開くと見知らぬ天井があった。


 ラズリーは目覚めたばかりの頭で考える。


(ここはどこだっけ?)


 なんだか昨日は、いろいろなことがあったような気がした。あまりにも複雑すぎて脳が処理しきれていないのか、頭の中がモヤモヤする。


 そのせいだろうか? 悪い夢を見たような気分だった。目覚めがあまりよろしくない。


 ラズリーは眠気に顔をしかめつつ、体を起こす。いつものベッドとは違う感触に手が沈む。確認すると、彼女は革張りのソファーで寝ていた。


「よう、やっと起きたのか?」


 聞きなれない男の声がした。そこでようやくハッとして、ラズリーは昨日の出来事を思い出す。


 思い出して、頭が垂れた。結んでいない髪の毛が揺れた。


 少女は昨日、故郷と家族を失くしたのだった。


「……どうした? 気分でも悪いのか?」


 声をかけられて顔をあげる。ラズリーは笑顔を作って、近くに置いていたノートに『なんでもないよ』と書いた。


「そうか……」


 バームは続けて何かを言うそぶりを見せたが、結局なにも言わなかった。


「……服のほうはどうだ?」とバームは、新しい話題を振る。


 服? とラズリーはしばらく考えて、納得したように近くにあったノートを引っ掴んだ。


『かなり、ぶかぶか』


 書き込んだ文字を見せて、ラズリーは丈の余った袖を振る。彼女が着ていた服は洗濯中で、今はバームの服を借りていた。


「ま、オレは太ってるからな!」


 バームは自慢するかのように、自分の腹を軽く叩いた。少女はそんなバームを見て、呆れたような笑みを浮かべる。


 話をしていると、ラズリーはどこかから漂ってくるバターの匂いに気が付いた。

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