第2話



「マネさん…。頼むから俺たちをあだ名で呼ぶのはもう止めて…。」

「えっ?なんでぇ~?」


 和葉に見向きもせず、顔を覆った大川は言った。

 だが、当の和葉は、理由が分からず、頭に“?”を浮かべ首を傾げる始末。


 説明するのも馬鹿らしいが、月隈和葉は、校内でも1、2位を争う美人として名が通っていた。


 健康的に焼けた小麦色の肌。やや赤みがかった茶髪。そして、何より目を奪われるのは、高校生とは思えない抜群のプロポーションだった。細くもなく太ってもいない絶妙な肉付きのウエストが、張りと艶のある大きなバストヒップをより一層際立たせていた。

 そして、何より誰とでも分け隔てなく話す明るい性格。元気で活発。そして、誰にでも優しい、おまけに美人。ここまでくると、非の打ち所を探す方が、困難を極める。


 しかし、当の本人の和葉は、そんな事への興味など一切なく、周りからの眼など気にすることもない。それに気づかせようものなら、明日から2年生男子3人の社会的地位は、抹消されるようなものである。


 そんな学園のアイドルが、男子バスケットボール部のマネージャーなものだから、目立ちたくなくても目立ってしまう。


 そんな歓喜と絶望の渦の中、葛藤し続け1年。結論を収束できずに、今のスタンスに落ち着いている。


“もう、どうにでもなれ”


 結論ともいえるかもしれないが、大川を始め3人の男子生徒は、黙秘を貫くのであった。


 だが、話が脱線していては元も子もない。溜息を吐き、頭を掻きながら、宗像が話を切り出した。


「収穫は正直、“0”だ。」

「やっぱり…。」


 宗像の報告を予想していたのだろう和葉は、顔を顰める。

 仕方ないといえば、仕方ない。たった3人で部活勧誘。文化部を除いて、一桁の人数で勧誘を行っていたのは、男子バスケ部くらいだろう。


 野球部は、30人。サッカー部に至っては40人規模で勧誘にあたる。声を掛けるも、既に野球部かサッカー部が、声を掛けている後。勝利の見えない戦をした所で心が折れる方が、早いのは明確だった。


 そんな規模の格差にマネージャー含め男子バスケ部は、打てる手がなかった。


「マネさんはどうなん?」

「あたし?…あたしは1人捕まえたよ!」

「嘘っ!?マジか!?」

「マネージャーで1人、女の子を。」


 持ち上げて突き落とす。一種の漫才のような巧みな話術に男子生徒3人は、一斉に机に突っ伏した。


「だよね~大丈夫。期待なんてしなかったから。」


 分かり切っていた結末ではあったが、ちょっと期待してしまった自分を久山は恨んだ。


「でもさ…。あの生徒には話しかけなかったの?」


 何かを思い出した和葉が、話題を切り出した。


「誰よ?」

「金ちゃん見てないかな?…本鈴がなるギリギリに2人新入生が、校門を潜ってきたんだよね。」

「本鈴ギリギリまでやってたけど…。」

「2人いたじゃん!超イケメンの新入生。」

「イケメン?…そんな奴いたか?」

「いや~見てねぇな?…なん?イケメンやけ覚えとったん?」

「いや、身長も大きかったんよ!…2人の内、片方は190近くあったかな?」


「「「190!?」」」


 和葉の言葉に男子3人は、目を丸くし唖然とした。


でも―――。


「マジかっ!?」

「190かぁ~欲しいなぁ!」

「でも…見てねぇな。…そんだけ目立つなら覚えていて可笑しくなかけど。」

「もう1人も小さくはなかったよ?…170後半から180中盤くらいの大きさはあったかな。」

「え~そんな2人のビッグマンを俺たち見逃したんか?」

「いや~。記憶なかぞ?ホント…。」

「おったか?そげな奴?」

「でもさ…落ち着てみ。」


 宗像の言葉で3人は口を紡ぐ。


「そんなビッグマンをさ…野球とサッカーが見逃すか?」

「「「・・・・・・あっ・・・。」」」


 希望の光というのは、やはり儚い。


 しかし、新学期は始まったばかり、前途多難であるが、青桜高校男子バスケ部2年生の新学期もこれから始まる。

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