ワンだふるでいず ~ご主人様の始まりの日~


 お父さんはみんなから愛される人だった。

お客さんの喜んでくれるために、ひたむきにコーヒーの研究をして…

小さな喫茶店のマスターだけど、私にとっては憧れの存在だった。


 だけど、別れは突然だった。

交通事故で車と衝突して、即死だったらしい。

お母さんも早くに亡くしている私に、残されたのは喫茶店だけ。

なんて運命というのは残酷なのだろう。


 葬儀が終わり雨の中、家の前に段ボールが置いてあるのを見つけた。

覗いてみると、寒さで震えている子犬が一匹。思わず一言呟いた。

『なんか、神様に見捨てられた同志だね…』。

子犬はこっちをずっと見ている。私も何も考えず見つめ返していた。


 これも運命か…。いや…。

『一緒に来るかい?神様を見返してやろうよ。』

私の運命への抗いが始まった瞬間、モカとの出会いだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やまての宝箱(短編集) やまて ゆたか @yamatenosuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ