62.藍玉幻竜装備一式の完成

 若様訪問から数日間、頑張って依頼をこなしていった。

 その合間合間を縫って、自分の青妖精装備を藍玉幻竜装備にグレードアップしたりもする。

 そうして、依頼も一区切りが付いたところで、若様の藍玉幻竜装備の作製依頼が飛び込んできた。


「……ふう、若様、ほしかったんなら、もっと早めに割り込みかけてもよかったのに」


 依頼は依頼なのでしっかりこなしていく。

 結局、若様の藍玉幻竜装備まで完成したのは、土曜日のお昼過ぎになってしまった。


「いやー、さすが仮面の。品質S+でそろえてくれるなんて感激だよ」

「それはどうも。そいつの納品で一度依頼が途切れてるけど、『ヘファイストス』からの依頼は終わり……ってわけじゃないよな」


 若様はためを作ってこういう。


「もっちろん。仮面のには藍玉幻竜装備をじゃんじゃん作ってもらいたいから、これからどんどんそっちの依頼を割り振っていくよ!」


 そっかー、藍玉幻竜かー。

 なら仕方がないかな。


「どうしたのさ、仮面の。浮かない顔をして」

「うん? ああ、今日の夜に『リーブズメモリーズ』で藍幻竜を狩りに行こうって話になってたんだけど」

「あちゃー、見事にかぶってるねぇ」

「なんだよなぁ。ときに若様、その依頼って明日以降に回せないものなの?」

「できれば今日から始めてほしいねぇ。それくらいのレベルで人材不足だから」


 うーん、そう言うことなら仕方がないのか。

 藍幻竜素材、もう少しほしかったのだがな。


「それじゃあさ、もし『リーブズメモリーズ』の皆がよければだけど、僕が一緒に行ってあげようじゃない」

「うん? なんで若様が?」

「仮面のの代役だよん。僕なら十分に代役を務めることができると思うんだ、その間に、仮面のには装備を作ってもらっていればいい」


 なるほど、悪い考えじゃないな。


「そして、僕が手に入れた藍幻竜素材は仮面のに格安で譲ってあげるよん。これでどう?」

「そこはただじゃないのか?」

「だって、仮面の、全身藍玉幻竜装備に置き換わってるよね。ならこの後の素材は売り物じゃん。だったら、買い取ってもらわないと。僕って、例のボウガンのせいで金欠なんだよねぇ」

「わかった、買い取るよ。他に要望はないか?」

「対策アイテムはひと揃え僕が持ってるから平気かな。それじゃ、『リーブズメモリーズ』に出発だ」


『リーブズメモリーズ』に行き、事情を説明すると納得してもらえた。

 もっとも、レイはかなり不承不承といったところなので、素材がそろったら、優先して藍玉幻竜装備を作ることを約束したりもしたが。

 その後は、若様と『リーブズメモリーズ』の皆がどういったことができるのかを確認する場となった。

 若様のメインウェポンは槍だが、サブウェポンとしてボウガン……というか竜墜砲・剛一式を使い始めたらしい。

 今回行くことになっている、藍幻竜は何回か行っているらしく、もう万全ということらしい。


「ふむ、万全か。それは頼もしいな」


 フォレスト先輩も満足げである。


「むー、でも、エイト君と遊べるタイミングがまた減ったよ」


 逆にレイは不機嫌なままだ。

 こちらも、装備は優先で作るということで納得しているのだが、やはり納得し切れていないのだろう。


「まあ、そういうな、レイ。エイトが生産で忙しいのはいつものことだろう」

「そうですけど。たまには一緒に遊びたいじゃないですか」

「すまないな。今回は、ちょうど依頼を受けられるようになったばかりだから、急ぎで対応するしかないんだよ」

「ごめんねー、レイちゃん。代わりに、藍幻竜素材はたっぷり取りに行けるようにするからさー」


 最終的には納得してもらえたので、こちらの問題もあまり気にしないでいいだろう。

 あとは……このまま見送れば大丈夫かな?


「それはそうと、エイトよ。藍玉幻竜装備が完成しているのだろう? 装備してみせてもらえないか?」

「それ、私も見たい! お願い、エイト君!」


 あー、そっちのお願いがきたか。

 装備も一式持ってきているし、問題ないかな。

 さて、それじゃあ、装備を交換してと。


「ほれ、これが藍玉幻竜装備だ」

「ふわぁ……きれいな装備……」

「ふむ、青妖精もきれいだったが、やはり藍玉幻竜になると一段と華やかだな」

「だねー。これなら私の全身鎧も期待できるかもー」

「……俺もこれを装備するのか? ちょっと男の俺にはきついぜ」

「ソード先輩、俺もっす」


 女性陣には好評、男性陣には不評……というかきつい、って評価か。

 なんとなくわかるぞ。


「ちなみに、男性向けの金属鎧はこんな感じになるよん」


 若様も装備を変更して、藍玉幻竜装備を身につけて見せる。

 それを見て、ソード先輩やブレンも少しほっとしたようだ。


「ふむ、男性向けは少し凜々しい印象だな。そう考えると、なぜにエイトの印象がきれいやかわいいに落ち着くんだ?」

「あー、ほら、仮面のって身長や顔つきが……ね?」

「うっさい」


 身長が足りていないのは重々承知だよ!


「さて、それではそろそろ藍幻竜の討伐に向かうとしようか」

「はい、わかりました」

「りょうかーい」

「さて、いっちょ暴れてきますか」

「エイトの分も頑張ってこないとな」

「仮面のは吉報を待っててねん」

「ああ、わかった」


 藍幻竜討伐に向かう皆を見送って、俺は工房に戻り藍玉幻竜装備を作り始める。

 装備をふたつほど作り終えたタイミングで皆が帰ってきて、無事、藍玉幻竜を倒せたとのことだ。

 若様は帰ってしまったようだが、若様と竜墜砲・剛一式が大活躍だったらしい。

 フォレスト先輩から、竜墜砲のような弓が作れないか、再度検討してもらえないか頼まれてしまったぞ。

 ともかく、全員分の藍玉幻竜装備を受注して今日は終了した。

 いま受けてる依頼もあるからすぐには作れないけど、次の週末には間に合うだろう。

 ……そうなってくると、今度は七月が近づいてきて、リアルでは期末テストも間近なんだけどさ。

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