44.翠幻竜グリューンヴィンド_1

次話から2日に一回の更新とさせていただきます。

次の更新は水曜日です。


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「やったね! エイト君も一緒に翠幻竜討伐だよ!」

「声が大きいぞ、レイ。だが、エイトも参戦でよかったのか?」


 はしゃぎながら声を上げるレイを、ソード先輩が押さえつける。

 相変わらず、レイは元気なことで。


「構いませんよ、ソード先輩。俺もたまには戦闘ということで」


 この問答はこれで終了となり、あとは全員にアイテムを配布して準備完了だ。

 戦闘時の注意点などは、現地に行ってから説明を受ける流れだ。


「実をいえば、私とブルーのふたりで先程挑んできたのだがな」

「注意点の確認だけのつもりだったんだけど、やっぱりレベル45のボスって強いねー」


 どうやら様子見の戦闘で、それなりに苦労してきたらしい。

 装備の耐久値はそんなに減っていないということなので、そちらは翠幻竜戦が終わってから確認することとなった。


「さて、準備も整ったことだし、翠幻竜グリューンヴィンド討伐に向かうとしよう」

「おー!」


 フォレスト先輩の号令に、ノリのいいレイが乗る。

 ほかの皆も、準備を終えて立ち上がった。

 さあ、翠幻竜戦に出発である。

 ……緊張して胃が痛くなってきた。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「あれが翠幻竜グリューンヴィンドですか。綺麗な緑色のウロコですね」

「見た目は、な。いざ戦闘となると、そうも言ってられなくなるぞ」


 遠くから眺める翠幻竜は、本当に美しい。

 戦闘フィールドが月明かりに照らされた森の広場ということもあり、とても幻想的である。


「まず、基本的な戦術だが、普通のドラゴンと同じ戦術が通じる。タンクのブルーが引き付けて背後から全員で攻撃だな」

「はーい。がんばるよー」


 フォレスト先輩の説明を受け、ブルー先輩が明るく返事をする。

 普通のドラゴンと一緒と言うことは、紅幻竜と同じ戦法が通じるのかな?


「ただ、注意が必要なのは、スピンアタックの予兆が極めて短いことだな。ダメージも少ないが前衛の回避は困難だろう」

「そこでエイトが作ってくれた、アンカーストーンの出番だ。コイツを使っておけば、ノックバックの効果を無効化できるんでな」


 なるほど、ここでアンカーストーンか。

 ダメージ的に耐えられるなら、ノックバックにだけ気を付ければいいんだものな。


「アンカーストーンは十分な数が揃っている。効果時間もかなり長いが、効果切れにだけは注意してくれ」

「了解っす。それにしても、こんなアイテムあったんだな」


 ブレンが首をかしげながらアンカーストーンを見つめるが、まあ、知らないほうが普通のアイテムだろう。


「あったんだよ、いちおう。ただ、ノックバック攻撃って基本大ダメージだから、回避が前提なんでな。日の目を見なかったアイテムだよ」

「なるほどなぁ。さすが、エイトはこういうアイテムにも詳しいな」

「スキルトレーニングで作ったことがあったからな。トレーニング効率のいいアイテムだったんだ」


 アンカーストーンは【錬金術】アイテムだが、あるレベルでのトレーニングに役立つアイテムだった。

 そんなに高ランクアイテムでもないので、いまは量産体制が整っていると若様からは聞いている。

 完成品を買うよりも素材を買ったほうが安上がりなので、素材を売ってもらったけどね。


「さて、基本行動はそんなところだろう。注意しなければならないのは、攻撃の追加効果として発生するスタンと、ランダムに発生する竜巻攻撃のふたつだ」

「俺も掲示板でそれは確認したな。どうやって対応するんだ、フォレスト?」

「いい質問だな、ソード。結論だけ言えば、スタンは確率の問題なので発生しないことを祈るしかない。竜巻は前兆を見逃さずにしっかりと避ければよい。以上だな」


 ソード先輩の質問にフォレスト先輩が答えたが……答えになっていないかな。

 もう少し具体的な答えがほしかったんだけど。


「ああ、前兆というのは、竜巻が発生する周囲の草が巻き上がる現象のことを指すんだ。なので、タンク以外は攻撃ばかりに専念せず、竜巻も回避するようにしなければいけないぞ」

「先輩、タンク以外ってどういうことっすか?」

「ああ、タンクの周囲……というか、翠幻竜の正面には竜巻が発生しないらしいのだ。ただ、翠幻竜の前面に立っているとドラゴンブレスを受けるから……」

「タンク以外が避ける場所としてはよくないってことですね。了解しました」

「うむ。ほかに質問はあるかな?」


 フォレスト先輩が質問するが、ほかの皆は質問がないようだ。

 それじゃあ、俺が聞いてみるとしようかな。


「フォレスト先輩、ほかの攻撃パターンについての説明はないんですか?」

「ほかの攻撃パターンか……ないわけではないのだが、残りHP40%まで削らないと厄介な攻撃は飛んでこないのだよ。……ああ、そこまでの間でも、一定間隔で風の球が出現するので、それを破壊しないと大ダメージだったか」

「……そういうことは、先に説明してもらいたいんですけど」

「エイトはそちらに参加せず、ブルーの回復に専念してもらいたいからな。風の球に対処するのは私たちに任せてくれ」

「だってー。よろしくね、エイト君」


 

 そういうことなら構わないけど。


「陽炎みたいに全員参加じゃないんですか?」

「今回は、風の球が発生している間も翠幻竜は普通に攻撃してくる。そのため、タンクとその回復役は翠幻竜の相手をしなければならないのさ」

「そういうことでしたら任せてください。ブルー先輩もよろしくお願いします」

「うん、よろしくねー」


 とりあえずの準備はこれくらいかな。

 フォレスト先輩が再度質問がないか聞いてみるが、誰も質問することはなかった。


「それでは準備は整ったな。行くぞ、翠幻竜グリューンヴィンド!」

「だから、そのセリフはやめろって、フォレスト」

「いいではないか、ソード。気合いが入るのだから」


 

 そんなやりとりもあったが、いよいよ翠幻竜戦。

 気合いも十分だし、頑張ってみますか!

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