10.《Braves Beat》での再会

カクヨムコンに参加するためカクヨム版のみ先行公開します

本日は2話投稿します

7時・19時ごろ公開予定です


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 晩ご飯を食べ終わって、明日の準備を整えたら、夜のログインだ。

 明日からは本格的に高校生活が始まるわけだし、あまり夜遅くまではログインできないな。

 というわけで、自分の工房へとログインしてきたのだが、来客を示すメッセージが出ている。

 丁度よかったというべきなのかな、ここは。

 工房玄関の施錠を外し、お客さんを迎え入れる。


「はいはい。お待たせしたかな」

「ふむ、本当に仮面をつけているのだな。いや、少し驚いた」

「うん?」


 扉の前で待っていたのは、男女合わせて四人のグループ。

 そのうちの一人は……。


「やっほー、また会えたね」

「レイか……。ということは」

「うむ。私は三海だ。こちらでは、フォレスト=シースリーだな」


 三海先輩……フォレストは若葉色の髪を大きな三つ編みにして体正面のほうに流している。

 森を連想させる髪の色とは対照的に、瞳の色は深い海を思わせる濃紺だ。

 それに全身をレザーアーマー一式で覆い、頭は大きな羽根飾りのついた蒼いベレー帽をかぶっていた。

 それに背中に背負っている武器は……滑車付きの弓、コンパウンドボウだ。

 クセがあって使いにくい武器なのに珍しいな。


「雨山だよー。ブルー=スカイね」


 雨山先輩……ブルーだが、薄い褐色色の肌に名前の通り空色の髪をサイドアップにまとめていた。

 瞳の色も水色で、髪にあわせている感じかな。

 装備は重厚な全身鎧を身につけていて、背中には巨大なタワーシールドを背負っている。

 ふんわりした雰囲気には似合わないけど、タンクはブルー先輩が務めているのようである。


「絢斗だ。こっちでは、ソード=レイクサイドと呼んでくれ」


 最後に絢斗先輩……ソードは、グレイの髪をウルフカットにしており、瞳の色は焦げ茶色だ。

 装備は金属鎧をメインにした構成かな?

 武器は腰に吊り下げているブロードソードの模様。


「あ、どうも。わかっていると思うけど、エイト=ダタラだ。よろしく」


 高校のゲーム同好会の皆がやってきていた。

 レイに俺の工房を教えたのがフォレスト先輩なら、この場所を知っていて当然か。


「ふむ、話し方はこちらが素なのかな?」

「どちらかというとRPロールプレイですよ。なので、普通に話させてもらいます。……それで、今日はどういったご用件で?」

「なに、装備の依頼をしたいんだよ。ひとまず、中に入らせてもらえないかな?」

「わかりました。どうぞ」


 四人を工房へと招き入れ、話を聞くことに。


「ふむ、ここが君の工房か。受注生産専門、と聞いていたがそれ以外の武器もあるのだな?」

「依頼を受けた品のあまりで作った装備ですよ。品質もそれなりなんで、ほしければ売りますよ?」

「いや、そちらには興味がないな。私たちは赤妖精シリーズの装備がほしいのだからね」

「……やっぱりそっちか」

「うむ。……それで、ここでは持ち込みで解体はしてくれるのかな?」

「できますよ。費用は別にもらいますけど」

「それはよかった。赤妖精を何匹か倒して持ってきてあるんだ。それを解体して素材にしてほしい」


 何匹か、ねぇ。

 つまりそれなりに解体する必要があると。

 さて、どうしたものか。


「……それって、俺もパーティに加わって素材をもらっても大丈夫ですか?」

「ああ、その程度だったら構わないよ。エイトも赤妖精シリーズがほしくなったのかな?」

「赤妖精シリーズっていうか、それから作る鍛冶道具がほしいというか……ちなみに、あとひとり参加させてもらっても?」

「うむ、大丈夫だ。六人パーティまでなら問題ないからな」

「わかりました。ちょっと待っていてください」


 俺はフレンドリストを表示し、ある職人の元へ連絡を入れる。

 少し話すとその職人も来てくれることとなった。


「フレンドリストから連絡をしていたみたいだが、誰に連絡をしてたんだ?」

「道具作り専門の職人ですよ、ソード先輩」

「うん? 道具作り専門職人ってなんだ?」

「各職人がアイテムを作るときに使う道具とか、特殊な効果を持った消耗品を作るのを専門とした職人ですよ。今回は、赤妖精シリーズの鍛冶道具を作ってもらうために呼びました」

「なるほどなあ。ちなみに、その道具って必要なのか?」

「できればほしい、かな。たぶん、火属性専用鍛冶道具の有無で品質が二段階くらい変わると思うんで」

「そいつは確かにでかいな」

「でしょう? ……お、来たようだな」


 馴染みの道具職人を工房に招き入れ、解体部屋へと移動する。

 そこでパーティを組んで解体するわけだが……。


「それじゃあ、解体を始めるけど先に注意事項な。一回の解体で数個アイテムが手に入るけど、それは解体の上位スキルの効果だからあまり気にしないでくれ。それと、解体中に宝石……今回ならルビーが何個か手に入ると思うけど、それは最後回収させてもらう。解体費用はそれでいいのでよろしく」

「しつもーん、なんで宝石が手に入るの?」


 解体を始めようとしたら、レイが手を上げて質問してきた。

 まあ、教えても問題ないか。


「宝石ナイフを使って解体するからだよ。【解体】スキルのレベルが高い状態で、宝石製解体ナイフを使うと解体結果のアイテムに宝石が出ることがあるんだ。それを使って、新しい解体ナイフを作るってところかな」

「ふむ、宝石ナイフの噂は聞いたことがあるが、宝石が出るという話は聞いたことがないな?」

「【解体】スキルのレベル8以上ですからね。普通のプレイヤーはそこまで上げないよ」

「……確かに。【解体】スキルは7あれば滅多に困らないし、レベル8にするためのスキルトレーニングが難しいから8まで上げる者は少ないな」

「なんですよね。で、ついでに教えると、【解体】レベル8になると上位スキルの【解体職人】ってスキルも覚えますよ。一回の解体作業で複数のアイテムが出るようになるスキルです」

「それはいいことを教えてもらったな。今度、レベル8まで上げて試してみよう」

「どうぞご自由に。……さて、それじゃあ、そろそろ解体を始めますか」


 宝石……今回は火属性なのでルビー製のナイフを赤妖精の死体に突き立てる。

 死体とは言っても、赤妖精は死ぬと水晶の塊のようになるので生々しさはない。

 一回目の剥ぎ取りが終わり、二回目の剥ぎ取りに移る。

 そして、二回目の剥ぎ取りが終わるとともに、ルビーのナイフが壊れて消滅してしまう。

 これには、道具職人以外の四人が驚いた様子を見せた。


「うわー、こんな簡単に壊れるんだね。宝石ナイフって」

「俺は【解体】スキルのレベルが高いから二回使えますけど、スキルレベルが低いと一回で壊れますよ。特定属性の高品質素材を入手できますが、宝石を回収できないと割に合いませんね」

「そうなんだね。……宝石二個出たからあとであげるね」

「それはどうも。それじゃあ、残りの解体もしてしまいますから、よろしく」


 新しいルビーのナイフを取り出し、解体を再開する。

 ナイフの予備は十分にあるし、数体分の解体なら問題ないだろう。


 そうして二体ほど解体を終えたところで道具職人が十分に素材が集まった、ということで退出することに。

 その時、俺が手に入れた素材から鍛冶道具作製に必要なアイテムを渡して、依頼をしておいた。

 これから作り始めて、一時間ほどで完成するのでできたら取りに来てほしいと言われた。

 それについては了承し、残りの解体作業を始めようとしたところで、また客がやってきた。


「おいーっす。エイト、お客さん?」

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