第33話 突撃魔王城
決戦は日中。
魔族は基本的に人間より身体能力が高く、夜目も効く。見通しの悪い夜間に戦うのは得策では無いのだ。
ショウは草の茂みからそっと魔王城を観察した。
城とは名ばかりの優美さの欠片も無い粗雑な、しかし大きさだけは巨大な建造物。その壁は強固な鉱物で作られており、壁を壊すことは困難だろう。
門には見張り番の魔族が二匹。
鳥の頭と人間の身体・・・バードマンという種族だろう。
「・・・見張りを手早く片付けて正面突破が手っ取り早いかな? 忍び込めそうな窓もなさそうだし」
ショウの言葉にアンネが深く頷いた。
「賛成です。手早く行いましょう」
皆の同意を得るとショウとアンネはそれぞれ剣を構え、茂みから一気に飛び出した。
見張り番が声を上げる前に高速で間合いを詰め、ショウは聖剣をバードマンの首へめがけて振り抜いた。
綺麗に両断されたバードマンの首は、信じられないという表情を残したまま地面に落ちる。
横を見るとアンネの方も事を終えたようだ。刀身に付着した血液を軽く素振りをして落としている。
「ひゅう。大した物だな勇者殿」
後から出てきたフリードリヒがランスを肩に担ぎながら賞賛の言葉を贈る。シャルロッテとカテリーナも続き、一同は魔王城の前に集合した。
「さて、ここからが本番だ!」
斬る
払う
突く
前衛の三人は獅子奮迅の働きを見せ、また後衛の二人も前衛を良くサポートした。パーティの実力は間違いなく世界屈指、しかし敵は次から次へと沸いてくる。
「くそっ! キリが無いなこれじゃ」
目の前の魔族を斬り捨てながら悪態をつくショウ。
魔王城に侵入できたまでは良かったのだが、敵兵に見つかった後からもうこの有様だ。
斬っても斬っても敵がやってくる。廊下が狭い事が幸いして一度に攻めてくる敵の数は限られてくるのだが、それでも限度というものがあるだろう。
「先日の戦いで魔族側も消耗してる筈だ! こんな猛攻がいつまでも続くわけは無い!」
そう言ってフリードリヒはみんなを励ます。
先日の戦い。
あの光の矢を降らす謎の魔族が現れるまで、フリードリヒの軍団は魔王軍をかなり追い詰めた。あの日からまだそう時間は立っていない。魔王軍の兵も無限という訳では無いのだから。
「しかしこのままでは私たちの体力が持たん・・・・・・シャルロッテ! 前方にでかいのを頼めるか?」
アンネの言葉にシャルロッテは額から流れる汗を拭いながら頷いた。アンネの狙いはなんとなく把握できている。シャルロッテは急速に魔力を練り上げ、状況に合った魔法を選択する。
「”ヘル・ファイア”」
詠唱と供に杖を前方に向ける。
その言葉を聞いた前衛の三人はさっと魔法の通り道を開けた。
展開された地獄の業火が圧倒的な殺意を持って前方にひしめいていた魔族達を焼き払う。肉の焼ける嫌な臭い、しかしその死体が残ることは無い。
バジリスクすら一瞬で消し炭にした業火、下級の魔族程度では炭すら残らないのだ。
「道が開けたぞ! 走れ!」
アンネの先導で一同は走り出す。
シャルロッテの魔法は凄まじく、魔族側も体勢を立て直すのには数秒の時間がかかりそうだ。
先導したアンネは廊下の途中に扉があるのを発見する。
何の部屋かは知らない。
しかし背後には迫り来る大量の魔族。こちらは皆体力を削られている。
悩みは一瞬。例えすぐ扉を破られるとて少しでも休めれば御の字だ。
「扉の中に入る! 遅れるな!」
体当たり気味に扉を開け(鍵などはかかって無いようだ)中に入るとかんぬきをかける。どうやら扉は頑丈にできているようで、今すぐこの扉が破られるという事は無いようだ。
ほっと一息をつく一同。しかしその背後からかけられたのは奈落の底から響くようなバリトンボイス。
「やっと来たか。待ちわびたぞ」
振り返る。
その瞳に映るのは立派な椅子に座る巨体の魔族。
煌びやかな鎧を身に付け、腰には大鉈を装備している。
山羊の頭と人間の身体。そのアンバランスさが見る者に言い様の無い恐怖を与えるのだ。
「魔王・・・カプリコーン・・・」
フリードリヒの言葉に一同は理解する。
目の前の魔族が今回のターゲット。
魔王カプリコーン。
決戦が
始まる
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