第10話 小さな子のおっぱいには手を出すな
うう~ん、ここは何処だ……
瞼を擦りながら俺は目を覚ます。
周囲を見渡すと無数の本棚に囲まれている。
ここはまさか……学園の図書館か?
「起きたか。ギル・アーデン」
すぐ隣にユリア先輩がいる。そういえばこの人に魔法をかけられたんだったな。
結局無理やり図書館に連れて来られてしまった……
俺は不機嫌そうに先輩に話しかける。
「それでユリア先輩。どうして魔法をかけたんですか」
「……なんとなくだ」
そっけなく俺の質問に答えるユリア先輩。
絶対嘘だろ、俺が断ろうとしたからだろ。
そんな俺の気持ちを察したのか、ユリア先輩が慌てて話し出す。
「そんなことはどうでもいいだろ。今は作戦を実行しよう」
「……痴漢行為はよくないと思います」
俺はやんわり断りを入れる。
するとユリア先輩がこちらをじっと見てくる。
5秒ほど見つめ合うと目を潤ませ、声を震わせる。
「そんな……うっ……一生懸命考えたのに……うっ」
え? なんか泣き出しそうなんだが。
女の子を泣かせるなんてあってはならない!
俺は慌ててフォローをする。
「すみません‼ やります‼ やりますから泣かないでください‼」
「……そうか! じゃあすぐに始めよう!」
俺の言葉を聞いてぱっと顔を輝かすユリア先輩。
なんか明るくなるの早くないか……
どこか弄ばれた気分になる俺を知ってか知らずか意気揚々とユリア先輩は話し出す。
「まずはこの『見えなければ乳揉んだっていいじゃない』作戦からいこう」
「あの……ずっと言いたかったんですけど、その作戦名なんですか?」
「さあターゲットを探そう」
俺の言葉を華麗にスルーしてユリア先輩は作戦を進めていく。
……早急に作戦を実行したいみたいだな。
辺りとキョロキョロと見渡しながら本棚を縫うように進んでいく先輩についていく。
「ストップだ」
ユリア先輩は歩みを止めて俺に制止を促す。
どうやらターゲットを見つけようだ。本を読んでいる金髪でロングヘアーの女の子で見た感じ大人しそうだな。
ユリア先輩と同じくらい小柄なのでおそらく1年生だろう。
先輩に言ったら怒られそうだが。
「よし、彼女をターゲットにするぞ」
そう言うとユリア先輩は俺の手を引っ張り近くの本棚に隠れる。
ターゲットを見つかっていないのを確認すると先輩は耳打ちをしてくる。
吐息がくすぐったいな。
「【
「簡単に言いますけど二重で魔法を発動するのは難しいんですよ……」
魔法の発動中に別の魔法を発動するのは中々難易度が高く、
例えるなら、右手と左手で違う文字を書き続けるようなものだ。
膨大な練習も必要だが、元々持っている魔法のセンスが問われる。
「でも、首席の君なら出来るだろ」
「……そうですね」
ユリア先輩はいたずらっぽく笑いかけてくる。
確かに俺は
こんなことに使いたくはなかったな……
「【
俺は言われた通り【
【
体だけではなく、身に着けている服なども透明化するので裸になる必要はない。
俺は透明になってターゲットの女の子にじりじりと近づいていく。
10メートル……7メートル……4メートル……
そしてついにターゲットと1メートルほどの距離まで近づいた。
しかし、近くで見ると綺麗だな。整った顔に金色の瞳、人形みたいだ。
透明になっていても緊張するな……
ターゲットの美しさに緊張する心を和らげようと本棚に隠れているユリア先輩の方を見る。先輩は両手をわきわきさせるジェスチャーをしている。早く揉めってか……何だか楽しそうだ。
俺も当事者じゃなけりゃ楽しかったろうな……
こうなった以上仕方ない、覚悟を決めるか。
俺は決意を胸に【
ターゲットは何かを察知したのか、今まで本に向けていた目線を急に上げる……目が合った気がした。これバレてないよな……
するとターゲットの女の子がニヤリと笑い魔法を使う。
「【
女の子が使った魔法は【
つまり俺の【
姿が丸見えになり今度は正真正銘ターゲットと目が合う。
女の子のおっぱいに向け手を伸ばす変質者の図が完成した。
「君が資格者……ギル・アーデンだな」
「はい」
急に自分の名前を呼ばれ思わず返事をしてしまう。資格者というのはよく分からないが……
するとターゲットの女の子が自己紹介を始める。
「初めましてだな。私はセレス。この学園の学園長というやつだ。よろしくな」
この学園の学園長? この学園ってアルテナ魔法学園のことか?
つまりなんだ……俺は学園長のおっぱいを揉もうとしてしまったのか?
急に顔から血の気が引き、体の体温が低下していく。
「が、が、がががが学園長⁉」
動揺が隠せない。
マズイマズイマズイマズイ‼ 非常にマズイぞ‼ 俺は学園長のおっぱいに手を出そうとしたのか‼ 謝罪を! 謝罪をしないと‼
俺は素早く学園長から離れ、土下座をする。
「すみませんでした‼ ほんの出来心だったんです‼」
「出来心であたしのおっぱいに手を出そうとしたのか?」
「すみませんすみませんすみませんすみません」
「違うだろ。卒業試験のためだろ?」
学園長の口から出た卒業試験のワードに謝るのを止め、俺は質問をする。
「知ってるんですか、卒業試験のこと」
「知ってるさ。課題選定の魔道具はあたしが作ったんだからな。内容だって分かっている」
そういえばそうだった。じゃあこんな課題を仕込んだのもこの学園長なのか。
謝罪の心から一転してわずかな怒りの心を感じた俺に学園長は聞いてくる。
「ギル・アーデン。この後時間はあるかい?」
「時間ですか? 大丈夫ですけど……」
俺は床に座ったまま顔を上げて答える。
学園長はフッと笑い話す。
「学園長室に来てくれないか。少し話がある」
あ……これは怒られるやつだな……
そうか感じた俺は助けを求めようとユリア先輩のいた場所を見る。
そこに先輩の姿は無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます