第80話 太陽の差さぬ場所にあるもの
「情報部ですかぁ……、なんか我が深淵邪神教団もいよいよそれらしくなってきましたね!」
成り行きを見ていたタラスが、一段落付いたと判断したのか快哉をあげる。とはいえ能天気ではあるけど、俺としても大体同じような感想は抱いていた。
「それで、ロクがヒカゲの隊長だったっていうのは本当か?」
簡単に事情は伝えていたけど、やはり真偽を疑っている部分はあったのか、ナラシチがロクに直接確認をする。
「そう言っているだろう。スルカッシュ王国国王直属工作隊、通称ヒカゲの隊長だ。いや、だった、か」
「はぇぇ」
改めて聞かれても断言するロクの言葉に、タラスが妙な感嘆の声をだす。
「その反応だと、ナラシチだけじゃなくてタラスも知っていたのか、そのヒカゲっていうの」
言ってからタラスも王都学院を出た秀才だったことを思い出して、失礼だったかもと思ったけど、タラスの方は気にした様子でもなかった。
「名前だけはすごく有名ですからね」
「有名? 秘密の工作部隊ではなかったのかのぅ?」
タラスからの意外な返事に、シンが思わずといった感じで聞き返した。有名な秘密部隊っていう言葉の違和感がすごい。
「隊の存在自体は隠し通せるものでもない、国に属する公的な組織だからな。無理に隠すよりはいっそ広めた方が都合のいい事もある。重要なのは、実際に誰が所属して、何をしているか、という事だけは何としても隠すことだ」
言われてみれば、俺が人間として死ぬ前にいた世界でも大きな国の諜報機関とか名前だけは知っていたな。そう考えると何も不思議な状況じゃないのか。
「その何としても隠すことの大将が、何でこんな田舎の農村で気軽に転職してるんでやすかねぇ」
まだ不満そうなナラシチが嫌味を口にするけど、口調がいつもの調子に戻ってきている。
「ヤミ様は強い、自分よりはるかに」
「……、……え!? それだけでやすか?」
そこから説明が始まると思ってロクの言葉の続きを待っていたナラシチが、何も続かないことに思わず突っ込みを入れる。
「それだけだ。元“銀鐘”の連中も同じだろう?」
「いや、俺っち達の場合は状況とか……、林での行動とか……、普段の振る舞いとか……、……いや、まぁ要約すると強いからでやすけど」
そこはもうちょっと頑張って欲しかった。横で見ているタラスとセシルは「こいつら……」といわんばかりの半眼をしている。けどそちらに聞いたところで、やっぱり微妙な答えがでてきそうだからあえて聞いたりはしないけどな。
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