第41話 狂神の想い
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「ぐっ、うぅ……」
突如負荷が無くなったことに驚き、シンはその場に膝をついた。
「オオフクロウからの力の余波が消えたようだのぅ。しかしヤミよ、それでは……」
ヤミが邪神としての産声を上げたのを聞いて狂喜に歪んでいたシンの表情は、再び曇っていく。
「何をしようというのかはわたしにも分かるし、反対もせん。せんがしかし、それはまだお前には難しい」
シンが言葉にした不安が形を成していくかのように、ヤミがオオフクロウへと向けて放っていた邪気は奔流となって噴き上がり、巻き上げられた砂塵がヤミとオオフクロウをもろ共に覆い隠していく。ヤミが力の制御に失敗していることは、邪気が見えるシンには瞭然だった。
「じゃが、あれ程の邪気に干渉するほどの出力は今のわたしには……」
狂神として悠久の経験を持つシンには、制御を離れて暴走し始めたヤミの邪気をうまく散らす方法も収める方法も分かっている。しかしそれを実行するだけの力が無いことに唇を噛みしめる。
しかし状況はそんなシンの懊悩を待つ訳もなく、悪い方へと遷移していく。オオフクロウから放たれる余波が収まり、消耗はしているものの動けるようになっているシンは、しかし動きあぐねていた。
「ヤミは未熟な新しき邪神じゃが、その身の邪気は常軌を逸して膨大じゃ。外からわたしが微力で干渉したとて……。なんとかヤミ自身が制御を取り戻すしか方法はあり得ん」
老練である故に、シンは自分に出来ることがないことをよく理解している。そしてそれがシンに二の足を踏ませる楔として内心に突き刺さっていた。
「きっと何もできん。じゃが……、それでも…………っ!」
光神に神としての名と力を奪われたが為に何もできないシンは、邪神と共に過ごした神ではない存在としての想いの為に、何もしないではいられなかった。
「ヤミっ!」
理屈の楔を振り払ったシンは、想いだけで飛び上がる。その向かう先ではヤミを中心とした邪気の奔流が、これから世界全てを飲み込もうとでもいうかのように、勢いを増し続けていた。
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