第10話 傷

 外に出ると、黒いモヤが狼の形に変わった。怪異達は、僕達守神を憎んでいる。本当は素手で触ってはいけない。素手で触ると、触った場所に傷ができる。その傷は僕達を侵食して、最悪の場合死に至る。一度死んだのにもう一度死ぬなんて、おかしいと思う人もいると思うが、守神はくれはちゃんみたいな普通の霊とは違う。

「流石にまずかったか……」

化け猫の時は何ともなかったが、今回は少しやばいかもしれない。

低い唸り声を上げて僕を睨んでいる狼。刀を構える。

『キサマ、バカなのか。自分からやられにくるとは』

「何であの人達に取り憑いてるんだ」

『アイツらは、取り憑きやすかった』

「今すぐに止めろ。やめないのなら殺す。どうする」

『やめないに決まっているだろう。オマエらはなぜオレたちを殺すんだ。何故ヒトの味方をするんだ』

「それが僕達に与えられた任務だからだ。人間を守る。僕は、人間達に危害を加える奴等を許さない」

『……フン。そうか。ならここで死んでもらおう』

「死ぬのはお前だ」

「りょーせーにーちゃん……!」

「え……っ?」

声がした方を見ると、くれはちゃんが家から出てきていた。まずい。くれはちゃんが、襲われる……!

僕の予想通り、狼はくれはちゃん目掛けて飛びついた。

「止めろ、っ!」

僕はくれはちゃんを突き飛ばした。くれはちゃんが受けるはずだった攻撃を、僕が受けた。

「冷青ッ!」

「ぐっ、う……」

「大丈夫か!?オイ!」

「りょーせーにーちゃん、だいじょーぶ!?」

「くれは、ちゃん。逃げ、て……」

「やだよ……!りょーせーにーちゃんをおいてにげるなんていや!」

「チッ。オイ、くれは!さっさと逃げろ!」

「やだ!」

頑なに逃げる事を拒むくれはちゃん。そんな彼女と、僕は約束をした。

「くれは……ちゃん、聞いて。僕は、大丈夫だから。必ず戻るから、ね?約束する。だから、逃げて」

「だいじょーぶ、なの?わかった。にげる!」

「玖陽くん、後はお願い」

「……分かった。無理はしないでくれ」

「うん」

くれはちゃんを玖陽くんに託して、僕は立ち上がった。先ほど受けた攻撃で肩が痛む。でも負けるわけにはいかない。

『まだ立ち上がるか』

「お前を倒す。絶対に」

『倒してみろ』

刀を構え直して、狼に攻撃を仕掛けた。狼がそれをかわして攻撃をしてくる。

『お前、動きが鈍くなっているな。殺しやすい』

「くっ……」

攻撃を刀で受け止め、隙を突いて蹴りを浴びせた。狼は僕の蹴りを受けて地面に転がり込んだ。

『ぐぅ……やるな、お前。少しみくびっていたかもしれない』

「はあ、はあ、はあ」

傷が広がってきているせいか、力が入らなくなってきた。足がふらつく。僕はそのまま倒れ込んだ。

「う……」

刀に手を伸ばす。くれはちゃんと約束したのに、守れないのか。僕は、死ぬのか。こんな所で。狼が僕に向かってきたのを最後に、僕は意識を失った。

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