第8話 家族

 しばらく景色を見た後、玖陽くん達と神社に戻った。玖陽くんが泊まりたいと言うので、僕は玖陽くんが泊まれるように準備をした。

「……ごめんな。俺のわがままきいてもらって。嫌だよな。面倒だよな」

「そんな事ないよ?むしろ人が増えるのは賑やかで良い事だよ。なんならそのままずっと泊まってっても良いんだよ?」

「冷青って、何か思ってたのと違う」

「僕?どうして?」

「そんなに話さない奴なのかって思ってたけど、結構喋るんだな」

そんな風に思われてたのか。いや確かにみんなからそんなこと言われたけど。無愛想だとか、冷たいとか。

「そんなに僕って冷たそうに見える?」

「名前からして冷たそう」

「あー」

なるほど。僕の今後の課題は無愛想だとか冷たそうとか言われないようにすることに決定だな。

「人を見た目で判断しちゃいけないって事だな」

「ふふっ。僕も頑張らなきゃね」

「へへっ」

玖陽くんを泊める準備が終わったので、晩ご飯を作る事にした。今日は僕が作ろう。何を作ろうか。台所で考えていると、玖陽くんが近寄ってきた。

「何してんの」

「玖陽くんは晩ご飯に食べたいものある?」

「食べたいの……うーん、ポテトサラダってやつ」

「おお……好きなの?」

「母さんが、作ってくれてたの……美味しかったから」

「そっか。お母さんの味になるかは分からないけど、頑張ってみる」

「お前、料理できるのか」

「え。うん」

玖陽くんは興味津々で僕の方を見ている。料理をした事が無いんだろうか。人に見られながら料理を作るのって、なんかちょっと恥ずかしい。そんな事を思いながら晩ご飯を作っていった。

「できたー。玖陽くん。秋飛さん呼んできてくれないかな」

「分かった」

3人で食事。久しぶりに大勢で食べる。家族みたいで良いな、と思う。みんなにも家族がいた。僕にも……

「あれ……?」

「どうした」

「……いえ、なんでも無いです」

僕にも家族がいた、はずだ。なのに、何も分からない。父さんの名前は?母さんの名前は?兄弟はいたのか?住んでいた場所も、ぼんやりとしか分からない。

「月沢?おーい」

「へ?」

「急に黙って、何かあったのか」

「いや、何も」

「そうか?なら良いけど」

まただ。味が分からない。ダメだな、僕は。ため息が出る。

食器を片付け、風呂に入った。風呂から上がり、寝室へ向かった。すでに秋飛さんと玖陽くんは寝ている。布団に潜り込んで、目を瞑る。眠れない。2人を起こさないようにそっと部屋を出た。縁側に座り、夜空を眺める。家に行こうにも、どこにあるか分からない。僕には家族を知る手掛かりなど1つも無かった。

「月沢……?」

「あ、起こしちゃった?ごめん」

いつの間にか玖陽くんが起きていた。玖陽くんは静かに僕の隣に座った。

「眠れないのか」

「……うん」

「なあ、何か悩みでもあるのか?」

「……」

「俺で良ければ聞くぞ」

「玖陽くんは、優しいんだね」

「元気無かったから、少しでも笑ってほしくて」

「ねえ、玖陽くんは家族いたの?」

「いたけど」

「僕は、分からないんだ。家族の名前、住んでいたところ。何も分からない」

「家族の事が、分からないのか?」

「うん。何も分からない。手掛かりも無いんだ」

玖陽くんは、真剣に僕の話を聞いてくれた。一緒に家族の手掛かりを探してくれると言ってきた。

「月沢って苗字の表札探してみるか」

「迷惑にならない?」

「大丈夫だ。いつまでも月沢が悲しい顔してるの見たくない」

玖陽くんには、感謝しないといけないな。ありがとう、玖陽くん。

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