第3話 黒猫とケーキ

つくってやろうとは言ったものの、僕には猫に家をつくってやれる程の技術が無い。

「ダンボール……?いや……風で飛んだりしたらダメだし……」

スマートフォンを取り出して〈猫の家の作り方〉と検索した。みんなよくつくれるよなと思う。僕はあまり手先が器用じゃないから、買った方が早い気がする。今の時代って便利だよな。

「秋飛さんに怒られるかもだけど……まあ良いか。よし。今からお前の家買いに行くぞ」

「にゃー」

猫を肩に乗せて、ペットショップへ向かった。基本的に僕達守神は人間には見えない。動物とかには見える。人間に用事がある場合は、色々と配慮して行くのが基本。

平日のペットショップはすいていた。そりゃあそうか。みんな学校とか仕事があるものな。

「いらっしゃい」

「あ、猫を飼いたいんですが……この子が住めるような家ってありますか?」

「うーん……ちょっと待っててね」

しばらく待っていると、店員さんが丁度良いサイズの家を見せてくれた。

「この大きさだと良いかな」

「良いですね。これにします」

「了解ですっ」

「あと、世話する道具とかあれば欲しいです」

「はーい」

「良かったなあ、住む場所できて」

「にゃあ」

会計を済ませて神社近くの森に向かった。ここなら秋飛さんに見つかる事も無いだろう。家に猫を入れた。満足そうだ。良かった。

「にゃ」

「そう言えば、お前の名前は?」

「にゃあ」

「ルナ?可愛い名前だね。捨てた飼い主が付けたのか?」

「にゃ」

「嫌だから変えて欲しい?うーん……」

「にゃ!」

「僕に名前を付けて欲しいって?良いの?」

「にゃあ」

「……そうか。……スフィアとか?」

「にゃ」

「嫌?じゃあ……ルーン?」

「にゃ」

「それもダメなのか?どうしようかな……ノエル?」

「にゃあ」

「よし、じゃあノエルちゃんだね。よろしく」

「にゃあー」

しばらくノエルちゃんと遊んで神社に戻った。秋飛さんは僕を見つけると、近づいてきた。

「お帰り。怪異退治して来たのか?お疲れ様」

「えっ。何で分かるんですか?」

「うーん。何となく、かな」

「そ……そう、ですか」

猫をこっそり連れて来た事がバレたかと思ったが、そうではなかったようだ。とりあえず良かった。

「……なあ。冷青。オレに何か隠してる事、ないか?」

「えっ……」

もうバレたのか。いや、違うはず。きっと何か別の事を聞いてるんだろう。

「えっと、あれですか?秋飛さんの分のケーキ僕が食べ……あっ」

「ん?オレのケーキ食べたって?違いますって言ってなかったかあ?」

「ち、違いますよ。僕じゃないです。信じてくださいよ。相棒でしょう?」

「相棒は関係ないだろ。嘘をつくのは良くないぞ?怒らないから正直に話してくれ」

「……僕が食べました……ごめんなさい」

「やっぱりお前か……。あれ高級なんだぞ……美味しいやつなのに……」

「……ケーキが食べたいならスイパラでも行けば良いじゃないですか」

スイパラと言う単語を言ったとき、秋飛さんが何それ、みたいな顔をした。知らないのか。スイパラ。僕もこの前までは知らなかったけど。

「スイパラ?水泳のパラリンピックでもやるのか?」

「……そう言うところですよ。おじさん」

「おじさん……!?オレ27歳なんだけど!?」

「はいはい」

「で、スイパラって結局何なの?」

「あー。スイーツパラダイスって言って、ケーキとか沢山ある場所です」

「まじで?ほんと?どこでやってんの?」

予想外の食いつきぶりに思わず苦笑してしまった。僕は行き先などを調べたメモを秋飛さんに渡した。

「おー。なあ、冷青も行く?」

「いや、僕は良いです。匂いでやられる」

「ふーん。ま、良いや」

結局、怪異が現れたせいでスイパラには行けずじまいだった。落ち込んでいる秋飛さんに、高級店のケーキを買ってあげた。まあ、行ったところで僕達が女子たちにかなうはずないだろう。

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