第2話 怪異

急に、空が紫になった。怪異が出たようだ。こんな朝っぱらから出てこられても困るが、あいつらはいつ出てくるか分からない。これはまずい。秋飛さんは寝ている。

「どうしよう……秋飛さん起こす訳にもいかないし……あ。そうだ。クッションしいとけばいいかな」

秋飛さんを起こさないように、床にクッションをしいてそっと横にした。

刀を持って怪異が現れる場所に急いだ。着くと、やはり怪異が現れていた。大きな化け猫だ。

「猫か。飼い主にでも捨てられたのか」

そう言うと化け猫は、僕の方を向いてギロリと睨んできた。どうやら図星だったようだ。猫を飼って捨てる人間は多い。飼うと決めたのなら最後まで責任を持って飼ってほしいものだが、それが出来ない人がいるから化け猫が増えるのだ。

『オマエ……ニンゲンか』

「いや、僕は人間じゃない」

『オマエからはニンゲンの匂いがする……』

「……僕は守神だ。人間じゃない」

『マモリガミ……我らのジャマをスル奴らか。何方でも我らの敵である事に変わりないな』

「被害を出される前に仕留める」

『我に勝てると思ってるのか』

僕は返事をする代わりに刀を構えた。すると化け猫は愉快そうに笑った。

『……オモシロイ。オマエ、オモシロイ奴だな。かかってくるが良い』

刀を化け猫に振り下ろした。化け猫はひょいっ、とかわした。流石猫。動きが早い。刀で来たのは失敗だったようだ。

「刀だと倒せないか……」

『振りが遅いぞ。そんなので我を倒そうと思ったのか』

「チッ」

『どうした。それで終わりか?では今度はこちらの番だ』

化け猫は前足を振り下ろしてきた。刀で受け止めるが、思ったより力が強い。

「く、っ」

『フフフ……マモリガミのぶんざいで我に歯向かうのが悪いのだ』

これはまずいなと思い、冷気を手から出して刀に纏わりつかせた。僕は冷気を操る事が出来る。どうして操れるようになったのかは分からない。まあ、僕は寒さに慣れているから使いやすい。

『……なんのつもりだ』

「寒いのは嫌いか?」

『何……?』

「僕は好きだ」

化け猫が隙を見せているうちに僕は刀を横に払った。化け猫は真っ二つになり、黒いもやになった。

「……これで終わりだ」

『……マテ……ヤメロ……』

「怪異達にかける情けは無い。さっさと成仏しろ」

黒いもやを拾い上げて握りつぶした。これで、この化け猫も成仏しただろう。

「……」

秋飛さんのところに戻ろう。刀を鞘に納めて踵を返すと、にゃぁ、と猫の鳴き声が聞こえた。下を見ると黒猫が僕の足に頬をすり寄せていた。

「どうしたんだ?お前。迷子か?」

「にゃー」

「迷子じゃ無いって?ああ、ごめんごめん」

「にゃー?」

「おまえこそどうしたのって……うーん……家に帰ろうかなって」

「にゃー!」

「ついて来る?ダメだよ。お前にはちゃんと居場所があるだろ?飼い主さん心配してるんじゃないか?」

「にゃー……」

「ダメだよ。ほら、帰りな」

やっと諦めてくれたのか、黒猫はどこかへかけていった。

「可愛いなぁ。……っと。戻らなきゃ」

道の途中、背後に気配を感じた。振り返ると先程の黒猫だった。

「……またお前か」

「にゃ……」

「飼い主からお前なんかいらないって言われた?……だからうろうろしてたのか。……何でそんな事言うんだろう……」

しゃがみこんで、黒猫の頭を撫でてやった。嬉しそうにのどをごろごろと鳴らしている。こんなに可愛いのにお前はいらない、なんて言う飼い主の気持ちが僕にはよく分からない。

「どうしよう……秋飛さんは猫嫌いだし……あ、そうだ」

どこかに住む場所をつくってやろう。

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