15-0 森の女

 橙色の花が一面に咲いていた。その上を裸足で歩く女が居た。ぺたり、ぺたり、足の裏をぴったりと地面にくっつけて泥だらけにしていく。

 女が着ている灰色の着物は召使いに与えられるような物だ。決して高くはない。


 女はしゃがんで花を取る。

 ぶちっ、ぶちっ、と"鬼百合"を何本か抜くと、愛おしそうに胸に抱えた。


『……あら、あらあら……また来たのねぇ、“次男かざみサマ”……』


 女は大きな黒い目をぎゅるっと動かすと、気配を確認した。


『影彦坊ちゃま……この"十詩じゅうし"が鬼百合村を……兎山家を……お守りいたしますわ……』

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