第176話 今だ! 合体! ダミアンロボだ!

「オクノ! 連携をしよう!」


 ラムハの呼びかけに頷く俺。


「わたしから行きます!」


 まずはカリナが走った。

 敵は伝説の邪神メイオーだってのに、ちょっと前までただの遊牧民の娘だった彼女が真っ向から斬りかかる。


 うーむ、成長したもんだ。


「ブラッディマリー!」


 斬撃がメイオーに浴びせられた。

 やつは笑っている。

 ダメージが無いわけではないのだろうが、恐ろしくタフなのだ。


「まさかお姉さん、こんなとんでもないことになるとは思って無かったなあ」


 アミラは無理やりに笑みを浮かべると、呪法を使う。


「メイルシュトローム!」


 しばらくステータスを見てない間に身に着けた、強力な水の呪法だ!

 空中に発生した渦潮がメイオーに叩きつけられる。


 ごく普通の感じの、ちょっとお色気が強い若い未亡人なアミラ。

 やっぱり、こんな凄まじい戦場に立つなんて考えてもいなかったことだろう。


「わおーん!」


 フタマタが俺の前まで走っていった。

 そして、ピカッと光ると二人に分かれる。

 フマとタタだ。


「ヘルファイアー!!」


「死の牙!」


 二人の攻撃がメイオーに突き刺さり、駆け抜けた二人はまたフタマタに戻る。

 自在に分離合体をコントロールできるようになってるぞ。

 いいぞいいぞ。


 そしてラムハが走る。

 手には呪法の輝き。


「ライトソード!!」


 光の剣がラムハに握られ、振り下ろされる。

 剣の使い方なんて分からなくても、呪法が導く。

 そう言うものだ。


 闇の中で鬱々としていた彼女が、今はきらきらと輝いている。


「オクノーッ!!」


 そんな彼女の声が俺を呼んだ。

 もちろん、準備は万端だ!


 手にした、数打ちの槍を振り回す。

 使い込むうちに、なんか神の武器になったやつだ。


「行くぜメイオー! 活殺獣神衝!」


 その瞬間、俺達の攻撃が一つにつながった。

 連携成立!


『ブラッディメイルヘル死のライト獣神衝』


 今回も変な連携名絶好調である。

 色とりどりの爆発が起こり、メイオーに炸裂する。


『わはははは!! やるじゃねえか!! こんなすげえ攻撃、食らったことがないぜ!』


 確かにダメージは与えている。

 だが、メイオーの顔から笑みが消えていない。

 余裕の笑みじゃなく、楽しくて楽しくて仕方ないってやつだ。


 ああ、戦い続ける限りやつは笑うんだろうな……!


『俺の番だぜ! おらあっ!! メイオー・スクリューッ!!』


 跳び上がったメイオーが、いきなり猛烈な勢いで回転を始めた。

 そして、足を先にしてこちらに突進してくる。

 つまりは、ドリルキックということだ!


「させるかよっ! うおおおっ、パリィ!」


『そんな技で弾けるかあっ!!』


「ぬおおっ!」


 俺のパリィがねじ伏せられた!?

 真っ向から防御技を突破されるの初めてだぞ!


 俺はぶっ飛ばされた。

 だが、どうにか仲間達へのダメージは肩代わりできたらしい。


 そこへ、フタマタにまたがったアミラが猛スピードで追いついてくる。


「癒やしの水っ!!」


 手の中に生まれた呪法の水を、ぶん投げるみたいにして俺に掛ける。

 俺は空中で姿勢を正し、無理矢理に着地した。


「サンキュー、アミラ!」


「心臓が止まるかとおもったんだから……!!」


「悪い。やっぱメイオー強いわ」


「わんわおん」


 フタマタが、そんなこと分かってますよ、みたいな事を言う。

 そうだな。

 だからみんなでぶっ倒さないといけないのだ。


 俺が抜けた穴は、残りのメンバーでは埋められない。

 だが、そこで踏ん張る奴がいた。


「まさかメイオー様と戦うことになるとはっ! イビルビームッ!!」


『ハッハッハァッ! 親としては子供が独り立ちするってのは嬉しいもんだぜっ!』


 シーマだ。

 彼女がオレンジ色のビームを放ちながら、メイオーを牽制している。

 これをまともに喰らいつつ、じりじりと間合いを詰めるメイオー。


『だが、パワー不足だなあ。お前はもともと陰謀向きで、戦いには向いてないからな!』


 メイオーの手がシーマへと伸びる!


 後ろから斬りかかるカリナの攻撃も、連携に乗らなければこの邪神には大したダメージが無いのだ。

 やべえ、間に合うか?


 だが、俺は心配なんかする必要がなかった。


「吹雪っ!」


 いきなりメイオーの横っ面を、氷雪の礫がぶっ叩いた。


『うおっ!?』


 体勢を崩すメイオー。


「させないよ! シーマ、こっちに来な!」


 ロマが叫ぶ。

 彼女が伸ばした手が、シーマの手を引いた。


 ギリギリのところで、メイオーの腕が空を掻く。 

 あぶねえあぶねえ。


 そして、俺の到着まで頑張ってくれるのはもう一人いた。

 いやあ、これを一人と言っていいものか。


『フッフッフッフッフ! ココデ会ッタガうん千年目デスヨめいおー! イクゾ兄弟達!』


『オーッ!』


 おお、こ、これは……!

 ドラム缶ロボの群れである。

 その上に、波乗りするようにしてダミアンがいる。


 怒涛のようなドラム缶ロボが、メイオーに向かって降りかかる。


『な、なんだこいつはーっ!?』


 さすがのメイオーも驚いたか。

 しかもダミアンはこれだけではなかった。


『合体デスゾーッ!!』


『オーッ!!』


 ドラム缶ロボが、空中に飛び上がる。

 それが猛烈な速度で組み上がっていき、やがて巨大な三脚のロボットになった。

 頭部に一箇所だけ空間があり、そこにダミアンが収まると……ロボの目がギランと輝いた。


『完成! ダークダイヤモンド大首領……モトイ、ぐれーとだみあんロボ!!』


『こんな奴まで仲間にしてるのか! オクノ、てめえ、なんて愉快な冒険をしてきやがったんだ! ああ、羨ましいやつだなあ!』


 メイオー、めちゃくちゃ楽しそうだ。


 ダミアンロボが、地面を薙ぎ払うビームをぶっ放すと、これを真っ向から受けてまた笑っている。


『ああ、いてえいてえ! 強えじゃねえか! 一人ひとりがきっちり強い! いい感じで仕上げてきたなあ!』


 ビームを受けながら立ってる辺り、とんでもない。

 やつの背後では、モンスターの群れがダミアンビームで一気に消し飛ばされていっているのだ。

 なんかあいつだけ無事だ。


『化ケ物メーッ! だみあんみさいる!! 全砲門展開ーッ!』


 ダミアンロボの全身から、ミサイルポッドが展開した。

 そこから、無数のミサイルが降り注ぐ。

 

 この中を、ダミアンロボめがけて突き進むメイオー。

 さらに、ダミアンロボは胴体を展開して超巨大な大砲を作り出し、メイオーめがけてぶっ放した。

 うん、これは六欲天クラスでもやばい攻撃だな。


 だが!

 メイオーはこれに向かって、突進した。


 今度は前を向いたまま、全身を回転させる!


『メイオー・ミキサーッ!!』


 真っ向から、砲弾を粉々に粉砕するメイオー。

 それどころか、その勢いのままにダミアンロボに激突。

 その巨体を上空へと跳ね上げる。


『ピガガー!? ナン……ダト……!?』


 メイオーはそこで攻撃を休めない。

 ダミアンの頭上へと飛ぶと、その頭を鷲掴みにしながら、背中から呪力を一気に放出した。


 ダミアンが超加速されて落下してくる。


『おらあっ! メイオー・スパーク!!』


『ピガーッ!! ヤッパリダメデシターッ!』


 ちゅどーん!

 というなんか面白い爆発音とともに、ダミアンロボが粉々になった。

 ダミアンがピューッとぶっ飛んでいく。


 よく頑張った!

 お陰で、俺がまたメイオーの目の前に戻ってこれたぞ。


『おう、戻ってきたか』


「ああ。今度は日和らねえ。ブロッキングで受け止めてやる」


『そうそう、それだよ。オレの技が弾けるわけねえからな!』


 言葉をかわしながら、バトルが再開される。

 メイオーの腕が俺の肩を一瞬でホールドし、上空に放り投げる。


 俺も既に剣を抜いていた。

 カールの剣だ。


『メイオー・リベンジャーッ!!』


「そうくると思ったぜ! 俺は……!」


 ピコーン!

『燕返し』


「燕返しっ!!」


 上空へ跳躍してきたメイオーを、俺の放つVの字斬りが迎撃する。


『うおおおーっ!?』


 初めて、メイオーの体から血がしぶいた。

 ダメージらしいダメージだ!


 こいつ、攻撃が効くぞ!

 いや、というか、俺が燕返しを閃いたことでステータスが上がり、攻撃がこいつにまともに通るようになったんだろう。


 つまり、閃けば閃くほど、戦えるようになる!


『やるじゃねえか! もっと、もっと強くなれ! そしてオレもお前との戦いで閃きたい!』


「同じタイプだもんな!」


 俺は弓に武器を切り替える。


「水晶のピラミッド!」


 呪力を用いて相手を攻撃する、弓の最強技だ。

 これをメイオーは喰らいつつ、


『ブロッキング!!』


 初めて防御技を使い、ダメージを相殺する。


『分かるぜ……! オクノ、お前はオレに追いつきつつある! オレは嬉しい……! 初めて、並び立てる奴ができるんだからな!』


 そいつはどうも!

 恐らくこの戦いだが、メイオーが閃き始めた辺りが決めどころだ。


 そこが、俺とメイオーが拮抗した瞬間だろうからな……!

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