第150話 俺、混沌時空で激闘す

 後ろの方で、カオストーナメント優勝者である再生怪人が戦っている。

 迎え撃っているのは、うちの面々だ。

 再生怪人とは言えど強力だが、なに、数の暴力で押しつぶせるだろう。


 問題はこっちで、俺とメイオーとイクサ、あと何故か女神ハームラが前にいるが、もう何人か欲しい。


「ミッタク! フロント……は日向と連携技仲良く使ってるな……。じゃあダミアンGでいいや」


『だみあんデイイトハ何事デスカーッムキィーッ』


 おっ、頭からぷすんぷすん湯気を立てながら、ダミアンGが走ってきた。


「まあまあ、怒るなって! うちら頼りにされてるんだから!」


 笑いながら、ぺちーんとダミアンを叩くミッタク。

 すっげえ音がしたぞ。


『ピガー! 壊レテシマイマス! ワタシハソット、生卵ヲ扱ウヨウニ触ッテクダサイ!』


 お前そんなやわじゃないだろうに。


 ちなみに七勇者となった、六体の勇者の塊。

 それぞれの勇者の技を繰り出してくるのだ。


 口から水流を吐いてきたり、力いっぱい腕を振り回したり、力いっぱい剣を振り回したり、力いっぱい体当りしてきたり……。


 おや?

 ほとんどの奴らは肉弾戦では?


 これを、メイオーとともに捌きつつ混沌の裁定者に問う。


「おい、戦い方のバリエーションが少なくないか?」


『うるさいっ』


 怒られた。

 言ってはならぬ事だったらしい。


 だが、さすがは勇者六体分。

 六人揃って七勇者だ。

 タフネスも六人ぶんなので、攻撃がなかなか通用しない。


 イクサの斬撃でダメージを与えるも、すぐに傷がふさがってしまうのだ。


「うっし、じゃあ、うちがイクサと二人であいつを食い止める。オクノとそっちの黒いオクノは対策とかあんだろ? 任せた!」


 おお、大雑把な。


『ではわたくしは、この筒みたいなものに呪力を与えて援護しますね。わたくし、直接戦闘は苦手で……。あの触手は呼び出したくないですし』


 ハームラがそんなことを言いながら、ダミアンGに手を触れた。

 すると、手が光を放ちだし、それがダミアンに注ぎ込まれていくではないか。


『フオオオー! チカラガ漲ッテキマス! コ、コレハワタシノ過去ノ栄光ヲ取リ戻スヨウナ……!』


 ダミアンがピカピカっと輝いたかと思ったら、その姿が変わった。

 何やら、禍々しい形状の大型のロボットみたいな姿だ。


『グハハハハハ! 復活! ダーク・ダイヤモンド首領、DDデアール!! コノチカラガアレバ、再ビ世界ヲ征服……』


 ダミアンGは哄笑をあげた。

 おおー、変わるもんだ!


『わたくしからの強化呪力は3分しか持たないので速攻でお願いしますねッ』


『エッッッッ!?!?!?!? 三分ッッッ!?』


 ダミアンGが仰天して飛び上がった。

 そしてすぐに俺達に向き直る。


『速攻デ七勇者ヲ倒シマショウ! ダブル・オクノサン!!』


「協力的なのはいいことだ。やるか」


「やろうか」


 そういうことになった。


「イクサ、ミッタク! ダミアンGと三人で連携を!」


「よかろう……! 月影の太刀!」


「続くよ! 撃魔斬!」


『フハハハハハハ!! DD・ドラグーンッ!!』


 なんか知らん技が出たぞ!

 ダミアンGの全身が変形し、ドラゴンの姿になる。


 イクサの斬撃、ミッタクが放つ光の刃、そしてその後に、ドラゴン化したダミアンGの突撃が炸裂する。


『月影撃魔ドラグーン』


 おっ、ちょっとかっこいい!!


『ウグワーッ!!』


 身を捩る七勇者。

 だが、攻撃の多くは奴らが次々繰り出す攻撃で、どうにか相殺しているようだ。

 これは、連中の手数に対処しないといけないな。


 七勇者の技を封じる?

 いや、奴らが技を繰り出すよりも早く……!


「よし、俺にいい考えがある。時の呪法……!」


『世界の抵抗はわたくしが抑えます! オクノ、その呪法を使うのです!』


「おう! クイックタイム!」


 その瞬間、俺の周囲の時間が遅滞した。

 時の流れがゆっくりになり、周囲の空気が粘りつくような感触になる。


 だが、俺はパワーには自信があるので、気にせずにのしのし歩いていく。

 横をトコトコメイオーが歩いてきた。


「あれ? お前もクイックタイムの効果に入るの?」


「オレは半分お前と同じだからな。当然だろう」


「なるほど。おっ、ならいけるんじゃないか? ツープラトン!」


「ほう……!」


 ということで!


 俺とメイオーが、動きを鈍らせる七勇者に突進する!


『ウボアー』


 何か言いながら攻撃しようとするのを、やすやすと掻い潜る。

 そして俺はそいつを抱えて、上空へ放り投げた。


 メイオーが俺の肩を踏み台にし、飛び上がる。


「まずはご挨拶だ! メイオー・リベンジャー!!」


 七勇者達の腕をまとめてホールドし、上空から地面へと叩きつけるメイオー。

 さらにこれを、「ブリッジ!」俺が再びかちあげる!


『ウボアー』


 飛び上がるメイオーが、七勇者をキャッチした。


「メイオー・ドライバー!! お前も来い、オクノ!」


「よし!」


 俺もまた、近くにいたミッタクの肩を踏み台にしてジャンプした。


「うーわー」


 なんかミッタクの声が聞こえるが、今はスルーだ。

 そして、七勇者へ組み付こうとする。


 ピコーン!

『マッスルバスター』


 新しいのが出た!

 俺は技の命ずるままに、七勇者の手足をホールドする。

 たくさん手足があるからこそ、メイオーと同時に使えるわけだな!


 俺が下からホールド、メイオーが上からホールドしたまま、混沌時空そのものに向かって七勇者を叩きつける……!!

 このツープラトンの名は……!


『オクメイ・ドッキング』


 そして、時は流れ出す。

 クイックタイムが解け、通常の時間の流れになった。


 七勇者の全身に致命的なダメージが行き渡り、異形の怪物が断末魔の悲鳴を上げる。


『ウッ、ウッ、ウグワーッ!!』


 そいつは五花と同じように、混沌色の絵の具みたいなものに分解され、消えてしまった。


『ば、馬鹿な……。僕が歴代で用意してきた中で、二番目に強力な手駒が』


 混沌の裁定者が焦っている。


「俺とメイオーが組んだんだ。二番じゃ駄目なんだよ」


「一番を連れてこい」


 メイオーが不敵に笑う。

 すると、俺達の後ろでハームラが元気よく挙手した。


 あっ、君が一番強力な手駒だったのね!

 俺は納得した。

 倒すの大変だったもんなあ。


「さすがにハームラ倒してもなあ」


 これにはメイオーも苦笑い。

 和気あいあいとしながら、ミッタクとイクサを加え、混沌の裁定者に詰め寄る俺達なのだ。


『お前達……! 僕を倒せるとでも思ってるのか? 僕はこの宇宙のエントロピーを司る存在であり、あるいは君達が語る創世神話に似た雰囲気を纏いつつ、やれやれ、なんてことだ。僕はため息をついた』


「オクノ、こいつまたバグって来たぞ」


「闘魂注入じゃん!」


『ヒャア、危ない!』


 混沌の裁定者が、巨体に見合わぬフットワークで逃げた。

 闘魂注入がトラウマになってるみたいだな。

 だが、こいつは闘魂注入しないと攻撃がそもそも通用しない。


 初手、俺の一撃を浴びせることが重要なのだ。


「そう言えばメイオー」


「なんだ?」


「あいつって普通の攻撃が通じないだろ? 反射してくるから。お前、どうやってあいつを封印したんだ?」


「あいつは打撃が効かないだけで、投げと関節は通用する」


「な、なんだってー!?」


 俺は仰天した。

 その発想はなかったわ。


「だからこそ、お前が使う闘魂注入とやらは革命なのだ。オレは常に奴に投げと関節を掛け続けることで体力を奪い、この時空に押し込んだ。だが、決定打にはならなかった。お前の闘魂注入が奴を正気に戻すのならば、そうなったカオスディーラーは倒せる存在となっているだろう……!」


 そんな中、背後で連携の名前が響き渡る。


『わんわん吹雪ミズ鬼ゼフィロス』


『ウグワーッ!!』


『闇の無双跳ウォーターレター』


『ウグワーッ!!』


 向こうも決着がついたようだな。

 オクタマ戦団のフルメンバーが集まってくる。


「それと、そこにいるジェーダイならば、混沌の裁定者の攻撃も反射できる。この要素を駆使して奴を追い詰めるのが良かろう。なるほど、人数がいると取れる戦法が変わって来ていいな……!」


 メイオーが実に嬉しそうだ。

 これを見て、ラムハが俺に囁いた。


「オクノ、もしかして邪神をパワーアップさせるようなことしてないでしょうね?」


 鋭い……!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る