第95話 俺、山巨人の訴えを聞く。でも倒す。

「もがーっ!!」


 山巨人が大いに怒りながら麓を登ってくる。


「ペドロー! 山巨人、山が崩れるから登ってこれないのでは?」


「最近の山巨人は登ってくるんだよ! だからみんな困ってるんだ!」


 なんだそりゃ。

 山巨人の言い伝えと違うじゃないか。


 25mくらいあるでかいのが、山道へと上半身を乗り出してくる。

 本当にでかいなあ。

 何食って生きてるんだこいつ。


「オクノ! 山巨人は巨人族でも、サイクロプスに次ぐと言われる強力なモンスターよ! ドラゴンに匹敵するとも言われているわ! 気をつけて!」


「えっ、この世界ドラゴンいるの!? っていうかそんな強力なモンスターなのに、山の女神の水浴びを覗いて山に登れなくされたっていう情けない逸話が語られてるのどうなの」


「うるせえー!!」


 俺が突っ込んだら、山巨人が怒った。

 

「うわあ喋った!!」


「ちょっと覗いただけでなんで何千年も呪われなきゃならんのだ!! おかげで、このでかさのまま彷徨うしかないし死んでも死んでもこのまま復活するし! 生き地獄だわ! だから普通の人間は殺す!! 妬ましいから殺すよ! もがー!!」


「完全に私怨じゃねえか!!」


 これほど人間くさいモンスターには久々に出会った。

 あと、言い伝えは本当だったよ。


「ふむ、飛翔斬では有効なダメージを与えられないようだな」


 俺と山巨人が会話している間にも、飛翔斬を連発していたらしいイクサ。

 巨人の肌が分厚くて、傷がつかないらしい。


「イクサの飛翔斬が効かないってことは、相当だな。少なくとも七勇者より強い」


「そうだな」


 俺達の中で、七勇者に対する評価はとても低いぞ!

 だが、こんな山道にポッと現れる強敵というのはいかがなものか。

 まあ理不尽な強敵というのはゲームによくいるしな。


「だが三神官や六欲天よりは弱いだろ。よし、行くぞイクサ!」


「ああ、仕掛ける……裂空斬!!」


「もがー!!」


 山巨人が巨大な岩を持ち上げて、こちらに投げつけようとしてくる。

 これをイクサが迎え撃った。

 裂空斬が岩を切り裂く。


 イクサの烈空斬で相殺か。

 なかなか強いな、ポッと出の山巨人!


 俺はこいつ相手に体術では分が悪いか? とかちょっと日和って、斧を取り出してみるのだ。

 技数も少ないし、強い相手なら何か閃くかもしれないしな。


「行くぞおらー!」


 斧を振り回して山巨人へと襲いかかる俺。


「生意気なちびめ! もがーっ!!」


 岩巨人が俺を踏み潰そうと足を繰り出してきた。


 ガ◯ダムよりもでかいこいつだ。

 まさに俺はぺちゃんこになるのでは? というサイズ差がある。


 ピコーン!

『バックスラッシュ』


 きたきたきた!

 俺は叩きつけられる山巨人の足を掻い潜り、背後へと回る。

 そして山肌を跳躍と疾走で駆け上がりながら、奴の背中へと回転とともに斬りかかった。


 背後からの斧による一撃、バックラッシュだ!


「もがーっ!?」


 振り返ろうとする山巨人。

 だが、それをイクサは許さない。


「ベアクラッシュ!」


 跳躍からの激しい斬撃が、山巨人の足に叩きつけられる。

 奴の動きが鈍くなった。


 山巨人、俺を叩き潰そうと腕を振り回す。

 技も何もない動きだが、でかいだけに脅威だ。


「あっぶね! ブロッキング!」


 俺はこいつを真っ向から受け止め、しかしそのまま岩壁に叩きつけられた。

 うーむ、ダメージは軽減したが、ノックバック効果だけでとんでもない威力だな。


 こいつはかなりの強敵だぞ。

 なんでこんな強いやつが、特にイベントとか関係なさそうな山道にいるんだ。


 そして強いということは、閃きチャンスということでもある。


「まだまだ行くぞっ!」


 俺は亀裂が入った岩壁に足を引っ掛けると、これを足場にして装備を変更する。

 今度は槍。


「そいっ!」


 槍を投げつける動作をすると……!


 ピコーン!

『ジャベリン』


 超高速で飛ぶ槍。

 だが、こいつでは山巨人には大したダメージがない。

 つまり、つなぎ技だ。


 また槍を投げつける……!


 ピコーン!

『双龍破』


 今度は槍がオーラみたいなものを纏い、巨人に襲いかかった。

 まるで絡み合う二頭の龍だな!

 山巨人は背中を突き刺されると、叫びながらのたうち回った。


「もががーっ!」


「オクノに行かせはせん。望月……!!」


 イクサの迎撃技が、山巨人の大暴れと真っ向から衝突する。


「サンキューイクサ! じゃあ、弓行っとくか!」


 山巨人めがけて射撃!


 ピコーン!

『影矢』


 同時に矢が放たれた。

 一撃目の影となり、振り回された巨人の腕が一本目を防いだ後、影にあった一矢が巨人へと突き刺さる。

 サイズ差を無視して、影矢の一撃は巨人を揺るがせた。


 あれ?

 巨人がふらふらしてる?

 影矢には相手を気絶状態にする効果があるようだ。


「イクサ、決めるぞ!」


「もういいのか? よし。マルチウェイ!」


 マルチウェイは、様々な剣技を自在に組み合わせた高速での連続攻撃だ。

 俺よりも、剣の技に長けたイクサ向きだな。


 イクサは山巨人の巨体を駆け上がりながら、片っ端からその全身を切り刻んでいく。


 俺も再び斧を構えて、岩壁を疾走。

 山巨人の後ろから襲いかかった。


「バックラッシュ……!」


 ピコーン!

『高速ナブラ』


 回転しながら山巨人に突撃し、背面を切り裂きながら駆け抜ける!

 俺とイクサが、前面と後面を攻撃しながら山巨人の肩の上に到着した。

 そして、交差する。


『マルチナブラ』


 技名が脳内に聞こえて、山巨人の首が飛んだ。


「ウグワーッ!!」


 巨人はひと声叫ぶと、そのまま全身がばらばらと崩れていった。

 岩の塊になってしまったぞ。


 俺とイクサで、崩れ落ちる岩を足場にしながら地面へと滑り降りる。


「世界は広いな。無名のモンスターでもここまで強力な者がいる」


「ああ。だけどお蔭で閃き祭りだったぞ。これでルリアとカリナもパワーアップできる。ステータス見る?」


『見マス』


 あっ、どこかに消えていたダミアンG!!

 お前、俺のアイテムボックスにいたのか!!


 こいつ収納できるのか……。


 ともかく、一気に俺は成長した。

 強い相手とやり合うのは大事だな。

 久々に超長い、俺のフルなステータスを開示だぞ。




名前:多摩川 奥野


技P  :1388/1388

術P  :403/403

HP:1454/1454

アイテムボックス →

※カールの剣

※祭具・ローリィポーリィ

※戦士の銃

※ダミアンG


✩体術         

・ジャイアントスイング・ドロップキック・フライングメイヤー

・バックスピンキック・ドラゴンスクリュー・シャイニングウィザード

・フライングクロスチョップ・サンダーファイヤーパワーボム・エアプレーンスピン

・ブロッキング・ラリアット・ブレーンバスター

・エルボードロップ・アクティブ土下座・スライディングキック

・ナイアガラドライバー・パリィ・ワイドカバー

・ドラゴンスープレックス・フランケンシュタイナー・ムーンサルトプレス

・サブミッション・クロスカウンター

✩剣

・ベアクラッシュ・ディフレクト・マルチウェイ

✩槍

・足払い・二段突き・風車

・スウィング・ジャベリン・双龍破

✩鞭

・スラッシュバイパー・二連打ち・グランドバイパー

・カウンターウィップ

✩弓

・影縫い・サイドワインダー・アローレイン

・連ね射ち・バードハンティング・影矢

✩斧

・大木断・ヨーヨー・バックスラッシュ

・高速ナブラ

✩杖

・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック

・スピードマジック

✩銃         

・反応射撃・集中射撃・曲射


★幻の呪法

◯幻炎術◯幻獣術◯雷幻術

◯幻影魅了術◯幻氷術◯水幻術

◯幻影戦士術

★陣形・陣形技      

・マリーナスタンス3

・マリーナスタンス5

・デュエル

・青龍陣/ドラゴンファング

・白虎陣/タイガークロウ

・朱雀陣/フェニックスドライブ

・玄武陣/タートルクラッシュ

・ランスフォーメーション

・シールドフォーメーション



 我ながら凄いことになってきたな。

 俺は体術と斧だけをメインで使うからよしとして、槍と弓の技は二人に継承しておかないとな。


 あと、いい加減アイテムボックスから出るんだダミアンG!


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