第14話 俺、ライバル的なのを仲間にする

 普通なら、たかが五人くらいの少人数で伯爵の邸宅に殴り込むなんてありえないよな。

 だが、なんか今はノリでそんな感じになっているのだ!


 伯爵の人狩り部隊が敗走してるこの機会に、一気に攻めてしまうのだ!

 さあ出てこい、伯爵の手下め、なんて気分の俺だったのだが。


「なんで屋敷の中に死体がたくさん転がっているわけ!?」


 ラムハが驚愕して叫んだ。

 ぶった切られて死んでいる奴が、屋敷の中じゅうに転がっているんだから当たり前だ。


「これ、刀傷ですね。しかも離れた距離にいる二人を同時に斬ってます。まるで斬撃を飛ばしたみたいな……」


「斬撃を飛ばすと言えば、イクサだな、あの野郎!」


 あいつは伯爵に雇われていたようだが、クラスメイトの連中に襲われたことでブチ切れたんだ。


「これはもう、あいつに任せておけばいいのでは……?」


「冗談でしょオクノくん!! あの人にやらせてたら、もし生贄の女の子が生きてても纏めて殺しちゃうでしょ!」


 ルリアに言われてみると、全くその通り。

 あのイクサという戦士は、なんかこう、話が分からない気がするんだよな。

 伯爵の仲間から、裏切られてからいきなり敵に回るとか極端過ぎる。


「よし、俺らも急ごう!」


「ええ、追いつきましょう!」


 ということで。

 大急ぎで屋敷の中を駆け抜ける。

 屋敷の中は死屍累々……なんてことはなく、イクサは邪魔する相手だけを倒し、一直線に突き進んでいるようだった。


 こりゃあいい。

 伯爵までの道案内になる。


 ぐねぐねと曲がりくねった廊下を進んで進んで、ついに到着。

 行き止まりの、特別大きな部屋だ。


「おのれ!!」


 部屋の中からでかい声が聞こえてきた。

 イクサの声だ。


「逃げたか、伯爵!! まさか、奴の居室から地下に繋がっていたとは!!」


 おお、分かりやすい。

 伯爵は地下に逃げたというわけだ。

 俺はここで、イクサの前に現れた。


「なんで追いかけてないんだ?」


「飛翔斬!!」


 斬撃が飛んでくる。

 問答無用な奴だ。

 俺はこれを、腕をクロスさせて受ける。


 ピコーン!

『ブロッキング』


 クロスさせた腕が、鋼のような強度を帯びたみたいだ。

 腕の表面で、飛ぶ斬撃が金属音を上げながら止まった。


「なにっ!?」


「フフフ、見切ったっぽいな……!」


「オクノくん、ちょっと自信なさげなのはどうかと思うわ」


 アミラに突っ込まれてしまった。

 とにかく、イクサのお蔭で防御の技を閃いたようだ。

 ただこいつ、素手限定っぽいな。


 女子たちには継承できない。

 俺が盾役を務めるのは変わらないわけか……。


「まあ落ち着けイクサ。なんでお前、ここで待ってるの? 追いかけないの?」


「お前は先程の反逆者か……! いや、俺を攻撃したということは、伯爵こそが反逆者だったに違いない。いいか、貴様! ええと……」


「オクノです」


「そう、それ。オクノ! いいか。俺は今、明かりを持っていない。明かりを持てば片手が塞がる。俺は片手が塞がった状態では、充分に戦うことができない……! だから躊躇していたのだ」


「案外普通の理由だなあ」


「なにっ!! 普通で悪いか!」


 怒りっぽいやつだ。

 あと、こいつも割とポンコツだぞ。

 さて、どうしたものか。


 イクサをここに放置していってもいいが……。

 ここで選択肢が出てくる。



1・ここで決着を付けるぞ、イクサ!

2・お前は置いていく。これからの戦いについてこれそうもないからな。

3・イクサ、マイ・フレンド……!



「イクサ、マイ・フレンド……!」


 俺は両手を広げた。


「なにっ!! 飛翔斬!!」


 馬鹿の一つ覚えの飛ぶ斬撃を放ってきやがった。

 俺はこいつを、「ブロッキング!」カキーンと跳ね返したぞ。


「それは間違いなく見切った」


「オクノくん二回目でようやく断言したわね」


「オクノっておバカっぽいけど割と慎重なのよ」


 うるさいぞ女子たち。


「イクサ、ここは手を組まないか? 俺たちの仕事は、生贄に捧げられる女の子を助け、こんな人狩りなど辞めさせることだ。悪いことじゃないだろう」


「人狩り人狩りと……。救世部隊は邪神の脅威に遭わぬよう、女子供を保護しているのだぞ!! 人聞きの悪い事を言うな!」


「それ、誰に聞いたの」


「伯爵にだ」


「俺、兵士たちが女の子を生贄にするって言ってたの聞いたんだけど」


「なにっ!!」


 イクサが目を見開いた。

 こいつ、知らなかったのか……。

 金髪碧眼のそこそこイケメンの強い剣士のくせに、これまでのポンコツムーブ。


 イクサって、もしやおバカなのでは?


「おバカなのでは?」


「なにっ!! 真空斬!!」


「ブロッキング!!」


 いかんいかん。口に出ていた。

 俺は防御技で女子たちをかばう。


「まあそれはともかくとしてだ。イクサ、伯爵はお前に嘘をついていた……! つまり悪いやつだということだ。俺たちはその悪い伯爵を止めに来た。つまりいいやつだということだ」


「なるほど……理論に一点の隙もない……」


「おバカなのでは?」


「おバカだよね?」


「おバカなのねえ」


「おバカですね」


 女子たちが、ぼそぼそと聞こえないように言っている。

 満場一致で、イクサがおバカであることは明らかになった。

 だが、こいつは凄腕だ。


 おバカなりに正義感もありそうだ。

 仲間にしたら……面白そうではないか。


「イクサ、伯爵を追い詰める手伝いをしてくれ! 俺のパーティに加われ!」


「お前のパーティに……だと……!? 俺は、俺より弱い者のパーティには加わらん!! だからずっとソロでやって来たのだ」


 イクサは厳しい目を俺に向ける。

 そして、


「よし、お前は俺と同じくらい強いのでパーティに加わろう」


 イクサがパーティに加わった!

 断るのかと思ってヒヤヒヤしたじゃないか。


 ここでイクサのステータスを確認してみる。

 ステータス画面を展開したら、パーティ表示がいっぱいいっぱいになっていた。 

 どうやら六人でフルメンバーということらしい。


 さてさて……。





名前:多摩川 奥野


技P  :320/320

術P  :165/165

HP:296


アイテムボックス →


・ジャイアントスイング・ドロップキック・フライングメイヤー

・バックスピンキック・ドラゴンスクリュー・シャイニングウィザード

・フライングクロスチョップ・サンダーファイヤーパワーボム・エアプレーンスピン

・ブロッキング


・足払い・二段突き・風車


・スラッシュバイパー・二連打ち・グランドバイパー


・影縫い・サイドワインダー・アローレイン

・連ね射ち


・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック


◯幻炎術◯幻獣術◯雷幻術



 呪法が増えてるな……。




名前:ラムハ

レベル:14/■■■

職業:記憶を失った女/黒■の■■


力   :14/■■■■■

身の守り:15/■■■■■

素早さ :33/■■■■■

賢さ  :61/■■■■■

運の良さ: 3/■■■


HP116/■■■■■■

MP150/■■■■■■


闇の呪法7レベル


・スペルエンハンス・パワーエンハンス・アンチマジック


◯闇の炎◯闇の障壁◯闇の衝撃

◯闇の支配



 ラムハも順調に成長中っと。




名前:ルリア

レベル:7

職業:村娘


力   :10

身の守り: 8

素早さ :12

賢さ  : 9

運の良さ:159


HP50

MP 7


槍3レベル

・バックスピンキック


・足払い・二段突き・風車



 運の良さ……。



名前:アミラ

レベル:8

職業:未亡人


力   :10

身の守り: 7

素早さ :17

賢さ  :29

運の良さ:15


HP61

MP55


鞭2レベル

水の呪法3レベル


・スラッシュバイパー・二連打ち・グランドバイパー


◯癒やしの水◯毒消しの水◯力の水



 アミラは安定。

 ちょっと呪法型になって来たか?

 イクサが加わった今、彼女は後衛にしてもいいかも知れない。



名前:カリナ

レベル:14

職業:遊牧民の娘


力   :20

身の守り:27

素早さ :57

賢さ  :20

運の良さ:15


HP123

MP28


弓6レベル

短剣3レベル


・影縫い・サイドワインダー・アローレイン

・連ね射ち



 強い。

 文句なく強い。

 後衛の物理攻撃はカリナにお任せだ……!


 そして、問題のイクサだが、レベル65とか抜かしてたよな。

 どうなんだ。



名前:イクサ

レベル:65

職業:魔剣士


力   :154

身の守り: 98

素早さ :255

賢さ  :  2

運の良さ:126


HP539

MP96


剣50レベル

体術45レベル


才能:剣技


・飛翔斬・真空斬・裂空斬

・円月斬・十六夜・望月




 つええ!!

 全部こいつでいいんじゃないかな……って、賢さ2!? 2!? えっ、え!? 2!?


 あ、それだけじゃない。

 こいつ、六つも技があるんじゃないか!


「イクサ。お前、そんなに技があるのに、なんで飛翔斬と真空斬しか使わないの……」


「技の名前を忘れてしまったのだ。いや、ステータスは見えるのだが、読めない……」


「賢さ2……!! よ、よし。俺が読みを教えたら使える?」


「そのはずだ。俺が認識できない技は習得していても使えないのだ……。確かに編み出したはずなのだが、凝った名前をつけすぎて使えなくなった」


 イクサ、お前、俺のパーティに入って本当に良かったな……!!



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