第24話 今より君と。

 空港の改札に大智の姿が見えた。

手を振り出迎える美緒。

照れ臭そうに振り返す大智。

駆け足で美緒の元へ向かう。

両手と背中に大きな荷物を抱えて走った。


「おかえり!」


「ただいま!」



「おーい大智!」


声の方には、手を振る晴人と沢野の姿があった。


「ハル!…沢野!」


驚いたが、すぐに笑顔になる大智。

2人に駆け寄る。


「久しぶりだなぁ!」


「こっちの台詞だよ。生きてたのか。」


笑顔で再会を喜ぶ2人。

美緒は沢野のもとへ駆け寄る。


「ありがとね、急だったのに」


沢野の耳元で小声で話す美緒。


「急なのはいつものことでしょ。こっちは式場選びで忙しいってのに。」


相変わらずバッサリと切る沢野。


それを見て笑いが溢れる。

沢野も少し笑みを浮かべる。


「なに話してんの?」


「内緒だよー!」


美緒は沢野の手を取り歩き始めた。



 空港を出て、晴人の車でとあるマンションまで走ってきた。


「美緒ちゃんの家ってここ?」


「そう!実家を出て今は一人暮らし!」


「早めに2人の家見つけなよ。」


沢野は大智に言った。


「わかってるよー!」


後部座席から降りる2人。


「ありがとな。」


「元気でね。」


「結婚式まで連絡すんなよ!」


2人を置いて走り出す車。


「よし、行こっか!」



手を繋ぎ、扉が開いた。




眩しい光が差し込んでくる。

光が美緒を優しく包む。


鐘の音が響き渡る。


光を抜けて、扉の向こうには美緒の両親や大智の親戚の姿もあった。


ウェディングドレスを着た美緒と、タキシード姿の大智。

二人は腕を組み、花束で飾られたレッドカーペットを歩く。

二人は神父の前で足を止め、向かい合う。


「やめるときも、健やかなる時も、互いを愛し続けることを誓いますか?」


「誓います。」


「…誓います。」


「それでは、誓いのキスを…。」


初めて交わした観覧車でのキス。

帰り道に背伸びしてしたキス。

花火大会で何度も交わしたキス。


そのどれよりも美しく、幸せなキスをした。



 恋愛なんて、一瞬の感情で、ただの遊びで、…そんな風に思ってた。


そんな時に、君と出会って恋をした。


あの時の私は…ただ、君といられる事の幸せに浸っていただけだった。


当たり前のように会話して、

当たり前のように側にいて…


そんな日々がずっと続くと勝手に思ってたんだよね。


この先の未来、何が起こるか分からない。

明日も、明後日も、その先も…

1分後だって、1秒後だって…

今より長くいられる保証なんてどこにもない。


だから、今の私はこう思います…




 放課後の教室。

誰もいなくなった教室に、大智と西宮の姿。


「好きです。…付き合ってください!」


深く頭を下げる西宮。

すこし戸惑う大智。


「頭を上げて。」



階段を駆け上がる美緒。



大智は真剣な眼差しで西宮を見つめる。


「ごめん。俺、好きな人がいるんだ。」



教室に駆け込む美緒。

机の上に鞄を置き、掃除用具入れからモップを取り出す。



「その子はいつも笑顔で…俺の悩みを一瞬で忘れさせてくれる。」



美緒は隣のクラスから聞こえる声のようなものに興味を示した。



「俺は…」



隣の教室へと歩いていく美緒。



由乃美緒よしの みおが好きなんだ。」





 …だから、今の私はこう思います。


ずっと一緒に生きていきたい。


明日も、明後日も、その先も…

1分後だって、1秒後だって…


今より、君と。








 

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イマより君と。 志人 @aicemilk

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