バトル・オブ・十六夜(1)
念の為に最後かもしれない種付けをした女房達は、濃姫の元に留まる選択肢に見向きもしなかった。
「別れた方が、危険です」
全裸で仰向けの体勢から腰を浮かすという着床し易い姿勢で待機しながら、夏美がリスクを指摘する。
「重婚でも夫婦は夫婦。宗教上の理由で、死ぬまで一緒ですよ」
バルバラが、股間から溢れた精液を指で膣に押し戻しながら、小牧山城避難案を拒否する。
「残ったら、猿に視姦されるぞ。そこから人妻N T R生ハメコンボが炸裂し、彼奴の粗チンが穴という穴にチョンチョンズッコン、あら大変」
更紗が、使用済みシマパンで股間を拭き取ってから、半蔵の頭に乗せる。
「別れ話をする体力が有るのでしたら、もう一周してくださいまし」
月乃が、恥じらう半蔵の上に乗る。
昨晩は結局、三周した。
五人が一度に同衾するのは、その晩が最初で最後だった。
そして次の晩。
つまり現在。
誰も寝ていない。
十六夜の月が、篝火を絶やさない寺の周囲を満遍なく照らす。
夜襲に備えて周囲の雑木は疎らに仕向けた立地だが、服部半蔵に仕掛けようという手練れには、何のハンデにもならない。
「来た」
半蔵は、短槍を二本、抜き身にする。
「攻めは半蔵様に任せて、みんなは防御に徹する」
月乃は、戦術を確認する。
「先手は忍犬の群れだよ。数えきれない」
更紗が、夜目を集中させて先手の戦力を読み切る。
「散弾で散らします。バルバラの前には、出ないで」
バルバラが、武器の中から猟銃二丁を選び、早業で散弾を詰める。
「撃ち漏らしは、引き受けた」
夏美が、十字槍を得物に選んで構える。
寺の人間は、常駐していた伊賀者に命じて既に避難させている。馬も一緒。事情は最寄りの情報網に流しているが、援軍として何が出来るかは、聞き手の裁量による。
(援軍は来ないつもりで戦う)
服部半蔵は、腹を括る。
(自惚れるようだけど、服部半蔵と承知で襲撃してくるような相手だ。強いに決まっている。そんなのを相手にする為に、援軍に来るか? 来ないな。普通、来ない。来て欲しいけど、来ない。うん、来ない)
それでも半蔵は、死ぬつもりがない。
(女房たちも、全員、助け…る)
女房を四人とも助ける自信だけは、少し足りない。
忍犬の群れは、正確には忍犬に率いられた野犬の集団だった。
街道からは、大型の野犬たちを率いた甲冑装備の忍犬・
熊すら単独で倒す馬翁が甲冑を着込んだ時、それは敵陣を必ず突き破る先駆けとなる。
馬翁があと一呼吸で飛びかかれる距離まで近付いた段階で、バルバラは二丁の鉄砲で広範囲に散弾を放つ。
効果範囲の大型野犬たちは苦痛でのたうち回るが、馬翁だけは多少の苦痛は無視して吶喊する。
馬翁の充血仕切った目は、バルバラの喉を噛み切る戦術に濁る。
バルバラの前に出た夏美の十字槍で、馬翁は右足を深く切り裂かれる。
それでも勢いを殺さずに、鉄砲使いを必ず仕留める役目を果たそうと、跳躍。
喉元に迫る馬翁の顎門に、バルバラは首にかけた十字架を向ける。
十字架に仕込まれた水鉄砲が、馬翁の顔と口腔に山葵汁を見舞う。
堪らずのたうつ馬翁の腹に、十字槍が埋め込まれる。
忍犬・馬翁、絶命。
出生地、
嫁犬・パトリシアとの間には二十八匹の子を儲け、百八匹の孫に恵まれた忍犬は、名前に馬という字が入っているのに馬肉が苦手だったとは誰にも知られずに、戦死した。
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