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ホテルのレストランで夕食を取ったあと、お風呂を先に使っていいと言われた遥香は、浴槽の中で膝を抱えていた。
雨はまだ降り止んでいないが、勢いはだいぶ穏やかになっているようだ。明日には電車も動き出すだろう。
(うう……、やっぱりホテルに泊まるってことは、そうなるのよね……?)
遥香を緊張させているのは、眠るときのことだ。
いくらツインでベッドが二つあるからといって、その一つにもぐりこんで「おやすみなさい」ですまないことくらい、鈍い遥香もわかっている。
ゴールデンウィークに入る前に弘貴とつきあいはじめたが、彼とはまだキスどまりの関係だ。何度か弘貴のマンションにお邪魔したが、キスをされて抱きしめられるだけで、それ以上の関係を望まれたことはない。
弘貴が関係を進めることを急がないので安心していた遥香だったが、さすがに今の状況で何事もなく終わるとは思っていなかった。
(どうしよう……)
決して嫌なのではない。けれど、過去のトラウマのせいで、遥香は異性と体を重ねることが怖かった。弘貴はきっと優しいはずだし、大好きだが、怖いものは怖い。
「でも、弘貴さんはあの人じゃないし……、きっと大丈夫、よね?」
遥香はのぼせる直前まで湯船につかったあと、ドキドキしながら浴室から出たのだった。
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