第37話 レベルアップ

「魔力を吸い取られながら魔法を打つのは中々大変ですわ」


 普通、魔法を放つには集中と魔力の安定は必要になる。

 それを乱されるのだから撃ちにくいはずだ。

 常人だったら厳しいだろう。

 今は二人ともレベルアップして魔力が増大しているので問題なく出来ている。

 しかし以前の二人なら厳しかったかもしれない。


 俺は魔力もMPもたっぷりあるので影響は少ない。

 それぞれの魔核を取り出して比べてみる。


「なんだか光り方が違いますわ」

「レンヤさんの魔核の輝きが一番強いみたいです」

「そうみたいだな」


 俺は手に取った魔核の中心をみる。

 たしかに俺の魔核は二人のと比べると光度がある。

 たぶん魔力全体の何割かを吸収するみたいな決まりがあるのだろう。

 だから魔核は俺から二人より多くの魔力を取ったと考えられる。


「そういえば魔力って使い切ると何かペナルティはあるのか?」


 定番だと魔力がなくなると、ひどい倦怠感とかやる気が出なくなるとか、バットステータスが付くイメージだ。

 そういうことがあるのか確認しておきたかった。


「いえ、特にはありませんわ。あえて言うなら魔法に対する耐性がなくなるぐらいですわ」

「魔法が防げないってことか?」

「そうですわね。ゼロにしてしまえばってことですけれど、実際には徐々に回復もいたしますのでゼロになることはありませんわ。ですので厳密にいうと魔法を防ぎにくいって感じですわね」

「なるほど」


 使い切っても動けなくなるとかはなさそうだ。

 魔法防御力以外は問題ないようなので今ある魔力を魔核に全部入れたいと思う。

 俺のMPは200万ぐらいあるので結構足しになるはずだ。


 魔核を手で持ち直接注入する感じで魔力を流し込む。


「お、おお」


 魔力が吸い込まれる感覚は妙だ。

 意識的に送り込むとスピードが速い。

 魔核は壊れる事もなくどんどん吸収していく。

 MPの三分の一ほど入れても壊れる様子はまったくない。

 むしろもっと入れてくれと言っているみたいだ。


 俺は残りの魔力を使い切るつもりで注ぎ込む。

 魔力が溜まる時に鳴る甲高い音が辺りに響く。

 それと共に光度が上がり魔核は輝きを増す。


「レ、レンヤさん。そ、それ大丈夫なのでしょうか?」

「た、たしかに。怖ろしい力を感じますわ」


 これだけ魔力を一点に集中させれば恐怖を感じるのも無理はない。

 下手をすればここら辺一帯が吹き飛ぶぐらいの圧だ。


「まあ多分大丈夫だろう」

 

 特に使用上の注意とか無かったしな。

 俺の残り全ての魔力を注ぎ込んだ時、魔核は高エネルギーの塊と化していた。

 これだけでこの島が吹き飛ばせそうな力を感じる。


 MPがゼロになったけど、たしかに倦怠感とかはないみたい。

 使い切っても問題なかった。

 直ぐに自然治癒でMPが増えはじめている。


 これだけ魔力があれば『ハコニワ』の依頼も達成できるだろう。


 するとその時、頭の中に声が響く―――


<レベルが上がりました。レベル2となりました>


(えっ!)


 レベル? 上がった? 俺が?

 しばらく何のことかわからず、状況が上手くのみこめない。


「レンヤさんどうかされたのですか?」

「レンヤさん?」


 急にぼーっとしだした俺を不審に思ったのか声を掛けてくる二人。


「あ、ああ。なんかレベルが上がったみたいなんだ」

「まあ、それは良かったですわ。いつでもレベルアップは嬉しいものですわ」


 いやまあそうなんだけど、俺のレベルは上がらないものだと思っていたからな。

 はじめてのレベルアップで戸惑ってしまった。


 原因はやっぱり魔力を使い切ったってことなのだろう。

 MPを消費するとレベルアップのための経験値が溜まるのか?

 いままでも魔法は使っていたから上がってもいいはずだと思うのだが。

 まあここまで使い切らないと経験値が溜まらないのかもしれない。


 ステータスはこんな感じになった。

 

 **************************

 名前:上条錬夜

 種族:人間

 LⅤ :2

 HP :4060K/4060K(+400)(+58Kx35)

 MP :1K/4060K(+400)(+58Kx35)

 攻撃力:4060K(+400)(+58Kx35)

 防御力:4060K(+400)(+58Kx35)

 魔力 :4060K(+400)(+58Kx35)

 俊敏 :4060K(+400)(+58Kx35)

 

 ―特殊スキル―

 『言語』『探知』『鑑定』『インベントリ』

 『発光』『音弾』『反射』『分析』『転写』

 『並列』『蓄積』『隠蔽』『偽装』『看破』

 『自動』『受動』『束縛』『譲渡』『付与』

 『毒矢』『暗器』『転移』『変化』『重弾』

 ―属性スキル―

 『風』(牙・弾・刃・纏・盾)

 『炎』(弾・刃・纏・槍・盾・牙)

 『水』(弾)

 『光』(弾・纏・槍・盾・矢)

 ―補助スキル―

 『回復』『解呪』『解毒』『治癒』

 『浄化』

 ―体術スキル―

 『突進』『剣術』『槍術』『刀術』

 『護身』『斬撃』『双術』

 ―特別スキル―

 『ハコニワ』人口58000人、魔獣種35体

 ―恩恵―  

『伝道者の加護』

 ************************** 

 

 念願のレベル2になった。

 単純に倍の強さになったみたいだ。

 デタラメだな。

 レベル3になったらまさか三倍になるのか?


 MPは徐々に回復中なので1Kしかない。 

 『変化』と『重弾』はスララとリトルのスキルを種化して習得したものだ。


 レベルは1しか上がらなかったけど正直嬉しい。

 物凄く強くなったので満足だ。

 これからも魔力を使い切ればレベルが上がるかもしれない。

 可能性に頬がゆるむ。


 俺は依頼された魔核を『ハコニワ』に戻しながらほくそ笑んだ。

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