第24話 準備

 それから数日間は新たに取得したスキルを試しながら進んだ。


 シーナは光の攻撃種類を使い分けて敵を殲滅。

 《共鳴の腕輪シーナ》もあるので砲台よろしく魔法を連発する。


 ネネは近接はもちろん『斬撃』を覚えたことにより遠距離攻撃も可能になった。

 刀に斬撃を乗せ敵を屠っていく。


 さらにレベルアップで魔力が上がっているので全てのスキルの威力が上がっている。

 一気に二人は強くなった。


 もちろん追手に追いつかれないように距離を保ち、出会わないようにしている。

 あちらも周囲の魔獣を狩っているだけで、こちらに向かってくるようすは見られない。


 隊列を組み効率よく魔獣を倒している。

 この島の魔獣でもあれだけの人数なら、なんとか倒せているようだ。


 一人一人のレベルは分からないけれど、ザギルはその中でもやはり強い。

 他の者とは動きが明らかに違う。

 ネネが警戒していることだけはあるか。


 しかし《発光トーチ》の監視では詳細までは分からない。

 鑑定、分析の機能を追加できるように『ハコニワ』に依頼しておこう。


「ザギルは二刀流なんだな」

「そうですね。両手に持っている短剣には毒の効果があるといわれています」


 なるほど。暗殺者らしい装備だ。

 確実に相手の息の根を止める為の武器ってことか。


「ん? 何か動きがあるな」


 ザギル達は戦闘をやめて一か所に集まりだした。

 なにかを確認しているみたいだ。

 

 しばらくすると全員で動き始めた。

 向かっているのは俺達のいる方向だ。


(探知されたのか?)


 俺達とザギル達の距離はまだ結構ある。

 俺は所々に仕掛けた《発光トーチ》のお陰でザギル達の動向は掴めている。

 だけどあちらから俺達の位置を把握するには距離がある。

 もしかしたら探知をする魔道具か何かをもっているのかもしれない。


 シーナとネネに《発光トーチ》の映像をみせる。


「こちらに気付いたのでしょうか?」

「どうかな。だが意志を以てこちらに向かってはいるようだ」


 何かしら確信があるのだろう。


「回避は不可能という訳ですわね?」

「いやそうでもない。逃げるだけなら簡単だ」


 ウイングボードを大きくして二人を乗せて移動すれば、追いつかれはしないだろう。


「島を逃げ回るのも嫌だしな。一度話を聞きに行こうと思うがどうだ?」


 少し考える素振りをシーナは見せたが答える。


「ええ。レンヤさんが決めたのであれば、わたくしはかまいませんわ」

「そうか。ネネはどうだ?」


 ネネは即座に答える。


「はい。シーナ様を煩わせるものは、この際排除いたしましょう」


 おいおいやる気だな。一応話し合いにいくのだけどな。


「でも、もしもの時はレンヤさんが助けてくださるのですわよね」


 悪戯っぽい笑みでシーナは聞いてくる。


「ああ、その時はな」

「まあ、嬉しいですわ」


 美少女にそんなことを言われたら断れないだろう。


「レ、レンヤさん私も守ってもらえますか?」


 ネネがもじもじしながら聞いてくる。

 ここで「お前は大丈夫だろ」なんて言うのは禁句だ。


 間髪入れず俺は答えた。


「ああ、もちろんだ」

「はい。ありがとうございます」


 顔を赤らめ嬉しそうにしているから正解だったのだろう。

 まあスララとリトルもいるし彼女達を守ってくれるはず。

 シーナとネネもここ数日でかなり強くなった。

 ザギル達に会っても問題なく対処できるだろう。


「よし。準備が出来たら向かおう」

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