第146話 カウアイ島ダンジョン

 まあ、中学生組が結構倒しちゃっているので、第一階層は割と魔物が居ない。

 所々にスライムが居るが、子供達が突っ突いて核を破壊して討伐する。

 第5層までのマッピングを終えて全員に配布しているので、道に迷う事は無い。


 ホーンラビットはかなり素早い動きで突っ込んで来るが、子供達はドッジボール感覚で避けつつ小刀で横から斬り付けて討伐する。

 危なくなったら、ダークバインドで固定するつもりなのだが、全く出番が無かった。

 敬護が的確に指示を出し、全員的確に動いて誰一人被弾する事なく、第2階層に突入した。

 この階層からは、ゴブリンが出て来るんだが、ゲームで見るゴブリンと同じらしく臆する子が全く居ない。

 そう言えば、何か最近ダンジョンをテーマにしたゲームが流行っているとは聞いていたが、面白いな。


「ただ、これはゲームではなく、リアルだから、怪我も死にもする。ゲーム感覚で油断すると、痛い目に遭うから気を引き締めろよ?」

 と声を掛けたが、先手必勝とばかりに、出て来るゴブリンに魔法や刀や槍で倒して行く子供達。

 ハハハ、逞しいな。前田達も同じ気持ちらしく、「何か俺らの出番無さそうだね。」と言っていた。


 モンスターハウスでは、5匹のゴブリンが居たが、これも手際よく討伐し宝箱から初級ポーションをゲットしていた。

 隠し部屋の1つで昼食休憩を取り、また進む。

 結局この日は第2階層を全て周り切って、ダンジョンを後にした。


 清兄ぃ率いる中学生組だが、初っ端から飛ばしたらしく、最短コースで第2階層を突破し、第3階層で延々とレベル上げを行ったらしい。

 ハハハ、清兄ぃ、スパルタですな。

 キャッキャしている小学生組と違い、中学生組は結構ゲッソリした状態で帰って来たが、しかしその甲斐あってレベルも2つ上がったらしい。


 後で母上に聞いたら、マジでビビる男の子に、ガンガン後ろから蹴りを入れて、前に押し出して居たと………。

「清兄ぃ、何やってくれてるの? それ、マジで今の時代はヤバいからね?」

 と俺が苦言を呈すると、どこ吹く風の清兄ぃは、


「そんな甘っちょろい事を言ってるから、日本人がダメになるんじゃよ。

 こんな世の中なんじゃから、過酷さに耐えられる精神力を持たねば、生き残れんぞ?」


「まあ、確かに俺もそう思うけどねぇ~。昔と違って、今の時代は余所の子を怒る雷親父とか少ないんだよ。

 下手に叱ったり、下手に迷子を保護すると、誘拐とか難癖付けて来る親が居るからね。怖いんだよ?」


「だから、そんなバカな親ごと潰せば良いんじゃ。」

 と宣っていたよ。 ハハハハ……



 肝心の子供らだが、やはりレベルが上がる事の意味の楽しさと、それで得られるステータスの上昇の有益性を理解しており、小中学生全員で色々とダンジョンでの話をして盛り上がっていた。

 今夜の夕食には特別にオーク・ジェネラルとヒュドラの肉を出してみた。



 久々に食べる大人達も興奮しているが、初めて食べるヒュドラのステーキに、大興奮する子供達。

 ウットリする子あり、プルプルと震えてる子あり、絶叫している子ありで面白かったが、瞬く間に食べ終わりお替わりを要求していた。

 焼くのが面倒だったので、後は焼き肉に変更して、各自で適当にやって貰った。

 だって、ステーキ焼いてばかりだと、俺の食う暇が無いからね。


 まだ沢山あるから良いのだが、この日だけで40kg以上のヒュドラの肉ブロックが瞬く間に消えてしまった。

 せっかくのオーク・ジェネラルが霞んでしまい、可哀想な程であった。


 オーク・ジェネラルの名誉の為にも言っておくが、オーク・ジェネラルの肉は、とても美味い。

 そこらに出回っているオークの肉と比べ物にならない程の美味さである。

 当然、一般に出回る事が殆ど無い。

 何故一般に出回らないか? それは簡単な理由で供給出来るのが、ほぼ俺の周りの仲間内だけだからなのだけどね。

 確かに他の冒険者達、所謂トップの攻略組はオーク・ジェネラルやオーク・キングを集団で討伐したりしているらしいが、食べられる状態で綺麗に討伐出来る訳でなく、苦戦に苦戦を重ね、ボロボロの状態で倒してしまうので、食べる部位が少ない状態となるのが原因。

 だから世間一般の人々はオーク・ジェネラルの美味さを知らない。


 ふふふ、今度一回世間に流してみるのも面白いな。




 それから2日間、カウアイ島ダンジョンに潜り、子供らは順調に第4階層までを熟し、大体全員がレベル5までレベルアップ出来たのだった。

 特に中学生組だが、レベルアップの恩恵にとても驚いていた。


「マジで、こんなにも違うとは思わなかったです。 これはちょっと将来の事も踏まえ考えようかなぁ!?」

 と言っていた。


「えー? じゃあみんなで冒険者やる?」

 と他の子達もキャッキャとはしゃいで居たが、


「冒険者やるのは構わないが、舐めて掛かると、確実に死ぬから兎に角やるならやるで、厳しい訓練を続ける必要があるぞ?」

 と俺が釘を刺すと、


「そうですね。これからも宜しくお願いします! 佐々木に兄貴!」

 と一人が言い出し、他の子達も「「「「宜しくお願いしまっす!」」」」と声を揃えていた。


 え? 俺がヤルの? えー? と清兄ぃの方を見ると清兄ぃはスッと目線から消えてしまった。

 あ、逃げた。


「まあ、良いけど、そんなには時間取れないからな?」


 結局、子供らは中学校で部活だか同好会だかの申請をして、訓練をする事にしたらしい。

 まあ、ピートがソコソコ指導は出来るから、大丈夫だろう。



 斯くして、長いカウアイ島でのバカンスを終え、久しぶりの日本へと帰ってきたのだが、真っ黒に日焼けした子供らを目にした出迎えの親達は、

「ハハハ、どっちを向いているのか判らんぐらい日焼けして。良い顔をして帰って来たな。」

 と笑っていたのだった。

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 いつもお読み頂き、ありがとうございます。

 ここの所、色々と忙しく、ちょっとアップが遅れております。

 少ない時間を新作の方、『オッサン、人生に絶望死したら異世界生活で救われた件(仮』が好評でして、そちらに注力している事もありますが……。

 こちらの方も、若干ペースは乱れますが、アップは続けて行きますので、宜しくお願い致します。

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