第145話 カウアイ島で過ごす夏休み

 当初は我が家の4名+ピートの5名で行く予定だったのだが、どうせなら友達も連れて行きたいと言う敬護とピートの願いもあり、サバイバル訓練に参加した子供達とピートの中学校の友達も参加する事になった。

 結果、敬護とピート以外に、子供らが17名参加となり、流石にこの人数を俺達だけで引率は厳しいと、なし崩し的に父上と母上も参加となった。

 すると、いつの間にか、清兄ぃや叔父上一家も参加となり、グダグダの内に城島君と双葉を除く何時ものメンバーへと膨れ上がった。

 ああ、勿論前田達もグリード一家も参加だ。


「何か、いつもよりも人が多いな。しかも平均年齢がかなり下がったな。ハハハ……」

 と渇いた笑いを漏らしつつ、当日佐々木家の庭に集合し、一気にカウアイ島へとゲートで移動した。


 初めて参加するピートの友人達は、ゲートと南の島に驚きつつも、初っ端からサバイバル訓練の子達と大騒ぎ。

 なかなか騒々しいバカンスになりそうである。


 今回は2回目と言う事で、1日ぐらいで時差をリセットし2日目から全開で遊び倒す。

 俺は生まれて初めてサーフィンなる物を体験したんだが、あれだね、特にスキーと違って身体が横向きってのが微妙だけど、バランス感覚はステータス補正もあるから、特に難しくも無くて普通に乗れてしまった。

 それより、ジェットスキーやジェットバイクを魔動モーター化したんだけど、こっちの方が面白かったね。

 さっちゃんも、ジェットバイクの後ろに乗って、キャッキャと喜んでいたし。

 背中に当たるしで、楽しかったよ。


 子供らも砂浜で遊んだり、泳いだり、探検したりと、2日目から元気いっぱいに遊んでいた。

 ピートが連れてきた中学の友達を見ていると、俺とさっちゃんや前田達が中学の頃を思い出して、何かちょっと面白かった。

 丁度人数も女の子3名、男2名で同じ構成だったし。

 さっちゃんなか、それを見て、ニマニマしてたもんなぁ~。


 そうそう、子供らも交えて、俺のシールドを使った海底散歩ってのをやってみたんだけど、これが大好評で。

 元ネタと言うか、金魚鉢みたいな重しの着いたホース付きのヘルメットを被って水中を歩くやつとか、水族館の水中トンネルからパクったんだけど、水の抵抗なく普通に歩けるのが楽しかったらしくて、海底を2時間も大人数で散歩する事になった。


 魔法もこう言う平和的なレジャーで使うとまた新鮮だよね。

 ピートの友人達も、その海底散歩の影響か、今まで以上に魔法に興味を示してたし。

 やっぱり、何か俺達の中学校時代の事を思い出してしまうな。ハハハ。


 後は、パラセーリングとかもやったけど、これは魔法で空を飛べる人には、「ふーーん、こんな感じだったんだね。」で終わり。

 子供らや飛べない人には、大好評だったけど。


 子供らの遊びの中にも、魔法講習会や剣術や槍などの講習会を入れているので、遊びばかりではない。

 ピートの友達もこの講習会でかなり進歩があり、ステータスの表示まで漕ぎ着けた。



 そして、いよいよ明日はカウアイ島のダンジョンへ潜って見る事にしたのだった。


 予め確認した限りだと第4階層までは日本の一般的なダンジョンと変わらないので、第4階層までに限定すれば、お手軽レベリングエリアとなる。


 しかし、このダンジョンの問題は第5階層からで、島に1箇所しかないダンジョンの所為か、嬉しい事に出て来る魔物がかなり一足跳びに強くなる。

 まあ、具体的には状態異常や石化のブレス等を持つ魔物が出て来る。

 第5階層でこれなら、最下層までどんな魔物が出て来るのか、実に楽しみでならない。


 小学生組と中学生組の2班に別けて、小学生組を俺と前田達とグリードがガードしながら引率し、中学校組はピートと清兄ぃ、叔父上、父上、聡君、母上が引率する事になった。



「じゃあ、これからダンジョンに少し潜って、多少レベル上げをして行こう。

 みんな判っているとは思うけど、不用意に変な物に触れたり、騒いだり、巫山戯たりは危ないからしないようにね。

 最悪命に関わる事だから。」

 と俺が言うと、

「「「「「「「はーーーい!」」」」」」」と良いお返事の小学生組。


 対する中学生組は、清兄ぃが、

「小僧っ子達! チンタラやっとったら、俺が後ろから刺すからの?

 気合い入れて行けよ!」


「「「「「お(え)? おーー!」」」」」

 と微妙な感じ。 ピートは苦笑してるし。


「せ、清兄ぃ! 刺すの禁止だからね? せめてケツを蹴り飛ばすぐらいにしてよ?」

 と一応釘をさしておいた。


 ちなみにだが、母上は女子の間で大人気である。

 それは見た目の若さや美しさが子供達の母親と言うよりも、ちょっとだけ歳の離れたお姉さんと言う雰囲気だからだ。


「ピート君のおばちゃん!」

 と女の子が声を掛けると、母上から無言の圧力が掛かり、女の子が言い直す。


「あ、えっと、ピート君のお母様?」


「あら、何かしら? えっと、沙羅ちゃんでしたっけ?」

 と母上が軽く微笑む。


 なるほど、おばちゃん呼びはNGらしい。


「あのー、どうしたらそんなに若々しい状態で居られるのでしょうか?

 どう見ても、ピート君のお姉さんって言っても全然違和感が無いのですけど。」

 と言う質問で、一気に花が咲いた様な笑顔で答える。


「そうね、食べる物とか洗顔とか色々あるけど、一番はやっぱり日々の訓練と、レベル上げよ!

 レベルが上がれば、人間の身体は、その力を一番発揮し易い年齢に近づけようとしてくれるのよ。

 だから、貴方達は運が良いわよぉ~。

 これから最高の年齢に身体が収束して行く感じを味わって、お友達がドンドン歳を重ねて行っても若々しいままで居られるのよ?

 魔法も使える様になれば、それこそ『美魔女』よ、『美魔女』! ホホホホホ」

 と嬉し気に笑って居た。


「そ、そうだったんですか! なるほど。

 実際私のお母さんよりも全然若々しいし……これからは奈津子姐さんと呼んで良いでしょうか?」


「ええ、構わないわよ? 奈津子『お姉さん』で。」

 と言う様な会話をしていた。


 ちなみに俺と同じ歳のさっちゃん、なっちゃん、愛子ちゃんだが、とても小学生の子供を持つ母親には見えず、18歳でも通る。

 大抵の場合、若く見られ過ぎて、身分証やギルドカードを見せる事になったりするのである。

 小学校に敬護は入学する際にも、余所の地区から来た母親達から、

「まぁ、あの子の母親? 一体何歳で産んだのかしら……乱れてるわねぇ。」

 とヒソヒソやられたりした経験があったりする。


 まあ、瞬時に他の知って居るお母さんが、

「あら、貴方達、同じ地区じゃないからご存知ないのね?

 佐々木さんは、若く見えるだけで、私の2つ下よ?」

 と自然と援護してくれるのである。


 まあ、うちの地域で佐々木家を知らないのはモグリと言われてもしょうがないからなぁ。

 余程の新参者で無い限り、弾劾の日以降の食料や電源の無い時代に、うちが放出した物資のお陰で殆ど食うに困らない状況だったしね。


 いやまあ、そう言う訳で、何が言いたいかと言うと、若く見られ過ぎるのも善し悪しではあるんだよね。



 そんな感じで、異常にヤル気を漲らせている一部女子達と先に中学生チームが潜っていった。


 そして10分ぐらい間を空け、俺達の小学生チームが第一階層へと入っていったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る