第79話 高まる期待値

 結局、結界の効果か、魔物の襲撃も無く、ユックリと眠れたので、今朝は全員顔色が良い。

 早速朝食を出して、食べ終わると、撤収作業に入り、朝の砂漠を飛び立ったのだった。



 次の目的地までは約1時間、眼下に流れる砂ばかりの風景を眺めている。

 一応、目的は原油ではあるが、もし生存者のコミュニティを発見したら、接触する予定になっている。

 原油を頂く代わりに、その元国民へ救援物資と言う対価を払おうと言う訳ではないが、多少は気が軽くなる。


「しかし、本当にこんな砂漠で、人は住んで行ける物なんでしょうかね?」

 と若い方のパイロットが聞いて来た。


「でも昔はラクダに乗って移動しながら住んでたんじゃないのかな? あ! そうか!! 闇雲に砂漠を探したって生存者が居る訳が無いのか。

 水だ! 水のある所なら、人が生存しているかも知れないね。 オアシス?」

 と俺が気付いて叫ぶと、


「あー、確かに。水は生命線ですもんね。」

 とパイロットも納得する。


 しかし、オアシスって何処にあるんだろうか?

 と心の中で考えていると、次の目的地のちょっと(200km程)先にあるとの事。

 ふむ、オアシスも地図に載ってるのか! と言うか、何か蜃気楼の様に、逃げるイメージあったから、てっきり移動する物と思ったけど、そうではないらしい。


「じゃあ、後でそのオアシスの方に寄っても、それ程寄り道にはならないですよね?」

 と聞くと、


「まあ、誤差の範疇ぐらいですよ。」と。


 そして、後部座席の方へもオアシスの事を話して了承を得て、第ニ目標ポイントへと急いだのだった。



 ◇◇◇◇



「まあ、そうそう都合良くは行かないですよ。ドンマイです。」

 と肩を叩かれる俺。

 着陸した第ニ目標ポイントは、壮大に破壊され、半分以上砂に埋まっていた。

 タンクも然りで、周りの砂の色がやや変色していた。

 破壊されてから、随分と長い月日が過ぎている様子である。


 結局、直ぐに離陸して、オアシスの方へと、進路を取ったのだった。


 そして、10分程進むと遙か前方にポツンと水面の輝きが見え始める。


「お、見えて来ましたね。」

 とパイロットが呟く。


「あ! 居た!! 生存者だよ。」


 更に、こっちに気付いた、オアシス側から、光の信号がキラキラと送られて来た。

 それに対し、機体を左右にバンクさせる事で応える。


 速度を徐々に落として、オアシスの外側に着陸したのだった。


 機体の周りに駆け寄ってくる笑顔の生存者達。

「こんにちは。日本からやって来ました。多少ですが、救援物資も持って来ています。

 やっとこの国の生存者にお逢いできましたよ。」

 と俺が現地の言葉で挨拶すると、


「おお!やっぱり日本か! 良く来てくれた。」

 と涙を流しながら歓迎してくれた。

 彼らの顔に刻まれた深い皺が、これまでの苦労を物語っていた。


 このオアシスには、魔物の被害が無かったものの、医薬品も足り無かったらしいが、砂漠だけに何よりも食料が不足していたらしい。

 一応、オアシスの周りで何とか作物を栽培はしているが、微妙な状況らしい。

 なので、一応救援物資セットを渡し、マジックバッグに食料もある程度多めには渡しておいた。


 元々、油田が発見される前のこの国の国民がどう言う暮らしをしていたのかは知らないが、この分だとなかなか復活は難しいだろうな……と心の中で考え、ため息を漏らした。




 何箇所か、オアシスの場所を教えて貰い、別れを惜しむオアシスの住民達に見送られつつ、第三目標ポイントへと出発した。


 50分の空の旅を終え、第三目標ポイントに到着した。

 空から見る限りでは、破損は見えず、タンクも無事に見える。

 全員が期待に胸を膨らませつつ、着陸した。


 第一目標ポイントでの結果を踏まえ、コントロールセンターの方は、最初から捜索する事を諦め、ポンプの直結を急ぐ事とした。

 タンク班が幾つかのタンクをチェックし、4つのタンクで残量80%と報告を受け、早速4班に分かれ、ポンプの直結作業を開始する。

 幸いな事に、最初の油田と同じ型番のポンプであったので、作業が捗り、1時間ちょっとで原油の排出を始める事が出来た。


「ふぅ、何とか餌にありついて、ホッと一息だね。」


「いやぁ、ここも駄目だったら、逆に他も駄目かもとちょっとドキドキしましたよ。」


「何か、魔物出ないから、護衛は暇だな。」


 等とノンビリと話ながら、アイスコーヒーを飲んで和む。

 残量が多くて、おそらく回収作業は、一昼夜掛かると言う事なので、明日の朝まではヤル事が無い。

 そうなると、必然的に話は食事に傾く訳で、パイロットを含め、以前に行動を共にした事のあるメンバーからの期待度が半端無く高まっている。

 まあ、そうなるわなぁ。 俺としても、確かに昼食は機内で手っ取り早く弁当を食べたので、夕食は豪勢にしたいところではある。


 と言う事で、悩んだ挙げ句、テント内のキッチンでヒュドラのステーキとデス・フラミンゴの香草焼きを作る事にした。

 ヒュドラの肉には、オリーブオイルを軽く塗って塩胡椒し、デス・フラミンゴの肉にはハーブ入りのオリーブオイルを塗し軽く塩胡椒した。

 あとは只管焼き続ける。

 デス・フラミンゴの香草焼きの方は、最後にチーズをふんだんに掛けて仕上げる。

 出来た物はアイテムボックスで取りあえず保存する。

 これを繰り返し、人数分の約3倍以上を作り終えた。


「これだけあれば、足りるよね?」


 更に、サラダや、オニオンスープ、ご飯も炊いて、白米でもパンでもお好みに対応出来る様にした。


「いや、これだけだと寂しいか?」

 と思い直し、オークのバラ肉を暑さ約4mmにスライスして、竹串に肉、玉葱、肉、玉葱の順で刺して行く。

 そして、悩んだ挙げ句、結局テント内にBBQコンロを出して、そのオークのバラ肉串を塩胡椒で焼き始めた。

 勿論、消臭と喚起は全開にして、更に自前で風魔法と聖魔法で強化してある。

 うん、最初からBBQコンロ使えばもっと作業が早かったな。


 俺が、別のテントに籠もり、夕食の準備をし始めると、全員がソワソワしてたらしい。

 外に漏れる美味しそうな肉の焼ける匂いに、全員のボルテージが上がって行き、お腹がグーグー鳴っていたと後で聞いた。

 結局、前田達が、乱入して来て、


「なあ、佐々木! もう辛抱堪らん。 早めに始めようぜ!」

 と懇願して来た。


 時刻は夕方5時……ちょっと早過ぎない? とは思ったが、全員が既にテーブルに着席して待ち構えていたので、手伝わせて、ドンドンと夕食セットを運ばせたのだった。


「「「「「「「「「「「「「「「頂きます!」」」」」」」」」」」」」」」

 と15名が声を揃え、一斉に食べ始めて、絶叫する。


「うっっめーーー!」

「おいしいーー!」


 初めてドラゴン種の肉を食べると、みんな凄いリアクションするんだよね。


「やっぱり、何度食べてもヒュドラのステーキ最高です!」

 とさっちゃんも蕩けた顔をしている。


 結局、作っておいて、なんだけど、作った分はほぼ全部を食い尽くされた。

 余ったのはオニオンスープぐらい。


 自衛隊のパイロット2名は、涙を流しながら、

「やっぱり、本当にこの任務に来れて良かった!!」

 と感激していたのだった。

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