第59話 浜松町ダンジョン その2

 第3階層も洞窟エリアであったが、これまでと違い、トンネルの直径が7m程となっていて、第2階層までの直径ザックリ3mに比べ格段に大きくなっている。

 順当に行くと、オーク辺りが出て来る番なのかと思う。

 上の階層では、洞窟迷路と言った感じに分岐があったが、こっちは、曲がりくねってはいるが、主道に房の様に小部屋が付いてる蟻の巣の様な感じ。

 通路上にもオークが出没するが、小部屋には、オークが5匹~10匹程、屯している。

 しかも、モンスターハウスの様に、部屋から出ないタイプではなく、冒険者を見かけると、部屋から飛び出して来る。


 オークは、肉としても、魔石としてもなかなか美味しいので、綺麗に全部頂く事とする。

 第3階層を進み始めて最初の曲がり角を曲がると、オーク2匹と遭遇し、瞬殺していると、斜め前方の小部屋から、オーク5匹が飛び出して来て、それも殲滅する。

 しかも、所々にトラップがあって、非常に嫌らしい。

 一応、俺からすると、明らかに怪しい床があったり、壁に小さい穴があったりするので、見落としはしないが、慣れない冒険者だと、恐らく引っかかるだろう。


 トラップを発見すると、念の為にさっちゃんにも通達するが、今の所さっちゃんも、気付いて自分から避けているので、大丈夫そうだ。

 うんうん、育ってるね、さっちゃん。


 カサンドラスでの経験上、こう言う手合いの階層の小部屋のオークだが、そのリポップの周期は早い。

 その為、先で引っかかって時間を掛けてしまうと、殲滅した筈の小部屋でリポップし、挟み撃ちに遭う事もあるので注意が必要だ。

 俺達は、殆ど足を止める事無く、サクサク進んでいるので、特に問題は無い。


 第3階層を進んで早1時間、少しずつだが、通路の作りに変化が出て来た。

 洞窟の壁の上部に直径30cm~50cmの小さい穴が開いていて、そこからブラッド・バッド(吸血する蝙蝠の魔物)や、ポイズン・スライム(毒を吹きかけるスライム)が飛び出して来る様になった。

 しかも、そう言う穴は、岩のゴツゴツとした凹凸で隠れているので、見落としやすかったりする。

 気配探知や、魔力探知を持たない冒険者だと事前察知出来ずに餌食になる可能性がある。


 そんな第3階層を進みやっと大きなホールに到着した。

 どうやら、セーフエリアと第4階層への階段がある様だ。


 第4階層に降りると、俺の大好きなジャングル・ステージだった。

 ダンジョンのジャングル・ステージは、フルーツや、薬草、鉱物等、旨味が多い。

 特に、ダンジョン産のフルーツは、カサンドラスでも、高級品として人気が高かった。


「おお!やったね!!」

 と思わず顔がニヤける。


「よし、フルーツ探そう!」


「わーい、マンゴーあるかな?」


 一般的に、ジャングル・ステージは、出て来る魔物の種類が多く、動物系、昆虫系、植物系等、バラエティ豊富なのだ。

 昆虫系は俺も嫌いだが、シルクスパイダーは、素材的に美味しい。

 シルクスパイダーの糸は、丈夫で魔力の通りも良く、色々な物に利用出来る。

 その為需要も多いので、良い金額で取引される。

 付与も可能となる為、シルクスパイダーの糸だけで織られた服やズボンは、もの凄い金額となるのだ。


 フルーツを探しながら、ハンター・ウルフの群れや、ワインド・フラワー(蔦で絡めて花びらの口に放り込む巨大な植物)、トレント、オークやオークの進化種、キラー・ビー、ホーン・ラビット、ワイルド・ボア、ギガント・ボア、マーダー・ベア、シルク・スパイダー、トラップ・スパイダー等々を殲滅して行く。

 そして、ブラッドリー・オレンジ、トワイライト・マンゴー、マジカル・バナナ等の絶品フルーツを採取する。

 ちなみに、ダンジョンのフルーツがある場所には、大抵の場合、昆虫系の魔物が巣くっている。

 花の蜜を集める蜂系であったり、それらを捕食する蜘蛛系や、芋虫系が主である。

 なので、フルーツ採取=昆虫系の討伐がセットとなる。



 薬草類や、茸も豊富で、ウハウハであった。


 ダンジョンの薬草類や茸類は、含む魔素が豊富なので、効能や味が外の物に比べ、段違いに素晴らしのである。

 よって、上級ポーションやそれ以上のグレードを作る場合は、ダンジョン産の物でしか作れなかったりする。

 まあ、外の薬草等を使い、濃縮する手もあるが、余りにも手が掛かりすぎて、割に合わないので、使う奴は居ない。


 第4階層を探索し始めて、3時間が過ぎた。


「どうしようか、そろそろ良い時間だな。

 どうせだから、今夜はダンジョンのセーフエリアで一泊しとく?」

 と俺がさっちゃんに提案すると、


「良いねぇ、ダンジョンデートのお泊まり編だね? うふふ。」

 とモジモジしていた。


 ふむ、となると、前の第3階層のセーフエリアまで一旦戻るか、このままここの階層のセーフエリアを探すかだな。

 まあ、結界貼れば、この第4階層の魔物でも別に問題は無いか。


 そこで、テントを立てる為の、開けた場所を探して廻る事にした。

 ダンジョンの中が段々と薄暗くなる頃、少し開けた平らな場所を見つけて結界の魔道具を発動し、テントとフライを設営した。

 フライの下にマジックランタンを灯して釣るし、テーブルと椅子、そして簡易キッチンとBBQコンロを出す。

 2人で手分けして、肉串や焼き鳥の串を作ったり、ご飯を炊いたり、味噌汁を作った。

 完成した頃には、空(天井)は星が出ていて(ダンジョンの中なのにね)ムードは満点。


 2人で頂きますをして、ご飯を食べる。

 記念撮影をしたりして、2人の時を楽しむ。


「ああ、私、本当に旦那様の奥さんになったんだなぁ~。うふふ。夢が叶って幸せです。」

 とデレデレのさっちゃん。


「ふふふ、そうだね。奥さん。

 可愛い奥さんを貰って、俺も幸せだよ。」

 と言うと、キャッっと顔を手で隠して、モジモジ最高潮になっていた。


 人が見てない事を良い事に、そんな調子の2人だったが、地上では軽く騒ぎになっていた。



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「本日、入った冒険者2名がまだ出て来ておりません。」

 と上官に報告する、自衛官の2人。


「何? 何時頃入ったのだ?」


「はっ!今朝の9時頃だったと記憶します。」


「つまり、かれこれ12時間か。うむ……それはちと長いな。

 冒険者のランクは?」


「あ、確認しておりませんが、若い男女だったので、18歳前後かと。」


「ふむ。まあ基本冒険者は自己責任ではあるが、気になるな。ちょっと入場ログを調べて、ランクを確認してみろ。」


「はっ!了解であります。」





「あ! え? ええーーー!!」


「どうした? 何か問題か?」


「あ、申し訳ありません。えっとですね、本日ダンジョンに入った2名ですが、男性SSランク1名、女性Aランク1名です。」


「え!! そ、そうか。では、問題無し! ご苦労だった。」


「はっ!失礼します。」



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 自衛隊の皆様、ご苦労様です。(キリリ



 そんな人騒がせバカップルは、現在第4階層のテントの中、2人でお風呂に入っていた。

「だ、旦那様、明日も探索あるから、今夜はその……程々コースでお願いします。」

 と頬を上気させて色っぽいさっちゃんが、お願いして来た。


「おう!任せとけ!」

 と魔王と共にスタンバイOKの俺が、湯船からさっちゃんをお姫様抱っこで抱き上げ、身体を拭いて、寝室へと雪崩混むのであった。

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