第57話 大安吉日

「俺が、みんなに、ダンジョンの夢を見せてやるぜ!」

 と格好つけて思ってた訳ですが、スッカリ忘れてました。


 ごめん、さっちゃん……結婚式が先でした。

 さっちゃんの要望で、18歳の内に花嫁になりたいと、言う事になったんだった。


 何か色々忙しくしてたし、毎日一緒に生活しているから、スッカリ……いや、ちゃんと覚えて居たからね?


 式だが、俺がお願いして、神前式にして貰った。

 場所は、勿論靖国神社である。

 あそこなら、戦友達に俺の花嫁を見せる事が出来るから。



 ◇◇◇◇



 そして、10月24日俺達は、厳かな雰囲気の中、身内と友人に囲まれて、神前結婚式が始まった。

 結った髪の上に角隠しを着けた白無垢姿のさっちゃん、とても綺麗だった。

 さっちゃんは、かなり緊張していて、ガチガチだったが、俺も何時になく、妙に喉が渇き、手に汗を掻いていた。


 そして、そんな緊張の中、式が進み、祭壇での報告の際、また戦友達が、やって来てくれた。


『『『『佐々木! おめでとう!!』』』』


『山崎、佐藤、前田、川上、来てくれたのか!

 是非ともお前達に俺の嫁を紹介したくて、ここで式を挙げさせて貰ったんだ。』


『おう!また来たぞー! ありがとうな! お前の活躍、ちゃんと見てたぞ!』

『綺麗な嫁さんだな!おい、沢山子を作れよ!!』

『おめでとう! やったな、ついに嫁さん持ちかよ!!』

『これからも、見守ってるからな!』

 と肩を叩いて消えて行く戦友達。


 更に、今日は隊のみんなも駆けつけてくれたらしい……。

 全員からお祝いとお礼を言われて、みんなが消えていった。

 暖かい言葉を胸に刻み式を終えたのだった。


 式の後、さっちゃんも、何か暖かい物を胸に感じたと言っていた。




 式が終わり、午後から自宅の庭に移動して、披露宴代わりの立食ガーデンパーティーを行った。

 ここでは、折角なので、ウェディングドレスに切り替え、俺も似合わない白のタキシードを着ている。

 いつものメンバーの前田、凛太郎、なっちゃん、愛子ちゃんも、スーツ着てたり、振り袖着てたりで、なかなかシュールだった。

 中学校2年のクラスメイトもお祝いに来てくれてて、盛大に冷やかされた。


 さっちゃんの父上が号泣し、さっちゃんの母上は終始笑顔だった。

 しかし、何故か、一応若返った姿の清兄ぃまで号泣してて、何で泣いてるの?って周りが驚いていたけど、本当に良い式と披露宴だった。


 そうそう、ピートと双葉が元クラスメイトの中で、大人気で、可愛い可愛いとキャーキャー言われてた。

 ピートは、その勢いにビビってしまい、俺の所まで逃げて来て、足にガシッと絡みついて来た。

 タキシードの白いズボンに、ピートの鼻水が付いてしまったのは、ご愛敬である。

 直ぐに、肩車してやると、ニカッと満面の笑みを見せて、多くの女性陣をキュン死にさせていた。




 で、結婚と言えば、新婚旅行と新居の事なのだが、さっちゃんの希望には、結構驚いてしまった。

 まず、新婚旅行だが、このご時世、一般の旅行はかなり厳しいと言う事もあるが、あの無人島のブートキャンプの事が忘れられないので、あそこに行きたいと言う。

「えー? どっかもうちょっと違うホテルの宿泊とかで無くて良いの?」

 と聞いてみると、


「え?だって、あのテントあったら、何処でもホテル以上じゃない? しかも邪魔が入らないから、ズッと一緒に居られるわよ?」

 と言う事で、早速あの島を押さえたよ。


 結婚式の翌日、漁港へゲートで飛んで、島のオーナーのおじさんと再会すると、


「お!にーちゃん達は、あん時の6人組の奴じゃねーか!」

 とおじさんが覚えていてくれた。


「ええ、良く覚えてくれてましたね。 みんな今でも仲良くやってますよ。

 まあ、今回は新婚旅行なんですがね。」

 と言うと驚いていた。


 あの後すぐに、弾劾の日が来てしまったから、全然予約が入らなくて、もう止めようかと思ってたらしい。

「まあ、こんなご時世だから、売ろうにも売れないしなぁ……」と。


「え?あの島売るの? 幾らで?」

 と言うと、


「まあ、あんな大きさだし、水道電気も通ってないから、良いとこ300万円ぐらい?」

 とおじさん。


「あ、マジで? 買うよ!買う!!」

 と言う事で、即決で買いました。

 おじさんも大喜びで、俺もさっちゃんも大喜び。正にWinWin。



 2人で島にゲートで渡り、泉の傍にテントを張って、もう昼間っからイチャイチャと前哨戦が始まる訳です。

 籍も入れ、心置きなく気兼ねなく出来る様になった訳。


 ここ数ヶ月で、さっちゃんの熟練度が上がり、スタミナも凄くなっていて、前哨戦と言えど、真剣勝負。


 軽く前哨戦が終わると、少し2人で、手を繋いで島を散歩して廻り、夕食の準備に入る。


 テーブルに白いテーブルクロスを掛けて、ブーケを飾り、キャンドルの明かりの中、2人で乾杯して、ムードのあるディナーを食べる。

 そして、2人でお風呂に入って洗いっこして…………。


 あとは秘密だよ。まあ、当社比1.5倍で頑張ったとだけは言っておこう。



 ◇◇◇◇



 新婚旅行の間で、1つ判った事があるんだけど、なんでさっちゃんと寝ると、俺が魔王化するのか、理由が分かった。

 どうやら、さっちゃん固有の匂い?フェロモン?って言うのかな、あれに弱いみたい。


 もうスイッチが入ってしまうと、魔王の暴走は止まらない感じ? まあ、いつもはそれでも、多少遠慮してセーブしているんだけど、今回は新婚旅行って事でリミッターカットしたから、凄かった(らしい)。


「いつもは、遠慮して配慮してるって言ってた意味が判ったわ……」

 とさっちゃんが言っていたし。



 3泊4日の新婚旅行から戻り、さっちゃんの実家に挨拶に寄ってから、新居に帰る。

 さて、さっちゃんの希望で驚いた事のもう一つは、新居の事。


 俺としては、何処かにアパートかマンションか、もしくは一軒家をって考えてたんだけど、

「えー?この部屋で良くない?」

 と言われ、もっと2人きりの生活を希望すると思っていたので、拍子抜け。

 そりゃあ、小学校の頃に比べれば、格段に広い俺の部屋だけど、同居はどうなのよ? と。

 まあ、色々話を聞いてみると、どうやらピートの事も気になっているらしいのだ。


 なるほどね。


 と言う事で、間を取って、同じ敷地内に、1棟建てて、そこに当面は住む事にした。

 さっちゃんも喜んでくれたし、完全に離れ離れにならないと知って、ピートも喜んでいたので良かった。



 こうして、俺の第二の人生の黄金期が始まるのだった。

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