第54話 それぞれの決断

 ゲートで我が家の玄関に出て、インターフォンを鳴らすと、母上と双葉が出迎えてくれた。

 双葉がニコッと笑いながら迎えてくれたが、あれ? って顔に変わり、

「可愛い!!!」と絶叫していた。


 うん、我が家の天使はピート君を気に入ったらしい。


「なあ、アツシ、あの綺麗な女性は、お前の姉か?」

 とおっちゃんが俺に聞いて来る。


「あらまあ、お上手だこと。私は、あつしの母です。もう結構な歳になったんですよ。」

 と25歳と言っても確実に隙無く通用する若々しい母上が英語で告げる。


「あ、もしかして、母上、英語OKなんですか?」

 と聞くと、「ほほほ、嗜む程度だけどね。」と微笑んでいた。


「それはそうと、貴方達、やっとくっついたのね?」

 と俺に腕を絡めている、さっちゃんを見て更に微笑む母上。


「ええ、お母様、やっとこの度。」

 と嬉し恥ずかし気に、さっちゃんが報告する。


「あらあら、まあまあ。それはおめでとう。長かったわねぇ~。良かったわねぇ~。」

 と母上がシミジミ言うと、さっちゃんが感極まって、母上に泣きながら抱きついていた。



「あーー、感動のシーンに水を差す様で、申し訳ないんだが、ゲストハウスに、こちらのグリードとエバとピートと赤ちゃんを案内してやってくれる?」

 と言うと、日本語で判らない筈のピートが俺の頭にヒシッとしがみつき始める。


「どうした、ピート。別にお前と別れる話じゃないぞ? 仕事終わって帰って来るまでの間、ちょっとゲストハウスでユックリしててくれれば良いんだが。」

 と言うと、


「やだ! おいら、にーちゃんと一緒に居る。」

 と駄々を捏ね出した。


「ピート、あつしが帰って来るまで、俺達と一緒にげすとハウスで待ってようぜ?」

 とグリードとエバが話掛けるけど、ピートが頑なに離れない。


「ハハハ、えらく気に入ってくれた様だな。

 じゃあ、ピートは一緒に来るか?」

 と言うと、やっと手の力を緩めてくれた。


「あ、ピート、紹介しとくな。 これが俺の妹で、フタバと言うんだ。お前より3歳年上だが、可愛いだろ?」

 と言うと、


「ハロー、フタバ。」

 とピートが挨拶した。


「ま、私の事ね? は、ハロー! ピート。可愛いわぁ~」

 と満面の笑みの双葉。


「ピート君、私がアツシとフタバのママですよ。良かったら、うちの子にならない?

 今なら、漏れなく、お兄ちゃん2人と、可愛いお姉ちゃん、優しいママと、頼もしいパパも付いて来るわよ!」

 と母上が語りかけると、ウンと首を縦に振った。


 マジか!


 母上は至って本気らしい。

「と母上が言っているが、おっちゃん達はOKか?」

 と意見を求めると、

「ピートが望むなら、俺達は、ピートの幸せと願いを優先で良いぞ?

 その変わり、時々は顔を見せてくれるよな?」

 と言って来た。


「問題無い。じゃあ、決まりだな。良かったな。ピート。いや、弟よ! これから宜しくな!」

 と言うと、ニカッと微笑んだ。


 ここで、双葉が、「ピート君、あつしお兄ちゃんと、行っちゃうの? 双葉一緒に遊びたいなぁ~」と寂しそうに呟く。

 わぁ、双葉、アザト可愛い!


「なあ、ピート、フタバお姉ちゃんが、ピートが俺と一緒に行っちゃうと寂しいんだって。一緒に遊びたいらしいんだけど。」

 と俺が双葉の言った事を伝えると、ピートが同様している。


「あら、お母さんも寂しいわよ。せっかく我が家の子になってくれるのに、直ぐ居なくなっちゃうなんて……」

 と母上も寂しそうな顔をすると、


「判ったよ。僕、2人と一緒に遊んで待ってるよ。その代わり、ちゃんと戻って来てね?」

 と嬉し気な顔で、頭をギュッと抱きしめて来た。


「ああ、約束だ。 こう見えて、お兄ちゃんは強いから、ドラゴンレベルが来ても、負けないぞ! 直ぐに戻って来るから楽しみに待ってろよ。」

 と言う事で、母上にピートをバトンタッチした。


 ふぅ、ピートがチョロくて助かったぜ。

 やっぱ、下手な殺戮シーンとかは、余り見せたくなかったからな。

 良かった良かった。



 母上は、ピートを抱きしめ、頭を撫でていた。


「これで、少し安心した。首相の方には、後でまた経過報告入れて置くから、心配しないで。」

 と伝え、さっちゃんと2人でゲートで移動した。


 場所は、昨夜泊まったヘリポートである。

「あれ?ここは?」

 とゲートから出た場所が、みんなの待つ場所出なかった事で、一瞬驚くさっちゃん。


「ああ、いや、バタバタしてたから、ちょっとだけ2人で話そうかと、寄り道してみた。」

 と俺が少し照れながら言うと、さっちゃんも照れていた。


「なあ、さっちゃん、昨夜は流れのままに、あんな感じになったけど、本当に俺で良いのか?」


「バカーー! 私、ズッと待ってたんだからね? 私放置されてて寂しかったの。

 だから昨日は本当に嬉しかったわ。ちょっと予想よりも100倍ぐらい凄かったけど、素敵だったし……」

 と真っ赤な顔で下を向き、俺の服の裾を掴んでモジモジしている。


「そうか。じゃあ、俺と一緒に人生を歩もう。」

 と俺が言うと、


「それって、もしかして?」

 と顔を上げ、口に手をやり目を見開いている。


「ああ、正式なプロポーズと受け取ってくれて間違いないぞ。」

 と俺が答えると、泣きながら「宜しくお願いします。」と抱きついて来た。


 俺はギュッと抱きしめて、暫く余韻に浸っていたのだった。



 アイテムボックスに入れてあった、カサンドラスのダンジョンのドロップ品の指輪を出して、薬指に嵌めてやると、さっちゃんがボンッと音がしたかの様に、弾けた。

「好き!好き!好きーーー!」

 と泣き叫ばれ、暫し大変な状態に。


 15分程して、やっと落ち着いたさっちゃんと共に、みんなの待つテントの前に戻って来た。


「あら、結構早かったやんか。」

 と愛子ちゃん。

 しかし、愛子ちゃんとなっちゃんの目は素早く薬指に光る指輪にロックオンした。


「あーーー!指輪!!! あーーーー!ズルイなぁーー、指輪だーーー」

 と叫ぶなっちゃん。


「ホンマや。ズルイで。ええなぁ~~ さっちゃんだけ……」

 と愛子ちゃんも追従し、流れ弾う受けた前田と凛太郎が、ヤバい!って顔をして女性陣2人にテントの部屋へと連れ去れて行った。


 ナムーー。


「今日はハプニングで、ちょっと1日潰しちゃいましたが、明日からまた気合い入れて行きましょう。」

 と締めて、テントへと戻った。

 ああ、兄上にも一応、諸々の報告はしておいた。


「そうか、ピートはうちの子になるのか。じゃあ弟だな。ふふふ。

 それより、お前、動きが早いなぁ。にーちゃんビックラポンだわ。

 昨日の朝まで奥手だと思ってたのにな。いやぁ~先を越されちゃった。」

 と笑いながら自分の部屋へと去って行ったのだった。



 一応、形ばかりではあるが、正式なプロポーズも終え、落ち着いたら、さっちゃんのご両親に挨拶に行かなきゃだな。

 ふぅ~、ちょっと緊張するな……。

 まあ、当たって砕けろだな。


 と頭の中で考えつつ、風呂を済ませ、部屋に戻り、ベッドでタブレットに落としたラノベを読んでいると、さっちゃんが部屋に戻って来た。


 風呂上がりで上気した肌が、実に色っぽい。


 2回目の人生、精神年齢はもう46歳なのだが、年々身体の実年齢に精神状態が強く引っ張られ、段々差を感じなくなって来て居る。

 幼稚園の頃は、娘を見る様な気持ちで接していた、さっちゃんなのだが、18歳になった今は、1人の美しく育った女性、恋愛の対象をしていつの間にか見ている事に、正直に驚く。


 さっちゃんは、薬指に嵌まった指輪を嬉し気に撫でている。


「何か、冷たい物でも飲もうか。」

 と俺が言うと、ササッと動いて部屋の冷蔵庫から、冷たい麦茶を出して来た。

 コップに入れて俺の方に持って来ると、


「はい、どうぞ、……あ、あなた……」

 と真っ赤な顔で渡して来た。


 初やつめ……

 と思わず、コップを受け取りつつ、引き寄せて抱きしめた。


「アッ……」

 と小さく声を上げ、そして……


 甘い吐息を身近に感じつつ…………。

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