第43話 目標達成

 さあ、実質ブートキャンプの最終日である。

 明日は、朝から撤営し、迎えの船に乗るので、自由に訓練出来るのは今日一杯だけ。


 俺が朝目覚めると、ほぼ同時に全員が起床した。


「え? みんな何か凄くない?」

 と驚いて聞いたら、


「し、失礼な! 私だって最終日ぐらいちゃんとヤルわよ!」

 と朝からお怒りモードのさっちゃんだった。


 なので、せっかくだから、全員で手分けして、朝食を作る。


「はぁ~……何か、寂しいわぁ……」

 となっちゃんが呟く。


「そうやね、せっかくこんなに楽しい日々やのに。今日でおしまいやなんて。」

 と愛子ちゃんも同意してる。


「まあ、事態がどう変わるかは不明だけど、ここでジッと隠れてる訳にもいかないからな。」

 と俺が言うと、ドンヨリとしていた。


 食後は、浜辺で、武芸の稽古と、あと、身体加速を教えた。


 身体強化と身体加速の併用は結構難しかったらしいが、何とか1時間で全員がクリアした。


 そして、夕方近くまで魔法で作った落とし穴や、身体強化と身体加速を使った鬼ごっこ等で遊び、夕食は浜辺でキャンプファイヤーを囲みつつ、BBQとなった。




 そして、夜になり、野営地まで戻って、月ダンジョンへと移動したのだった。


「さあ、出来るだけ今日中に全員レベル10を目指そう!」


「「「「「おーー!」」」」」

 と威勢良く拳を上げる5人。


 早速、第3階層の入り口からスタートし、ゴブリン共を殲滅して行く。

 カサンドラスの冒険者ギルドのランクで言うと、大体Eランクの上位相当だろう。


 50分ぐらいで、第4階層に突入した頃には全員がレベル8になっていた。


 第4階層は、ゴブリンの上位種やオーク等も混じりだし、最終的にはオークだらけになる。


「オーク、堅いぞ!」

 と凛太郎の檄が飛ぶ。


 魔法や刀を駆使して、オークをも撃破していく、頼もしい5人。

 無闇に突っ込まず、無駄に怯えず、着実に堅い相手でも削って倒して行く。


 第4階層を終える頃には、全員がレベル9になった。


 続く第5階層は、初っ端からオークの団体さんとなる。

 途中で休憩を入れつつ、前田が司令塔となり、上手く全員をコントロールしていた。


 第5階層の中間辺りで、全員が待望のレベル10となり、更に動きが良くなる。

 それまでは、刀で斬り付けても、途中でパワー負けしていたのが、サクッと切断出来る様になっていた。


 途中では、光魔法による目眩まし等のアイディアも入れ、殲滅スピードが上がって行く。

 そして、第5階層のボス部屋の前で、休憩を入れ、この階層のボスである、オークキングの待つボス部屋へ入って行った。


 後ろで閉まる扉に、若干女性陣がビクッとしていたが、下手に怯える事も無く、全員が打ち合わせ通りにポジションを取り、さっちゃんの光魔法の目眩ましを合図に、前田と凛太郎が両側から斬り掛かる。

 一太刀で切断には及ばないものの、確実に間接や手足等の切りやすい場所にダメージを与えていく。


 更に風魔法のウィンドカッター等を繰り出して、見る見るオークキングの動きが悪くなって行く。


 そして、戦闘開始から約15分で、耐えきれずオークキングが膝を着いた。

 空かさず、凛太郎の横薙ぎの一太刀が、胴体と首を切り離したのだった。


 ボスが光の粒子となって消える頃、全員の頭の中に


 <ピロン♪ レベル11になりました。>


 と言うアナウンスが流れたのであった。





 翌朝、ササッと朝食を済ませ、テント等を片付け、海岸辺りで漁船の到着を待つ。

 女性陣は、何か少し涙目になっていた。


「えーーん、帰りたくないよーー!」

 とさっちゃんが愚図っていた。


 砂浜でノンビリしていると、漁船が見えて来た。

 俺達は、桟橋の方へと移動し、漁船へと乗り込んだ。


「おう、どうやったね? 無人島は?」

 と笑顔の漁師のおじさん。


「ええ、素晴らしい島でした。また是非来たいですね。」

 と答えると、


「おう、待っとるぜ。」

 とニカッと笑顔で、返して来た。



 漁港へ辿り着き、駅から電車を乗り継いで、地元の駅へと帰還。

 丁度昼時だったので、ファーストフードに入り、昼食を食べてから解散したのだった。




 4日ぶりの我が家の玄関を開けると、

「アッ君おかえりーー!」

 と満面の笑みの天使が出迎えてくれたのだった。


 暫くの間、双葉と遊び、島の写真等を見せると、「行きたいと」ダダを捏ねられ、ちょっとだけゲートで島の砂浜へ飛び、内緒で1時間程遊んで帰って来た。


 鋭い母上が、

「あれ?双葉ちゃん、どうしたのかなぁ? なんか海の香りがするわねぇ?」

 と笑っていた。



 部屋で兄上に、俺の居ない間の話を聞くと、


「政府は食料や医薬品の大量の備蓄を掛けてるね。

 魔石を研究所に出して、銃弾に合成する様な試作を始めたらしいよ。

 後は、自衛隊に持たせるサバイバルナイフにも魔石の合成が出来ないか、試し始めてるっぽいね。

 まあ、どれも極秘だけど。

 お陰で、関連会社の株を少し買っておいたので、かなり儲けさせて貰ったよ。ふふふ。」

 とニヤリと笑っていた。


「ふっふっふ、お主も悪よのぉ~。」


「何を仰いますやら。お代官様こそ。」


「「ハッハッハッハッハ」」

 とまたバカ笑いする兄弟2人であった。



「あ、でさ、バイク免許取って、バイクも買っちゃったよ。」

 と兄上がキーを嬉しそうに見せてきた。


「あー、良いなぁ。俺も免許早く欲しいなぁ。」

 と言うと、


「いや、俺こそお前の飛行魔法とか、ゲートとか羨ましいし。

 時空間魔法、なかなか熟練度上がらなくて、大変だよ。」

 と嘆いていた。

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