第36話 お返し

 さて、魔物が闊歩する世界に変わるまで、大体ザックリ残り3ヵ月となっている。

 大神様の話では、大体±3日前後のズレだそうで。


 兎に角、折角の流れなので、この流れを絶やさぬ様に次なる起爆剤を『チーム佐野助』のサイトに投下する。

 主に戦後の東京裁判の内容の異常さを、証拠の資料を添えて各国語でアップした。

 願わくば、これで東京裁判の再審とかになれば、負の連鎖の根本を断ち切る事が出来るのだがな。




 監視エリアが増えたので、最近開発した、魔道具で★国の動向をチェックしているのだが、資料をアップした後、★国の主席が激怒してた。

 尤も、こいつ自身は、ちゃんと難癖である事を理解していて、やっている事も発覚している。

 ちなみに、チーム佐野助のサーバだが、★国方面からの、執拗な攻撃に晒されている。

 とてもじゃないが、魔法が無いと防ぎきれなかったとだけは言っておこう。

 幾ら独学で勉強をしたからと言って、普通の手段では、このハッキングを防ぐ事はまず無理だっただろう。

 正に魔法様様である。


 しかし、攻撃を受けている事はチーム佐野助のサイト上で随時情報を公開しているので、逆にドンドン★国の立場が悪くなって行ってて、笑える。

 国内外の色々な所で、「あー、★国がハッキング仕掛けているって事は、やっぱり痛い所を突かれてるんだねぇ。」と言うのが世間の評価である。

 国連は国連で、★国からのマネー漬けで、直接的な指示が来たパターンは、俺が暴露しているから、事務総長以下、窮地に陥っているし。


 米国側の資料は、大体が国民に開示している資料が基なので、特に静観の構えらしい。

 尤も、相当業を煮やしていたらしく、△国を見捨てる動きは異常なまでに早かったけど、日本へは、憲法改正による地域の安保に貢献する事を歓迎すると公式に発表していたから、相変わらず友好国のままである。



 ◇◇◇◇



 ここ数日は上記の様な事を日々熟しつつ、さっちゃんや友人らに、放課後のテスト勉強会で教えているのだが、一昨日ぐらいから★国の状況が微妙に焦臭いので、テスト当日に何かありそうで嫌な感じである。

 まあ、特にテスト勉強をする必要は無いが、流石にテスト期間中は勘弁して欲しい所である。


 だが、現実は甘くなかったらしい。

 期末試験前日に★国が動いた。

 放課後自宅に戻ると、兄上が、


「やっと動き出したみたいだよ。」

 と告げて来て、一緒にPCに吸い上げたデータや動画を見せて来た。


「えー!? マジでこの時期かぁ……。俺、明日から期末試験なんだけどなぁ。」

 とボヤくと、


「うーん、タイミング悪いよね。でも恨むなら、★国の主席を恨むしかないね。」

 と。


「ああ、そうだな。この恨み、100倍返しで……フフフ。」

 と悪い笑みを浮かべると、兄上も悪い笑みを返してきた。



 ★国は、現状動かせる手段を総動員して陸と海からの両面で日本に揺さぶりを掛けるつもりらしい。

 尖閣諸島海域へ向かい、まずは中国の兵士達が混じった漁船団が300隻程出港し、時を同じくして、★国の海上警察の巡視艇(元海軍の艦艇)が3隻出港した。

 更に、イージス艦や原子力潜水艦も出航したり、別の海域からこちらの船団に合流するらしい。

 また、別途兵士が乗り込んだクルーズ船は先行して出航していたらしい。


 一応、生き残っている日本国内に潜伏中の戦力にも指令が飛んでおり、沖縄に集結するらしい。




 まあ幸いなのは距離があるので、現地到着は3日後の夜中~朝に掛けてらしいが、日本の海域に入るのは、明後日の朝方らしい。

 しかし、よく漁船でここまでの長距を航行する気になるねぇ。と言うか燃料って普通に保つの? と不思議に思っていたら、あーら、ビックリ。

 手回しの良い事に、タンカー船までご用意されてる様子。

 過去にも、漁船群で日本の漁場を荒らし回ったりと、日本の漁師を泣かせて来た奴らである。

 しかも、今回は海軍まで引っ張り出していて、尚更質が悪い。


 あいつらの作戦は、尖閣諸島を実効支配する事が目的で、一気に上陸して、基地を建設するつもりらしい。


 そして、クルーズ船でやって来る偽装兵共の役割は、沖縄で動乱を起こしての陽動らしい。

 これはちょっと意味が判らないのだがな。



 まあ、良いさ、どれもこれも丸っと全部、ぶっ潰してやるさ。


「ふふふ、あつし……心の声ダダ漏れてるし。」

 と兄上が腹を抱えていた。


「あれ? 声に出てたか? ふふふ。」






 翌日、試験を終えて早めに帰宅すると、黒装束に身を包み、漁船団が航行中であろう地点を目指す。

 九州までゲートでショートカットし、そこからは飛行魔法で北西を目指した。


 どうやら、自衛隊の哨戒機も出動して来ているらしい。

 しかし、レーダーに映る訳でもないし、隠匿を掛けているから、最悪バッティングしても問題無いだろう。



 海上を2時間程移動すると、南下中の漁船団と、その少し後ろを航行中の巡視艇、更にイージス艦を発見した。

 問題は、目視出来ない潜行中の原子力潜水艦であるが、魔動波によるアクティブ・ソナーで発見した。

 余談だが、原子炉って反応が大きいから、発見が非常に楽で良い。

 対する通常動力の潜水艦……特に日本の海上自衛隊の最新鋭艦は、非常に発見し辛い。



 さて、このバカ共をどう始末するか?だが、日暮れと同時にサクサクと迷子になって頂く予定である。

 当初は鬱陶しいので、海の藻屑コースも考えたのだが、海が汚れるので、自粛する事にした。


 方法としては、闇に乗じて、ゲートでとある場所へと移動して貰う予定である。

 クックック……驚くだろうなぁ~。




 そして、日が沈み、ドンドンと暗闇の中へと溶け込む海上。

 俺は、巨大なゲートを次々と発動し、300隻以上の漁船団を全て、遙か彼方へと消し去った。


 20分ぐらいで、全ての漁船を始末した後、今度は巡視艇を、次にイージス艦を飛ばした。

 仕上げは潜行中の原潜4隻。


 まずは一隻目の原子炉を魔法で強制停止し、全動力を止めた。

 更にエアーポケットの海中版で、急速落下させ、乗組員全員が重軽傷を負う。

 最後の仕上げに、ゲートで飛ばし、残り3隻も同様に処理してやった。


 ざまぁ! これで4隻の原潜はスクラップだ。


 俺が漁船~原潜4隻までを飛ばした先は、★国のとある人民弾圧事件で有名な広場である。

 内陸奥深くの広場に放り出された船は、もう二度と海に戻る事は無いだろう。


 きっと、今頃大騒ぎしているんじゃないだろうか。

 ふふふふ。



 さて、最後は偽装クルーズ船だが、これも★国の船だし、雑でも良いか。

 先行していたクルーズ船は鹿児島の横を通り過ぎた頃なので、一気に鹿児島へとゲートで移動し、沖縄方面に向かって飛行魔法で南下して行く。


 が、ここで問題が。クルーズ船が見つからない。

 2時間程彷徨った結果、やっとの思いでクルーズ船を発見した。


 発見に手間取ってしまい、イラっとしたので、甲板に槍をぶっ刺して、水魔法の水柱で、10m程の高さまで船を持ち上げ、落としてやった。

 そして、サクッとゲートで同じく例の広場へと送ってやった。



 帰り際に、首相官邸の庭に槍と手紙を送って、自宅へと戻って来た。


 時刻は既に夜中の2時を過ぎていた……。

 帰りを待っていてくれた兄上に報告もソコソコに、着替えて眠りに就いたのだった。

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