第14話 第1階層

 入り口を潜ると、途端にガツンと重力が変わった。


「ふぅ~。これで普通に動けるな。」

 と軽くジャンプしたりシャドーボクシングをしたり、蹴りを入れたりして、身体を慣らす。



 久々のダンジョンだし、大幅なレベルダウン中だから、油断無くジックリとやって行こう。

 気合いを入れて、気配探知と魔力探知にも集中しつつ、焦らずに進んで行く。


 ダンジョンの第1階層は、洞窟となっていて、ダンジョンの洞窟エリア特有の薄く光る壁で視界は確保されている。

 200m程曲がりくねった洞窟を進むと、曲がり角の向こうから、反応を感じる。


「(お、いよいよか)」

 と小声で呟き、手にした小太刀を両手で握り直す。

 小太刀と言えど、まだ手が小さいので、正直言うと、かなり力が入りにくいのである。


 曲がり角の先には、薄青色のプルンとしたゼリーっぽい物が居た。

 お馴染みのブルースライムである。


 だが、スライムと言えど、侮ってはいけない。

 やつらは、あれで中々初心者キラーと言われている存在である。


 特に、ジャンプからの体当たり攻撃や、腐食性の強酸液を飛ばして来たり、種類によっては、毒を飛ばして来たりする。

 また、スライム自体は物理攻撃に対する耐性が強く、的確に核を潰さないと、反撃に遭ってしまう。

 核…つまり魔石である。


 俺は、身体強化を使って、素早く目前に迫り飛び越える際に、空中で一回転しながら、小太刀で核を切った。

 ブシャ と言う音と共にスライムが光の粒子となって消えて行く。

 後には、真っ二つに割れた魔石が残っていた。


「ふぅ~、1匹目クリアだな。」

 と呟きつつも、予想以上に自分が緊張していた事を初めて理解した。

 ふふふ、スライムで緊張するとか、俺も可愛いもんだな…と自嘲気味に思わず笑いがこみ上げてくる。


 1匹目を仕留めた事で、緊張が解れ、その後、続々と曲がり角や別れ道の先で、出て来るスライムを討伐して行く。

 スライムの討伐は、核を切る方法と、もう1つ、魔法攻撃による方法がある。

 火魔法で焼くか、水魔法で凍らせるか、土魔法で核を貫く等の方法で、アッサリとやっつける事が可能である。


 第1階層に入って、50分が過ぎた頃、43匹のスライムを討伐し、最初のレベルアップとなった。


 <ピロン♪ レベル2になりました。>


 久しぶりに頭の中に鳴り響くメロディと音声に、ニヤリと笑みを浮かべ、早速辺りを見回して脅威が無い事を確認し、ステータスを表示した。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 名前:佐々木徳士(佐々木徳治郎)

 年齢:6歳(32歳)

 種別:人族  Lv:2

 職業:---(勇者※)

 状態:正常

 HP:71/71(1261※)

 MP:212/212(2085※)

 筋力:45(1527※)

 俊敏:45(1319※)

 頭脳:202(2368※)

 運 :94(1008※)

 武術:佐々木流斬刀術 アンドレフ体術

 魔法:火 初級(Ex級※)

    水 初級(Ex級※)

    風 初級(Ex級※)

    土 初級(Ex級※)

    光 初級(Ex級※)

    闇 初級(Ex級※)

    聖 初級(Ex級※)

    空 初級(Ex級※)

 ギフト:言語理解

     アイテムボックス

     経験値倍増

     魔力回復倍増※

     体力回復倍増※

     物理攻撃軽減※

     魔法攻撃軽減※

     ワールドライブラリ※

 スキル:鑑定※

     隠密※

     気配感知※

     魔力感知

     魔力操作

     身体強化

     並列処理※

     思考加速※

     錬金※

     鍛冶※

     テイム※

 称号:神風の勇者

    異世界の神に愛されし者

    偉業を達成した者

 加護:カサンドラス神の加護※

    大神の加護

    英霊の加護

 備考: ※ 制限中

    ( )隠匿

    

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 レベルアップに伴い、ステータスの各数値も上がり、疲労感も無くなり、力も漲って来る。

 レベルアップの良い所は、数値が上がるだけでは無く、正にこの『疲労感が取れる』事や、使って減った魔力が、一気にフルに戻って来る事にある。

 なので、ギリギリの戦いをしている最中でも、レベルアップによって、九死に一生を得た経験は1回や2回ではない。

 まあ、そこら辺のタイミングは、運なんだろうがな。


 斯くして、レベル2になり、若干魔力量も増えたので、次は魔法攻撃を仕掛ける事にした。



 ステータス確認の小休止を終え、再度進み始める。

 一応、メモを取りながらマッピングをしているのだが、以前カサンドラスではワールドライブラリのギフトが使えたので、マッピング不要だったのを思い出し、ちょっと残念に思った。


 そして、30mぐらい進んだ先で、壁際にちょっとした異変を感じ、ジックリと観察したら、どうやら隠し部屋がある時の感覚に似ている。

「もしかして、ここも隠し部屋かも。」

 と軽く壁を押してみると、


「バコッ」


 壁が引っ込んで扉部分の岩壁が開いた。


「おお!あったりぃ~」

 と喜びつつも、気配を探ると、10m四方ぐらいの部屋の真ん中に宝箱が置いてあった。


「グフッ やっぱり当たりっすか?」

 と微笑みつつ部屋の中に足を踏み入れ、辺りを見回しながら宝箱に近付いて行くと、


「ガコッ」

 と言う重厚な音と共に後ろで扉が閉まってしまった。


「あーー、これモンスターハウスのパターンやん。」

 と少し嵌められた事にガクッとしつつも、油断無く周囲を確認すると、彼方此方から光の粒子が湧いて出て集まり、無数のスライムが現れた。


「はぁ…スライムのモンスターハウスかよ。」


 俺は右手に小太刀を持ったまま、左手の平を開いて突き出し、火魔法を発動。


「ファイヤーボール、ファイヤーボール、ファイヤーボール」


 直径20cmぐらいの火の玉が、左手の平から3発次々に発射され、それぞれの狙った箇所に着弾する。


「「「ドッゴーーン」」」

 と言う爆発音と友に、耳がキーーンとなり、ちょっと鼓膜がおかしくなってしまった。


 ヤバっ! 密室で火魔法はダメだろ!! 何やってるんだよ、俺!!


 と失敗に気付き、慌てて、アイスバレットに切り替え、5発程連射する。


 まあ、あれだ。

 そもそもだが、別に魔法名称を連呼する必要は無いのである。

 イメージさえ伴えば、詠唱も必要無い。

 酸素と可燃性の水素とかが、燃えるイメージさえあれば大丈夫なのである。

 つまり、魔法発動に一番重要なポイントは、『イメージ』である。


 散弾の様に飛び散るアイスバレットが次々とスライムの身体に穴を開けて行き、中には運良く核に当たって光の粒子となって消えて行く。

 ステータスを確認すると、今の計8発の魔法発動で、MPは13ポイント減っていた。


 くーっ…アイスバレットが2ポイントか。

 最初のファイヤーボール3発で、9匹を殲滅し、アイスバレット5発では、7匹しか仕留めてない。

 つまり、ファイヤーボールの方が効率が良いと言う事なんだが、密室なので、自分にもダメージが入るのと、酸欠の恐れもあるので、ここからは小太刀による攻撃に戻す事にした。

 一瞬、風魔法のウインドカッターで核をカットする事も考えたが、おそらくは、弾力性のある身体が勢いを阻害して、核まで届かない可能性があるので却下となった。


 身体強化を使いつつ、残りのスライム28匹に斬り掛かる。

 こちらの攻撃で、怯んでいる今が攻め時である。

 奴ら持ち直し、攻撃を仕掛けて来る前に仕留めなければならないのだ。


 素早く鋭角にスライムからスライムへ移動しつつ斬撃を食らわして廻る。

 一斬一殺である。

 更に12匹を冥途に送った所で、斜め右前方のスライムがジャンピング・ボディー・アタックを掛けて来た。

 更に左側のスライムからは、毒液を飛ばしている。


 俺は、素早く身を低くして、左前方へ進んで、毒液を飛ばしたスライム(技の発動直後で硬化中)に斬撃を浴びせた。

 そして、ジャンピング・ボディー・アタックが空振りした、スライムが転がっている所に、トドメを刺しに行く。


 残りのスライムも、必死になって跳びはねたり、腐食液を飛ばしたりと、モンスターハウスの中は、酷い有様になっている。

 さながら、修学旅行の枕投げ会場の様だ。

 スライムの動作スピードはそんなに俊敏ではないので、俺の動きに付いてこれず、通過し終わった所目掛けて飛び込み、スライム同士で激突し、彼方此方に跳ね返ったりと言うカオス状態。

 そんな中でも、冷静に攻撃を躱しつつ、飛んでるスライムの下から核を突いたり、核ごと横から真っ二つに斬ったりと、着実に個体数を減らして行く。


 そして、最後の1匹となり、せっかくだから、思い付いた魔法を試す事にした。


「ウインド・ボム」


 左手の平から、風魔法の圧縮弾が飛び出し、スライムの身体に食い込んだ状態で、爆散した。


「バシャ」


 狙った通りの爆散で、核が弾け飛び、光の粒子となって消えて行ったのだった。


 結果、5分に満たない時間で、44匹を殲滅した。


 落ちて居るドロップ品を回収しつつ、部屋の真ん中にあった、宝箱を開けると、低級ポーションが1本入っていた。


「ふふふ、まあ、第1階層だし、こんな所だろうな。ふははは。」


 それでも、『お宝』の低級ポーションを回収して、開いた扉から出て、先へと進んだのだった。


 その後、1時間程、第1階層を廻って、50匹以上のスライムを仕留め、レベルアップの知らせを受けた頃、漸く第2階層への階段を発見したのだった。


 階段を降りる前に、小休止して、ステータスを確認すると、


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 名前:佐々木徳士(佐々木徳治郎)

 年齢:6歳(32歳)

 種別:人族  Lv:3

 職業:---(勇者※)

 状態:正常

 HP:81/81(1261※)

 MP:222/222(2085※)

 筋力:55(1527※)

 俊敏:55(1319※)

 頭脳:212(2368※)

 運 :104(1008※)

 武術:佐々木流斬刀術 アンドレフ体術

 魔法:火 初級(Ex級※)

    水 初級(Ex級※)

    風 初級(Ex級※)

    土 初級(Ex級※)

    光 初級(Ex級※)

    闇 初級(Ex級※)

    聖 初級(Ex級※)

    空 初級(Ex級※)

 ギフト:言語理解

     アイテムボックス

     経験値倍増

     魔力回復倍増※

     体力回復倍増※

     物理攻撃軽減※

     魔法攻撃軽減※

     ワールドライブラリ※

 スキル:鑑定※

     隠密※

     気配感知※

     魔力感知

     魔力操作

     身体強化

     並列処理※

     思考加速※

     錬金※

     鍛冶※

     テイム※

 称号:神風の勇者

    異世界の神に愛されし者

    偉業を達成した者

 加護:カサンドラス神の加護※

    大神の加護

    英霊の加護

 備考: ※ 制限中

    ( )隠匿

    

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 と大体10ポイントずつステータスが上がっていたのだった。

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