第12話 月の秘密
あれから(兄上がステータスを使える様になって)、3回目の梅雨がやって来た。
だが、まだ大神様からの『ご案内』は無い。
結構今年の正月で丁度約束の2年だったのだが、既に半年オーバーと言う所。
まあ、色々調節が大変なんだろうと、察しているので、恨み言は無い。
寧ろ、ご無理を言って申し訳無いと言うのが正直な気持ちだが、是非とも何とかして欲しい。
そう思っていたら、やって来ました、嬉しいお知らせ。
「うむ・・・その・・・言って置きながら予定よりオーバーしてしまって申し訳無いのぉ。」
と若干苦い顔の大神様と、遣りきった感満載のカサンドラ様が、夢の中にやって来た。
「もう、結構大変だったのよー! 聞いて聞いて!!」
「そうでしたか。ご苦労お掛けします。
でも、過去形と言う事は、何とかなったんですね?」
と労いの言葉をかけつつ、思わず前のめりに聞くと、
「ええ、バッチリよ!」
とウインクするカサンドラ様。
「結局、転送に使う魔力源に結構苦労してのぉ~、遅うなってしもうた。」
と大神様。
そして、大神様から太古の文明に絡む壮大な説明が始まったのだった。
どうやら、大神様自身もスッカリ忘れていたが、月には古代文明の跡が残っていたらしい。
「お主は、かぐや姫やムー大陸と言うのは知っとるかの?」
と切り出された。
竹取物語は、日本に古くからある物語であるし、今生でムー大陸やアトランティス文明に関しての話も本で読んだから知っている。
で、驚きの事実だが、竹取物語は、お伽噺ではなく、実話だった!
「ええっ!? 本当ですか?」
と思わず聞き返してしまったが、
「ワシが嘘を言っても意味ないじゃろ?」
と返されて、素直に謝った。
ムー大陸と呼ばれる物は、月の裏側にあり、当時非常に栄えた文明がそこにあったらしい。
当時の月は自転していて、大気も水もあり、現在の時代よりも更に高度な文明を築いており、宇宙へも自由に行き来していたらしいのだ。
そして、星間航行していた宇宙船が、事故を起こして、救助カプセルを放出し、その1つに、当時赤ん坊だったかぐや姫が乗っていた。
月日が流れ、やっと救助隊員がかぐや姫を発見して、月のムー大陸に連れ帰った・・・と言う話。
いやぁ~、物語って何処で何に繋がっているか、判らないもんだな。
で、話は横道に逸れたけど、つまりそのムー大陸の遺跡が月の裏側の地下に残っていたので、そこを利用する様にして、更にエネルギー源と言うか、魔力源として遺跡の一部を活性化したと。
それを使って、ブレスレット型の魔道具を動かす事にしたらしいのだ。
そこで、身を乗り出して割り込んで来たカサンドラ様が、後に続けて鼻息荒く説明し出した。
「で、ですよ。
その魔力源でダンジョンと転移と両方となると、結構厳しい事もありまして、頭を捻った訳です。
そもそもですが、徳治郎さんの身体はまだまだ小さい訳で、そんな子供が不意に居なくなると、大騒ぎになるだろうと考えてですね、素晴らしい解決策を思い付きました!」
とドヤ顔のカサンドラ様。
つまり、身体から精神体を分離し、寝てる間だけダンジョンに潜り、レベルアップ出来る様にしてくれたらしい。
その精神体のレベルアップが身体にも反映されるのだそうだ。
凄いな!
精神体の転送だけなら、転送時に必要な魔力も少なくて済むと言う事なんだそうだ。
「正に、神懸かり的な発想でした! 神だけに!!」
と決めポーズをしていた。
俺は、取りあえず、「凄いです!」と大人の対応をしておいた。
その神器と呼ばれる魔道具のブレスレットは、取りあえず20個くれるらしい。
「あ、但し、月の出ている時しか使えないので、ご注意下さいね。
魔力による接続ですが、少々距離がある上に、精神体と言え、転送に必要な魔力量は少なくないので、リンクには、月が輝いて空に見える時だけです。
月が隠れる時は、繋がりが悪いんです。
そこだけは注意して下さい。
一応、ブレスレット側にリンク状況が悪くなると、安全の為に、強制送還の仕組みは入れてますが、それでも注意して下さいね。
ブレスレットの表面に、アンテナマーク出してます。
バリ3だったらOKですが、1本しか立って無い場合は、早めに切り上げて下さい。」
との事だった。ふむ・・・。
「だそうじゃ。
まあ、もし仲間が増えて、更にブレスレットが不足しそうなら、神社にでも行ってワシに願うてくれ。
なんとかしようぞ。」
と大神様。
「何から何まで、ありがとうございます。
これで念願のレベルアップが出来そうです。
ところで、月のダンジョンですが、ドロップアイテムや、素材の剥ぎ取りとか出来るんでしょうか?」
と聞いてみると、
「うむ。大丈夫じゃぞ! のよぉ?」
と大神様がカサンドラ様に振ると、
「ええ、そこら辺はカサンドラスのダンジョンと同じ仕様にしていますので、ご安心下さい。
ちなみに、ダンジョンの階層は、100層を予定してますが、状況に応じて、途中で深くしますから。ふふふ。」
と悪戯っぽく微笑んでいた。
なんだろう? ちょっと悪寒が走ったぞ?
その他の注意事項と言うか、説明で、俺自身の持つブレスレットをマスターとし、ほかのスレーブ型ブレスレットは、マスターが起動しないと、転移しないようになっているらしい。
また、マスターからの操作で、強制的に地球に戻す事も可能だそうで、いやはや、何とも至れり尽くせりですわ。
「いやぁ~、心が逸りますなぁ。」
とワクワクしていると、
「あー、盛り上がっている所、申し訳ないが、明日は新月じゃからの。」
と大神様。
『月が輝いている時』にその輝きの反射エネルギーも利用しているのだそうで。
「日食時もダメだから。」
とカサンドラ様。
しかし、嬉しいな。
アポロ計画が終了して以来、何十年ぶりかの月に行く人類ですか。
「じゃあ、そろそろ時間じゃな。
またちょくちょく顔を出すからのぉ。
精進するんじゃぞ!」
と大神様とカサンドラ様が消えて行き、チュンチュンと言う雀の鳴き声が聞こえるのであった。
目覚めた俺は、腕を見たが何もなく、慌ててアイテムボックスの中を確認すると、マスター1個にスレーブ20個のブレスレットが入っていた。
マスターを取り出して、腕に填めると、自動サイズ調整で、腕にフィットした。
ブレスレットというより、どちらかというと、時計の様な感じで、文字盤に相当する部分を触ると、TVの様な画面が表示されて、タッチすると、情報が切り替わった。
「うーん、素晴らしいな。
こんな感じのをTVの戦隊物とかで使っているのがあったけど、あれは空想の世界だからな。
ある意味、世界最先端だな。」
と朝から興奮する俺だった。
ちなみに、アンテナと言ってた棒グラフみたいなのは、1本も立っていなかった。
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