第9話 再会

 翌朝目覚めて、昨夜の夢を思い出してステータスを確認すると、夢ではなかった事が証明された。


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 名前:佐々木徳士(佐々木徳治郎)

 年齢:4歳(30歳)

 種別:人族  Lv:1

 職業:---(勇者※)

 状態:正常

 HP:52/52(1261※)

 MP:171/171(2085※)

 筋力:25(1527※)

 俊敏:25(1319※)

 頭脳:189(2368※)

 運 :84(1008※)

 武術:佐々木流斬刀術 アンドレフ体術

 魔法:火 初級(Ex級※)

    水 初級(Ex級※)

    風 初級(Ex級※)

    土 初級(Ex級※)

    光 初級(Ex級※)

    闇 初級(Ex級※)

    聖 初級(Ex級※)

    空 初級(Ex級※)

 ギフト:言語理解

     アイテムボックス

     経験値倍増

     魔力回復倍増※

     体力回復倍増※

     物理攻撃軽減※

     魔法攻撃軽減※

     ワールドライブラリ※

 スキル:鑑定※

     隠密※

     気配感知※

     魔力感知

     魔力操作

     身体強化

     並列処理※

     思考加速※

     錬金※

     鍛冶※

     テイム※

 称号:神風の勇者

    異世界の神に愛されし者

    偉業を達成した者

 加護:カサンドラス神の加護※

    大神の加護

 備考: ※ 制限中

    ( )隠匿

    

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「お! 良いのが制限解除された!」

 と思わずニンマリ。


 アイテムボックスと経験値倍増は今の状況としては、非常にありがたいギフトである。

 まあ、普段の修練だけで、どれ位の経験値が貯まるかは、微妙だが倍増するので、通常の1/2以下でレベルが上げられるのである。

 これは初期段階よりも、ある程度レベルが上がって、必要経験値が膨らんだ時に、更に効果が出るのだ。

 レベルが上がれば上がる程、より効率的に経験値が得られる魔物を討伐する必要が出て来るが、そう言うレベルの魔物は、そこまで数も種類も多くない。

 よって、経験値倍増の有無によって、上位種を2匹探さないといけないケースでも、1匹で済む為、捜索時間という目に見えない時間まで節約されるの、その恩恵は単純に、所要時間が1/2となる以上の効果があるのだ。


 残念と言えば、ワールドライブラリが解放されなかった事だが、これは元々カサンドラスの情報を得ていた事を考えると、もしかすると、待ちの2年間の間に、こちらの世界に情報を合わせて解放となるのかも知れない。

 そこは、神様達の頑張りに期待しよう。(こんな言い方だと不敬になるかな?)


 兄上にも、準備が整い次第、ステータス機能が使える様にしてくれるとの事だったので、それとなく伝えた。




 1月4日になって、朝食後に父上が、

「今日は約束した靖国神社へ参拝しに行くぞ!」

 と言われ、大喜びする俺。


 そんな俺の様子を微笑ましく見つめる両親だったが、少し不思議そうにもしていた。



 電車を乗り継ぎ、地下鉄の九段下駅で下車して、人の流れに乗り、階段を上って地上へと出た。

 そして、歩道を歩いて行くのだが、歩道の脇には、プラカードや立て看板を出して、何やらチラシを配ったりしている人達が居た。

 ん? と不思議に思って看板に近づいて行き、読んでみると、「戦争反対! 憲法9条を守ろう!」とか、「憲法違反の自衛隊を廃止せよ!」とか、「政府閣僚の靖国参拝反対!」とかが書かれていた。

「何じゃこれ? 憲法9条? 参拝反対? 何で??」

 と思わず呟くと、ビラを配っていたおじさんが、


「ん? 坊や、憲法9条ってのはね、戦争を放棄しますって言う、世界平和を宣言した素晴らしい物なんだよ。

 もう、日本は戦争しません! 軍隊を持ちません!って言ってるの。

 戦争で人が死んだり、人を殺したりするのは嫌でしょ?

 日本は昔の事を反省して、戦争をしないって、言う事を憲法と言う法律で宣言しているだよ。

 ちょっと坊やには難しいかな。ふふふ」

 と笑いながら、教えてくれた。


「え?でも、日本が戦争しません!とか言ったって、攻めて来る国の軍隊来たら、どうする訳?

 まさかだけど、おじさん、日本がその憲法で 戦争しません! って言ったら、敵は攻めて来ないとか思ってないよね?」

 と驚いて大きな声で聞くと、周りの通行人もこちらを注目して歩くのを止め、結構な人垣が出来ていた。

 父上が、慌ててこっちに寄って来て、止めようとしていたけど、俺はそれを制して、おじさんの回答を待った。


「そこは、ほら人間なんだから、話し合いすれば、良い訳で、何も軍事力を持って殺し合いをする必要は無いでしょ。」

 と言う。


「いやいや。ハハハ。相手はこっちを攻める気満々なんだから、戦争しません、抵抗しません なんて宣言しちゃったら、殴りたい放題、攻めたい放題、やりたい放題ですよね?

 元々、話が通じない様な奴らだから、攻めてくるんでしょ? おじさん達って、もしかして、家に鍵掛けたり、戸締まりしない感じなんですか?

 泥棒が入って来たら、どうぞどうぞ!って歓迎しちゃう感じですか? もし、目の前で家族が殺されそうになっても、手を出さず、殺されるのをジッと見て居る感じですか?」

 と声のトーンを上げて聞いてみると、


「あ、いや、その・・・」

 としどろもどろになっていく。


「国や家族を守る為に、命を掛けた英霊の皆さんのお陰で、今の僕達が居るんですが、そんな御国の為に我が身を投げ出して下さった方々へ、感謝の参拝をするのは、国の指導者として、当たり前だと思うんですが、何でダメなの?

 感謝の気持ちとか、そう言うのを持たないって事なの? おじさん、それはおかしいよ。ちゃんともう一度幼稚園から勉強しなおした方が良いよ。」

 と言うと、立ち止まった周りから、大きな拍手と歓声が鳴り響いた。


 すると、おじさん達は、顔を真っ赤にしながら、速攻で撤収して、消えていったのだった。


「おいおい、徳士~、あんまり正月早々親をヒヤヒヤさせるなよぉ~。」

 と言いながら、父上が頭の上に手を置いて、ポンポンと優しく撫でて来たのだった。

 母上と兄上も、ちょっと離れた場所で、苦笑いしていた。


 まあ、あのおじさん達も、幼児にやり込められる程度の根拠の無い主張を反省して欲しい物だ。

 本当に、せっかくの気分の良い参拝が台無しである。



 父上に抱き上げられて進む歩道の先に、大きな鳥居が目に入り、思わずその立派な姿に「おお!」と感嘆の声を漏らしてしまう。

 そして、その鳥居を潜ると、神域に入った事を感じた。

 大きく広い参道を、ユックリと流れに乗って、奥へと進むと、三が日程では無いらしいが、それでも参拝待ちの行列が出来ていた。


 30分ぐらいで順番が廻って来て、お賽銭を入れ、二礼二拍手し、手を合わせ、戦友達に心の中で挨拶をした。


「やあ、友よ! 逢いに来たよ! 遅くなってごめんな。」と。


 すると、サーッと辺りの音が消え、視界が切り替わり、懐かしい戦友達が目の前に現れたのだ。


「おお!! 山崎! 佐藤! そして、前田、お!川上も!! 逢いたかったぞ! すまん、俺だけ生き延びてしまって。」

 と頭を下げると、


「久しぶりだな! いや、よくぞ生き延びて逢いに来てくれた。

 そうか、良かったな。後の日本の事、宜しく頼むな!」

 と親友の山崎が俺の肩をポンポンと叩き、消えて行った。


「お前も生き延びたって言ったって、別の世界で苦労したらしいじゃないか。

 でも、また逢えて本当に良かった。

 せっかくだから、思いっきり人生を楽しめよ! いやぁ~良かった良かった。」

 と佐藤と前田が左右の肩に手を置いた後、消えて行った。


「お前には、本当に世話になったな。ありがとうな!

 あんな戦況じゃなかったら、妹を紹介したかったんだがな。

 また次の人生で逢う事があったら、紹介してやるからな!

 じゃあ、元気に頑張れよ! 日本を宜しくな!」

 と言って最後の川上も消えて行った・・・。


 そして、風景が戻り、雑踏の音も戻って来た。

 俺は、戦友に再会出来て、思わず笑顔のまま、止めどと無く涙を流していた。

 最後に一礼をして、家族と境内を後にした。


「あっ君、どうしちゃったの?」

 と涙を流している俺に、母上が気遣う様に頭を撫でてくれた。


「いや、ちょっと感動してしまいました。」

 と誤魔化したけど、両親は不思議そうにしてた。


 その後、遊就館を見学して、昼食を取ってから、帰途に就いたのだった。


 その夜、ふとステータスを見ると、何故か『英霊の加護』が増えていた。

 戦友よ、ありがとう!

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