他の方も言われてますが、この作品を一言で表すなら「人と戦う前の緊張感」です。人と人は刃で争う前に普通は対話します(普通は)。対話から戦いにいたるまで敵意が膨れ上がっていく。その描写が自然で読んでいるとこちらまで緊張します。気持ちが高まったところで戦闘シーンが始まるので、最初から熱く没入できます。かといってバトル描写ばかりか、と言えばヒロインのシズが殺伐可愛かったりするので、イイ……と思ってしまうわけです。
これは面白い!物語はまず、最強を志した主人公が「剣鬼」に挑み、あっさり負けてしまうところから始まります。そこから主人公の技の探求が始まるわけですが、実地に技を受けながら考察し戦う姿が面白い。主人公はいままで恵まれたフィジカルで全てをねじ伏せてきた男。達人はもちろん、雑魚ゴブリンとの戦いからも術理を学び成長していきます。戦闘描写の読みやすさ、異世界の風俗描写もお見事。これは名作の予感です。
テーマとして闘い、強さそのものに力点を置いているだけに魔法、拳、武器何でもありのその戦闘描写は熱く緻密。その一方心理的駆け引きや読みあい、強さを求める登場キャラクターの心理描写の方もおろそかになっていないので読んでいて薄っぺらさを感じません。一押しキャラはやっぱり主人公の西田君。初心なところと達観したところを併せ持ったいいヤツです。冒頭で手もなくひねられた剣鬼にリベンジを果たす日を楽しみにしています。