冤罪犠牲者のことも考えろ

作者 常山 無

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★★★ Excellent!!!

性犯罪に限らず、なにか悲劇的な事象の被害者というと、世間は潔白な人物像をその被害者に当てはめたがる。落ち度のない完全無欠な人間に降り掛かった悲劇こそ真に悲劇だと言わんばかりに。
しかし、創作物において、そのような”無垢な被害者像”は作品を現実離れさせてしまう。読者は無垢な被害者に感情移入することによって、自分の中にある加害性を見落としてしまう。
しかし、この作品は、主人公にミソジニーの性質をもたせながらも、ちゃんと悲劇を演出できている。それはこの作品が性犯罪の残酷な性質を生々しく表現できているからだ。

この作品は、歪みの中に生きる人間の姿をリアルに簡潔に描き出せている。性犯罪に遭った後の主人公に対する周囲の冷ややかな視線はまさに男性をとりまくミサンドリー的価値観を表しているし、性犯罪に遭う前の主人公はミソジニーの主体として他者を傷つけている。
この作品は一見すれば因果応報のような構造に見えるが、私はそれはミスリードなんじゃないかと思っている。なぜなら、この物語は最後まで歪みが正されていないからだ。勧善懲悪というより、悪を列挙している物語だ。
この作品は最初から最後までずっと歪みっぱなしだし、それは私達が置かれている実際の状況も同じであり、この歪みはこの文明社会に普遍的に存在してきた歪みだ。
ジェンダー文化の歪みの中に生きる私達はそれぞれが加害者であり被害者なのだという構造を、この作品は示している。

この主人公がこの後どうなってゆくのか、とても気になる。
彼の中には、「自分がもし女なら心配されたのに」という不公平感あるだろう。現実においても、男性の被害者は誰しも、そういう気分を持つはずだ。かつての私もそうであった。この主人公は特に強いミソジニーの特性を持っているので、それはいつしか「女ばかりずるい」という女性に対する妬みや憎しみへと変化してゆくだろう。性犯罪に遭った自分… 続きを読む

★★★ Excellent!!!

確かに痴漢は冤罪も多く、それによって被害も生まれている。
加害者にならないように、という努力が面倒だ。そんな気持ちもあるだろう。
であるが故に「またか」や、「これは違うだろう」と事実を確認しないままの先入観が生まれる。
私達はしっかりと公平な立場で、その状況や真実を把握できているだろうか。

人物像がとてもリアルに描かれていて、色々な感情をかきたてられました。
どうしてもどこかに偏ってしまいがちな日頃の自分の言動を、振り返らせてくれる作品です。

★★★ Excellent!!!

痴漢と冤罪の問題。
これを文章で、しかも物語で表現するのは大変難しいと思います。

しかしこの作品は、最初から最後まで納得の展開で、この社会問題の深刻さを驚くほど的確に描かれています。

読者として物語を第三者目線で読んでいるからこそ感じる苛立ち、人が人を裁く難しさも内包していて、激しいジレンマを感じます。

これは決して他人事ではありません。
明日は我が身、そう身構えてしまう驚愕の良作です。

★★★ Excellent!!!

人間というのは不思議なことに、犯罪に関して加害者だけではなく、被害者を責め立てようとすることがあります。

「犯罪に遭うのは被害者にも何か落ち度があったからに違いない」

そんな理由を付けて批判をする人は、ネット上ではごまんといるのは周知の事実。

ましてや本作のテーマである「痴漢」という犯罪は、性犯罪の特性上、どうしても人々の邪な心を呼び起こしてしまいます。

ただでさえ恐ろしい目にあったであろう被害者が、何のいわれもない誹謗中傷を受けるのは、ひたすらに理不尽で不憫です。

本作の主人公である男子学生も、そうした痴漢の被害者を見下し、自身の優越感を満たしている人物。

ひたすらに女性や痴漢被害者をあげつらう姿勢は、もはや清々しさすら覚えるほど。ですが世の中は彼に対して、相応の厳しさの罰を与えることになるのです。

男子学生にどんな天罰が下されるかは、本編を読んでいただくとして。

「人を呪わば穴二つ」。誰もが知っていることわざですが、本作の内容を端的に表すならこれに尽きます。

男子学生は女性の生きづらさ、痴漢の被害者の心情に理解の姿勢をまったく示しません。その結果どうなるか?

やはり、彼もまた周囲の人々の無理解に苦しめられることになるのです……。


他者をおもんぱかるのは、「言うは易し行うは難し」です。しかし、その「難し」を成さなければ、もしかしたらこれを読んでいるあなたも、男子学生のような悲惨な目に遭うかもしれません。


「人を呪わば穴二つ」、まったく良い言葉です。あなたも本作『冤罪犠牲者のことも考えろ』を読めば、この言葉がいかに真理であるか、戦慄をもって知ることができるでしょう……。

★★★ Excellent!!!

物凄く考えられるお話です。
痴漢は、いつ何処で誰が被害者になるかわかりません。そんな中明日は我が身と思っていない高校生たちの、リアルな会話シーン。目を逸らしたくなる内容ですが、きっとそんな会話は確実に交わされている。
そしてその会話に面白おかしく参加していた主人公視点で描かれる、衝撃的な展開。とても心がザワザワする感覚を覚えました。

読了後の清涼感は、決してありません。ですがこれは誰の身にも起こりうることで、だからこそ色々と考えさせられる。そんなお話となっています。

★★★ Excellent!!!

どうせ女が被害に遭って泣く話だろ? と思ったそこのアナタ!
違いますよ~。
むしろこれは、女性にも共感されるとは思いますが、男性の共感を呼ぶ作品だと思います。

これは表に出にくい問題がテーマの一つになっていると思います。

救いはありません。

でも、これを読んで1度はこういう問題について考えてみるのも良いと思います。

★★ Very Good!!

これ、カクヨムコン短編ではなくて他の短編公募に出すような作品なのでは?
そう思うくらい社会的なメッセージ性が強かったです。

描いているのは痴漢と冤罪。詳しい言及は避けますが、この視点で書かれた作品は少ないのではないでしょうか。

人物描写は自分他人ともにリアルで、読みながらかなり感情移入しました。しかもイライラする形で。自分の中では読んでこの感情になるの、珍しいです。

正直誰もが読める作品ではありません。しかし一度は「読むのを試す」作品ではないでしょうか。

★★★ Excellent!!!

辛い内容かと思います、自分に関係ないとか思う人もいるかもしれませんがこういうこともある、それも大事、たった一つの事例。それが明るみになっただけ。
もっと他にも見えないところで起きているかもしれません。

話の流れもスムーズで読みやすい。是非とも読んでいただきたいです。

★★★ Excellent!!!

想像力の欠如した、心ないモノローグ。若い世代が交わす下劣な会話。読者はあっという間に心を、意識を掴まれます。

まず、痴漢被害がどれだけ卑劣で、被害者の心に深刻な傷を残す行為なのか、それを知るべきです。あまりのショックに、正常な判断を下せない場合だってあります。それを思い測れない第三者が、冤罪だの自意識過剰だのと騒ぎ立てるのは、明らかに間違っている。

主人公は、自分勝手に被害者を侮蔑する側の人間でしたが、突然思わぬ事態が降りかかって…。
「人の立場に立って考える」という、ある意味当たり前のことについて、深く考えさせられる作品です。

★★★ Excellent!!!

冒頭から飛び交うむき出しの会話に心を冷やされる。それはネットニュースに溢れる数々の心ないコメントそのものなのだろう。被害者がいる時、そこには必ず加害者がいる。しかし被害者が口を塞がれた瞬間、加害者は消えてなくなる。この理不尽。作者のとった方法はかなりラディカルだが、逆に言えばそこまでしないと何も伝わらないということか。短い話にも関わらず、読み終わった後にずっしりと重たいものが残る。主人公の衣服についたシミは心のシミとなって永遠に取れないことだろう。

★★★ Excellent!!!

電車から降りると、おそらくさっき、痴漢と騒いだ女が、駅構内でしゃがみこんでいた。
マジでうぜえ。
痴漢だって騒ぐくらいなら、自分で捕まえて見せろよ!
女はマジで勝手な生き物だ。

そう思ってた主人公であったが……。

意外な展開を絡めつつ、痴漢冤罪についてあらわします。