第18話 秋月友火の相談(中編)

 秋月の相談に来たはずだが、教室の話から更に脱線してしまった。そろそろ相談とやらを聞こうと思ったが、俺にはどうしても秋月に聞きたかった事があるのを思い出した。もしかしたら触れてはいけない事かもしれないと、前から気になって仕方が無かったが、今日、この場で聞く事にした。例えそれが地雷を踏む行為であったとしても。


「なあ? 秋月のペンネーム、『フレンドリー・ファイヤ』ってさ、名前の『友火』から取ってる?」


 俺は地雷を踏む覚悟でペンネームの由来を聞いた。


「あ、気付いた? ネット上では本名を明かせないから、誰にも分かってもらえなかったけど気付いてくれて嬉しい」


 アレ?  地雷を踏む覚悟で聞いたんだが喜ばれてるぞ。


「『友』が『フレンドリー』、『火』が『ファイヤ』、直訳すると『友好的な炎』とか『親しみやすい炎』、みたいな感じでカッコ良くない?」


 秋月は本当に中二病的な感性を持ち合わせている残念美少女のようだ。ドヤ顔で素晴らしさを語っているが、本当の意味を理解しているのだろうか?


「なあ、『フレンドリー・ファイヤ』の本当の意味を知ってるのか?」


「本当の意味? どういう事?」


 あ、やっぱコイツ意味分かってないで使ってるな。


「『フレンドリーファイヤ』ってさ、『友軍誤射』って意味なんだけど。いわゆる、『味方に間違って攻撃しちゃった』、サーセン、みたいな?」


「えっ⁉︎ し、知らなかった……私、もしかして凄い恥ずかしいペンネームで活動してるって事?」


 秋月は割とショックを受けてるようだ。彼女は成績も上位で優等生だが、何かしら抜けてるとこがあるようだ。そこが学園一の美少女と呼ばれながらも、親しみやすい原因のひとつなのかもしれない。


「ほ、ほら、めざし作家さんは、変なタイトルの小説で、変わったペンネームで活動してる人も多いみたいだし、個性的でいいじゃない?」


 ちょっと落ち込んでいるようなので、フォローしてみた。


「それって……やっぱりタイトルもペンネームも変な名前なんじゃない……」


 全然フォローになってなかった!


「ま、まあ今の秋月の作品とペンネームは合ってるし、次回作の時にでも変更すればいいんじゃないか?」


 やはり遅延信管の地雷だったようで、秋月にジワジワとダメージを与えていってるようだ。


「そ、そうね! ペンネームの事は今度、考えましょう! そ、そんな事より、今日はアンタに小説の事で相談に来たのよ!」


 どうやらペンネームの事で少なからず動揺してるらしい。


「相談って小説の事らしいけど、俺は小説は書かないから相談されて役に立つか分からないぞ」


 絵の事ならともかく、執筆についてはど素人だ。執筆活動を続けている秋月にアドバイスできるとは思えない。そう考えていると秋月からは違った答えが返ってきた。


「アンタに相談したいのは、小説の書き方とかのアドバイスじゃなくて、いち読者としての意見を聞きたいの。感想欄にダメな意見を書いてくる人はそうそう居ないから、率直な感想を聞かせて欲しいの。特にダメな所とか」


 ああ、そういう事か。なら俺でも役に立てるけど……率直な感想といわれても困る。ダメな所が多過ぎて、正直に話したら秋月のダメージが大きそうだ。


「ええっと……正直に言ってもいいんだよな? 怒らない?」


 俺は恐る恐る聞いてみた。


「うん、怒らないから言ってみて」


「本当に怒らない?」


「しつこいわね……絶対怒らないから」


 こういうパターンは結局怒るパターンだったりするんだよな。


「……分かった。正直に意見を言わせてもらおう」


 こうして俺は更なら地雷原に足を踏み入れる事になった。

 俺、生きて帰れるのかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます