第3話 イラストレーター神代冬人

『グアアアア!』

『奴がやられたようだな……』

『フフフ……奴は我ら四天王の中でも最弱……』

『人間如きにやられるとは四天王のツラ汚しよ……』


 学校から帰宅し、夕飯を終えた俺は部屋で机に向かい寛いでいた。


「ええ……このネタをそのままアレンジもしないで小説書いちゃうとか初めて見たわ……」


 パソコンのモニターに映し出されている小説を読みながら唸った。


 今、読んでいるのは小説投稿サイト『小説家をめざしてね』略して『めざし』という小説投稿SNSに投稿されている小説だ。

 ブックマークしている小説が更新されていたので最新話を読んでみると、それは相変わらずの出来であった。その小説のタイトルは――


『異世界に転生した俺は神様にもらったスキルでハーレムを作れるんじゃね? と思ったので作ってみた』


 長いタイトルなので次からは『異世界ハーレム』と呼ぶ事にする。異世界に転生した主人公が、神様から転生の際にもらったチートスキルを駆使しハーレムを作っていくストーリーで、それは『めざし系』と呼ばれ、よくあるテンプレ通りの内容であった。


 そんなビミョーな出来の小説を何故、読んでいるのか。それは絵描きとしてキャラクターに魅力を感じているからだ。

 魅力的なキャラクターのビジュアルを想像すると、キャラクターを描きたくなる。絵描きの性だ。『異世界ハーレム』はこの魅力的なキャラクターがいなければゴミと化すだろう。いや、今も限り無くゴミに近いが。そんなゴミの中にも光るモノがあったのだ。


 今も『異世界ハーレム』のメインキャラクターを勝手にデザインして描いているところだ。コピー用紙にラフを描き、下書きも終わった。そしてパソコンに取り込んだ下描きを元にペン入れ、彩色をしてカラーイラストの完成だ。小さい頃から紙で描いているので、CGを描く時でも下書きまで紙と鉛筆を使ったアナログで描く事が多い。


 こうして描き終わったキャラは主人公の『名指晴夢なさすはれむ』と、ヒロインの『アナスタシア・アザーロフ』の二人。


 完成したイラストをPixitと呼ばれるお絵描きSNSで公開して良いかの許可を貰う為に、『異世界ハーレム』の原作者に『めざし』からダイレクトメッセージを送った。宛先はペンネーム『フレンドリー・ファイヤ』だ。ペンネームからしてアレだな、と苦笑しつつキーボードを叩く。


『いつも異世界ハーレムを読ませて頂いてるFuyutoと申します。異世界ハーレムのキャラクターのイラストを描いてみました。Pixitに公開の許可を頂きたいと思い、ダイレクトメッセージを送らせて頂きました。イラストは今、非公開にしてありますが、以下のアドレスからアクセスすれば見る事が出来ます。パスワードは「fuyutoXXXX」です。


http://www.pixit.com/xxxxxx/xxxxxxxx/


返信して頂けたら幸いです。これからも更新を楽しみにしています。

それではよろしくお願い致します』


 送信ボタンをクリックし、ふぅ、とひと息つく。


「こうやってメッセージ送るのも緊張するもんだな」


 パソコンのモニタに映し出されたキャラクターのイラストを見直す。


 ――うん、我ながら良く描けた、喜んで貰えるといいな。


 期待に胸を膨らませパソコンをシャットダウンした。

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