第6話「Noパートナー、Noライフ……あげは×依子」

「あげは先輩じゃないですか、お久しぶりです」

 休日、バレンタインの延長戦のような感覚で優花とデートをしていると、高校時代の後輩、依子に出会った。依子もデートなのだろうか、デートをしている私たち以上に相手方の女性と腕を組んで密着している。当時は同性愛についてなど自覚すらしていなかったが、類は友を呼んでいたのだろうか。

「久しぶりだね。お互い、バレンタインを満喫してるみたいで、良かった」

 本当なら旧知の仲同士、再会を喜んで長話と洒落込むところだろうが、どうやらお互いデート中といったところだし、付き添いは当然二人の関係を知らない。ここいらで軽く別れるべきだろう。

「まあ、そうですね。静流はあまり、外慣れしてませんし」

 依子が静流と呼んだ相手の女性は、辺りをキョロキョロして、心配そうにしている。私と同じ、引きこもりなのだろうか。それも、外に怯えるタイプの?

「依子、誰が居るの? 知り合い?」

 静流は、依子の腕を不安げに掴み、そう聞いている。なんだか不自然な問いだ。誰? ではなく、誰がいるの? だなんて。

「高校の先輩と、多分その彼女。私達と同じように、付き合ってるんじゃないかな」

 そう答えて、私たちの方に向き直る。気まずそうに目を逸らしつつも、私に対しても話す。

「静流は目が見えないんです。だからって訳じゃないけど、私達は、ずっと一緒じゃないとダメで。二人でまた逢えたらいいんですけど、難しいかもしれません」

 苦笑しながら話す言葉は、どこか重みがあって、覚悟の上で生活しているんだなと、漠然と納得した。

 結局それだけで別れ、私は気を取り直して優花とデートを再開する。

「いろんな形の愛があるのはいいけど、私達、カップルに見えるんだね」

 恥ずかしそうに言う優花に、私はケラケラと笑いながら返す。

「そりゃあ、ずっと一緒じゃないとダメなんだってオーラ、私が出してるからかもね」

「あげはは甘えてないでもっとしっかりしなさい。あの子に対しての冒涜だぞ」

 それもそうかと、ぐうの音も出なかった。

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