第6話「一緒に作るチョコ」

「百合音、貴方にチョコを作りたいんだけど」

 私がチョコレートケーキを作ろうかと準備しているタイミングで、まるで見計らったかのように柚葉がキッチンに顔を出す。しかし、サプライズというつもりは無いのだろうか。私に隠そうともせずに言ってしまったが。

「えっと、お邪魔でしたら他の家事を先にしておきますか?」

 どいて欲しい事を暗に訴えようとしているのかと思い、道具を片付けるが、柚葉は私の手を止め、更にお願いしてくる。

「私、料理できないから! 一緒に、作ってくれないかな〜って」

 照れくさそうに目を逸らしながら言う姿が、少し可笑しくて笑ってしまう。全く、幼いというか、なんというか。まあ、私はそういう所が好きなのだが。

「いいですよ。では、互いに送るチョコレート、二人で作りあいましょう。柚葉は何が作りたいですか」

 私は自分の作るケーキの材料を確認しながら柚葉の作るものを確認する。

「うーん……それが、何を作ったらいいか分からなくて。ほら、何が簡単なのかとか、何が美味しいのかとか、あんまり分からなくて」

 なるほど、最初からやはりタイミングは見計らっていたのか。なら話が早い。

「では、私の作るケーキ、一緒に作って分け合いましょうか。お手伝い、お願いしますね」

 お願いしながら、レシピのコピーを手渡す。次の瞬間に浮かべた柚葉の満面の笑みが、最高のバレンタインプレゼントだった。

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