金曜日「介助百合」
第1話「普通の日常」
私が目を覚ますと、まずは静流を起こさなくてはならない。しかし、彼女の名誉の為に言っておくと、静流が寝坊助で起きられないというわけではない。彼女は、一人で起きても何も出来ないのだ。ああ、これでも名誉は保てないのか。
彼女は、目が見えないのだ。盲目で、人の手に頼ることしか出来ない。先天性で、落ち度もない。私は、その不幸を助ける為に、共に暮らすのだ。
「静流、朝だよ。私ご飯作るから、起きよう」
彼女の身体を起こし、目が覚めたのを確認して話しかける。ウトウトと寝ぼけて欠伸をする姿が可愛らしい。こういう仕草や表情があるから私は寄り添って過ごしていける。要は私もまた依存しているのだ。
「ありがと、依子。連れていってくれる?」
後ろから肩を抱いている私の手に触れると、安心したように穏やかな声でそう返す。
ゆっくりと身体を立ち上がらせ、そのままテーブル前の椅子に座らせる。
「今日のご飯はどうしようか」
座らせてから、近くで会話をする。私達は、互いの安心のために、ずっと近くにいる。遠く離れるほどに、私達は生きる事が苦しくなってしまう。
「じゃあ、今日は食パンに目玉焼きを乗せて」
少し考えて、静流はそう頼む。私は二つ返事で調理を開始する。いつもの毎日。
これが、私達の日常。普通の日常だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます